六話
更新しました。
宿題は犠牲になったのだ…
「大会運営委員会よりお知らせします。協議の結果、準決勝第一試合の勝者は福西康治選手とします。」
控室の中、スポーツドリンクで喉を潤していた康治は安堵した。
試合が終わってから二十分が過ぎ、もしや大会初の判定負けになるのではと内心焦り始めていたのだ。
(今更だけど俺が決勝戦に出て良いんだろうか…)
冷静になってくると、試合中の行動はあまりに卑怯だったように思える。
勝つために手段は択ばないが、卑怯であったり、判定負けになるような戦いをしたいわけでもない。
次はもっと危険な作戦を考えているのだが、康治の心には迷いが芽生えていた。
「いかん。『楽観で行動』の信条を忘れるところだった。」
康治は物事を考えすぎるので、普段から考えずに行動することを心掛けている。
本能に従って戦う。これが康治の理想の戦い方なのだ。
準決勝から決勝戦の間には一般客のために休息時間が設けられていて、選手はその間も控室から出ることを禁じられている。
康治はすでに昼食を済ませてしまっているので、備え付けられたテレビを見ようと電源をつける。
全国大会の中継をしている局は映らないようになっているが、設定されていた放送局はこの時間天気予報を流しているようだ。
興味もないのですぐに別の局に変えようとした康治は、『全国的に快晴』というアナウンサーの言葉を聞きながら、複雑な気分になるのであった。
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康治が普段見ることのない昼時のバラエティ番組を見ていた時、急に控室のドアがノックされた。
「すいませーん。大会運営より福西さんにご相談があるのですがー」
ドアの向こうからかけられた声に、康治は面倒なことでないのを祈りつつ、ドアを開く。
「相談とは何でしょうか?」
「試合前インタビューをお願いしたいんです。ちなみに全国ネットで生中継ですよ。」
「目立つのは好きじゃないのでお断りしたいんですが…」
本当はさっきの試合について聞かれるのを避けたいだけだ。
「対戦相手の暮橋選手は受けるらしいので出来るだけ応じて頂きたい。」
運営の下っ端であろう男の『引く気はない』という目が、康治を黙らせる。
(まあいい加減部屋から出たいってのは思ってたことだしな…)
結局、康治は運営の言葉を無視する訳にもいかず、インタビューに応じた。
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インタビューを受けたくないと考えている康治だが、会見場に来てみれば一つだけメリットがあった。
会見場は一か所しかないため、暮橋を一目見ることが出来たのだ。
体格は小柄。身長だけでなく、体の線も全体的に細い。
康治はその見た目から、病弱なのでは、とすら思った。
残念ながら銃を見ることは出来なかったが、事前情報と本人の特徴が一致していることを考慮して、その情報を信用してよさそうだ。
(『KILL BULLET』、か。 一撃で人を殺せる弾丸とか本当に意味が分からん。)
もちろん競技で使われるのは劣化弾であるため、死にはしない。
だが一撃で意識を飛ばされ、意識が戻ってからも数時間消えないという痛みは、被弾した者を引退にまで追いやるという。
事前情報によれば射程は三メートル。
さらに射線上に目標を捉えなければ効果を発揮しないらしく、対策は可能のようだ。
ただ、自分が近づかないと『ATTACK BULLET』を当てられないようでは難しいが。
(だが俺は、自分の能力を使って勝つ。)
康治は一番怖いのは判定負けだとなと思いつつ、自分の考えの可笑しさからはとりあえず目を逸らしたのであった。
明日もどうにか更新して、15日までに完結・・・は無理ですね。
とりあえず頑張ります。