それ、言ってやった方が良くね?【27】
「さきほどは、ありがとうございました」
少年――ティムは俺に向けて深々と頭を下げてきた。
俺は照れるように片手を振る。
いや、いいって。俺、結局何もしてねぇし。
隣でおっちゃんがぼそりと言う。
『たしかに何もしてないな』
俺は半眼でおっちゃんを睨んで内心で言い返す。
っるせぇな。全く何もしてない奴に言われたくないよ。
あれから山賊みたいな男の人が係員に掛け合ってくれて、それに周囲が賛同する形になって、ティムという少年は特別に場内に入れてもらえることができた。
おっちゃんがティムに声をかける。
『そういやお前、ウルセイラ村から来たとか言っていたな』
「はい」
『スリザンザ峰の【斜の渓谷】を越えてか?』
「え、えぇ。そうですけど……何か?」
ティムが不思議そうに小首を傾げる。
おっちゃんが何かを思い返すように虚空を見上げた。
そのまま記憶を探るように顎に手を当てて腕を組む仕草をする。
何かあったのか?
尋ねたが、無視される。
しばらくして。
急におっちゃんが思い出したかのようにポンと手を打った。
『あー思い出した。あの時ウルセイラ村で魔物に喰われそうになっていたガキか』
「どうして、それを……?」
呆然とするティム──そんな時。
会話を遮るようにして、向こうで女性たちの黄色い歓声が聞こえてきた。
有名な勇者でも現れたか?
見れば女性の群れに囲まれるようにして、一人の勇者らしき格好をした青年が決めポーズで壁際に佇んでいる。
その男を見た瞬間、ティムの表情がぱぁっと輝いた。
「あ! あの人だ!」
あの人?
「はい。あの人がおいらを助けてくれた勇者なんです」
そう告げて。ティムは急ぐようにもう一度俺たちに向けて頭を下げ、その後は勇者のところへと駆け出していった。
俺は内心でおっちゃんに尋ねる。
『なんだ?』
どういうことだ? さっきの。
『ん?』
助けたとか何とか意味深なこと言ってただろ。
『あれか。あれは……あれだ』
あれじゃ分かんねぇよ。
『ずいぶん前の話になるが、魔物に襲われていた村があってな。魔物に喰われそうになっていたところを助けてやったんだ』
助けてやった?
『――あの姿でな』
くいとおっちゃんが顎で示す先に、カッコつけた二枚目顔の勇者がいた。
それって、もしかして──
『まぁ、なんだ。あのティムとかいう少年を助けたのは、実は俺だったんだがな』




