現実世界は寒かった【15】
――ハっクシュ。
盛大なくしゃみとともに鼻をすすって。
俺は目を覚ました。
途端にゾッとするような寒さに見舞われる。
寒ッ!
薄手の一枚服だった俺は、あまりの部屋の寒さにぶるりと身を震わせる。
さきほどまでの暑さから一変。
部屋内は冷房いらずの寒気に包まれていた。
両腕をさすり摩擦熱で体を温めながら、俺は眠り込んでいた勉強机から頭を起こし、辺りを見回す。
どういうことだ?
どうだもクソもなかった。
周囲を見回せば見慣れた自分の部屋内。
冬の手前とも思える肌寒さを感じる深夜である。
俺はいつの間にかあのゲームの世界から抜け出し、元の世界へと戻っていたのだ。
こっちの世界に戻れたっていうのか? 俺一人の力で。
そういえば以前Jがこんなことを言っていた気がする。
あの世界には三つのログアウト方法があって、強制的に戻される方法と、誰かと一緒に戻る方法、そして自分の力で戻る方法があるのだと。
馬鹿だよな、俺。
今更ながら気付いた。
なんで今まで自分でログアウトしようとしなかったんだろう。
最初の時からずっと気になっていたはずなのに、いつの間にかすっかり尋ねることを忘れてしまっている。おっちゃんに頼らなくてもこうやって勝手にいつでも俺の都合であの世界からログアウトできたはずなんだ。
それなのに、俺は……。
目の前の勉強机へと視線を落とす。
そこに広がった空白の問題集。
山のように残された宿題。
机上の時計は午前三時を回っていた。
乾いた笑いがこみ上げてくる。
終わらねぇ。絶対に終わる気がしねぇ……。
俺は勉強机にうつ伏せると、静かに涙を浮かべた。




