見ればわかる?【25】
人混みあふれる巨大円形闘技場の前で。
そこから少し離れた場所にぽつんと立って、俺はおっちゃんの帰りを待っていた。
すると、
『すまん。待たせたな』
帰ってくるなり、おっちゃんが俺に一枚の布きれを手渡してくる。
俺はそれを興味無さそうに両の二つ指で掴んで広げ、観察した。
ん? ……ぉぉおおおっ!
見た瞬間、俺は目を大きく開き、みるみる興奮していった。
思わず声を上げる。
すげぇ! これドラゴンの紋章じゃねぇか! カッコイイな!
おっちゃんが言ってくる。
『それが入場チケットだ。なくすなよ』
これ、入場チケットなのか!?
『そうだ』
俺はその布きれを後生大事に胸に抱く。
なぁおっちゃん。
『ん?』
このチケット、入場口で渡した後に返してもらえるんだよな? 家に持って帰って部屋に飾りたいんだけど。
『土産用のペナントがあるからそれを買え。ただし、向こうの世界に持って帰られたらの話だがな』
よし。またあの時みたいにポケットに入れて持って帰ろう。
『次は成功するかな?』
え?
『いや、なんでもない。こっちのことだ』
言って。おっちゃんは白々しく口笛を吹きながら惚けた。
なぁおっちゃん。そういえばバトル・レースって、一体どんなことをするんだ?
『ん? ただドラゴンに乗ってバトルしながらコースを一周するだけだ』
あーうん。それわかるよ。で、具体的にはどんな感じなんだ?
『レースは二日掛かりで行われる長めのコースだ。勝敗が分かるのは明日になる』
ふーん。で? 具体的にはどんなバトルをするんだ?
『知らん』
……。
『……』
え? バトル・レースって言ったよな?
『バトル・レースだ』
ドラゴンに乗って勇者が戦うんだよな?
『そうだ』
もしかして、見られないのか?
『運が良ければスタート地点でバトルしてもらえるが、安全面を考えると外でやってもらいたいのが正直な感想だ。俺は戦場を見てきたからわかるが、あんなのに巻き込まれたら地上の人間はひとたまりもない。大抵は安全面を考慮して遠くに飛んでいってバトルしているらしいけどな』
らしい、けどな……?
『ドラゴンでバトル・レースだからな。生で見に行くなんて死に行くようなもんだ』
テレビ中継とかは?
『あっちの世界にあるあんな平たい水晶玉みたいな物はこの世界に無い』
平たい水晶玉って……まぁいいけど。途中経過とか、レースがどうなったとか、この世界の人は誰も気になったりしないのか?
『知りたければ情報屋から話を聞けばいいだけだ』
話を聞くだけ?
『それだけで充分だろ』
不充分すぎるだろ。
『ドラゴンでコースを一周させるだけでも相当なもんだ。ドラゴンは機械じゃない、気性の荒い生き物だ。番狂わせなんてザラだ。誰が一位でゴールしても不思議じゃない。一位でゴールできるってだけでもかなり腕の立つ実力者だ。それをみんな分かっているからな』
俺は・バトルを・生で・見たい。
『じゃぁわかった。こうしよう。とにかくスタート地点を俺と一緒に見ろ。見ればこのレースがどんなものかが大抵わかる。傍でバトルされたらどんなに危険なのかも同時にな』
あーうん。とりあえずスタートは見るよ。見てから考える。
『スタートを見れば全てが分かる』
自信満々だな、おっちゃん。
おっちゃんが胸を張って強気で言ってくる。
『まぁそれだけ何度も見ているってことなんだけどな』
ふーん。でも、もっとこう、具体的に──
『とにかく見ればわかる』
言って、おっちゃんは俺を入場口へと案内した。




