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竜人は気分屋である【10】


『話が違うだろ!』


 ダン、と。

 苛立ちある声でおっちゃんがカウンターに拳を叩き落した。

 カウンターの向こうでは悠然と椅子に腰掛けた竜人がキセルを吹かしながら告げる。


「気分、変わッタ。ゴ、グェ。金、払エ」


『タダだという話だっただろ!』


「今日、客多かッタ。それだけ。ゴ、グェ。金、払エ」


『三千ギルダ。それ以上出す気はない』


「十万」


『三千だ』


「ならば二十万にすル」


『二千五百』


 オイ、値段下がってんぞ。おっちゃん。


『うるせぇ、お前は黙ってろ』


 横に突き飛ばされ。

 俺は疎外感を覚えて不機嫌に顔をしかめた。


 竜人がキセルの先をおっちゃんに向けて不機嫌に告げる。

「四十万」


『二千』


 竜人の顔が険しく歪んだ。口調も強くなっていく。

「黒虎二頭、二時間も貸しんだゾ。別の客なら、まだ取れタ」


『千五百』


 竜人が声を荒げる。

「二頭二時間だゾ!」


 おっちゃんは平静と言い返す。

『だからなんだ?』


「デーダグ、ダラゴーェ、チッチチッチ!」


『ガーダ、グ、チッ、ディエゴ。バグデラ、ダラドーラ』


 おっちゃんが意味不明の言語で竜人と会話をしている。

 竜語だろうか? まるで意味がわからない。


 竜人が怒りあらわにキセルを椅子にぶつける。

「デラゴーワ、デラゴーワ! チチチチッ!」


 舌打ちが竜語の特徴なのだろうか。やたらと会話で使われている。


 おっちゃんは頑なに引かない。怒る竜人相手に強気で言い放つ。

『千』


「もういい、わかッタ!」

 苛立つように手を払って、竜人は交渉を切り止めた。

「三千ギルダ、それで手を打ってヤル! 指そろえて持ってコイ!」


 すげぇ、おっちゃん。

 俺はおっちゃんの交渉のすごさに感心した。


 おっちゃんが静かに俺を指で呼び寄せる。


 え? 何?

 俺はおっちゃんに近寄った。


 するとおっちゃんが意外な言葉を口にしてくる。

『お前、ちょっとここで待ってろ』


 なんで?


『俺はちとディーマンに金を借りに行ってくる。その間、お前はここにいろ』


 はぁ!? ふざけんな! もうすぐ三時間になるんだぞ! 今すぐログ……ッ!


 おっちゃんがいきなり俺の口をふさいできた。

 そして誤魔化すように言ってくる。

『おーそうか。そんなに合金鎧ログアーマーが欲しかったのか。買ってやるって約束だったもんな。ならここで大人しく待ってろ。そしたら買ってやる』


 俺は内心でおっちゃんに尋ねる。


 もしかして異世界人って言葉はここでは禁句なのか?


 おっちゃんが俺の頭の中で答えてくる。

『何の為に変装させていると思ってんだ。俺が居ない間、絶対に変な言動見せるなよ。絶対にだ』


 ここに居ろってのは冗談だよな?


『いや、マジだ』


 もしかしておっちゃん、マジで金持ってないのか?


『足りなかったんだ。言わせんな』


 じゃぁなんで三千にしたんだよ! 最初から所持金分を言えばいいじゃないか!


『馬鹿、お前。最初の吹っ掛けが十万だぞ? 三千で手を打ってくれただけでも奇跡だと思え』


 で? それ、ディーマンが貸してくれそうな金額なのか?


『依頼が終わっていればそんぐらいの金は持っているはずだ』


 依頼が終わっていたらって、終わってディーマンがどこかに行っていたりしたらどうすんだよ!


『それはない。必ず街のどこかに居るはずだ。ディーマンも勇者祭りを見にココまで来たらしいからな』


 絶対だろうな?


『そう言っていた』


 わかった。じゃぁここで待っているから絶対帰って来いよ。三十分以内だ。マジだからな。


『わかっている。――あ、そうだ。お前、明日の夕食は肉を食え』


 なんで?


『ディーマンに再度賭けを吹っ掛ける。それで返済はチャラだ』


 嫌だよ。そんなイカサマに手を貸すのは。


『冗談だ』

 そう言っておっちゃんは俺を解放して横に突き飛ばすと、竜人に指を突きつけた。


『すぐに戻る。それまでコイツをここに預けておく』


 竜人がキセルを吹かせて嘲笑う。

「そうカ。わかッタ」

 言って、椅子から立ち上がり、カウンター越しから俺の右手を掴んできた。


 へ?


 目を丸くする俺の右手首に、ガチャリと鎖付きの腕輪がはめられる。


 ちょ、待て。


 竜人は鎖の先を鉄の柱に巻きつけながら言う。

「戻らない時、コイツを売り飛ばス。それだけダ、ゴ、グェ」


 俺は空いた片手でおっちゃんの服を掴んで必死に訴えた。

 マジで帰って来るんだよな? 信じていいんだよな? ――ってかこれで戻ってこなかったらマジで恨み殺してやるからな!


 おっちゃんは安心させるように無骨な手で俺の頭をくしゃりと撫でた。

『大丈夫だ。すぐ戻る』



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