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RAIN BULLET  作者: Nicholas
3/12

三話

荒かったらすいません。誤字あったらごめんなさい。読めなかったら申し訳ないです。


そんな感じの三話になりました。

試合終了後、選手は一度控室に戻され他の試合を見ることは出来ない。


これは選手同士が試合前に手の内の探り合いをしないようにという工夫である。


ただでさえ短期決着が基本の競技で試合相手に合わせた作戦を事前から練ったのでは、試合があまりにも味気のないものになってしまう。


今回が初大会なのだから初大会らしい手さぐりの試合をさせようという、一種の実験だった。


選手控え室から出られないのでは不便があるだろう、という声もあるが、この控室というのが異常に高性能なのである。


種類の充実した無料ドリンクサーバーが完備され、その横には軽食の買える自販機。その反対側に予備弾丸と銃の整備用品の買える自販機が設置されている。


光量の調節できるライトが嬉しい作業台が部屋の中央に置いてあるうえ、電子ロック式ロッカーは無駄に大きい。


シャワールームがついているのはともかくとして、サウナ室に至っては何のためにあるのか分からない。


ちなみに、備え付けの電話でルームサービスを頼めるというのはあまり知られていないことである。


そんな部屋で一時間ほど空き時間を過ごすことになった康治は仕方なく早めの昼食をとり、銃の整備を終えて、ぼんやり考え事をしていた。


長いベンチの上で仰向けに寝転がる康治は、右手に自分の『SPELL BULLET』をつまむようにして持ち、眼前に掲げている。



この『SPELL BULLET』こそ康治の最大の弱点であり、最大の秘策である。



大会レギュレーションによって認められた『SPELL BULLET』は、劣化弾ではなく元のまま使用できるのだ。


康治の『SPELL BULLET』はとても、非常に、むしろ怖いくらいに、弱かった。



レギュレーションをぶっちぎりで下回るそれは、普通の使い方をしていてもただのゴミだが、実は一つだけ使い道があるのだ。



それだけが康治が流出情報で知った優勝候補の選手に勝つ、唯一の方法だった。


康治の秘策は使えば大会出禁にされるかされないかというものなのだが、なにせ、相手は一撃当てれば即勝利の化け物なのだ。


康治が優勝するためには、ある程度のリスクは必要になる。


だがその覚悟を決めるのは試合直前でも構わない。


決勝戦まであと二試合。とにかくそれを勝ち上がることが先決だろう。


「高校部門二回戦を開始します。選手はフィールドに移動してください。」


康治は持ち物を確認して、もう一度フィールドへと進む。


(弱い相手と当たってくれなんて、都合が良すぎるか。)


ここは、全国大会。各地で勝ち上がった猛者の集う場所である。


当然。簡単に勝ち進ませてはもらえないのだ。


=======================================


相手選手の名前も知らない康治は、とりあえず相手の特徴だけを見定めようとする。


が、失敗した。



一目見て、何もかもが普通。


じっくり観察しても、一回戦で戦った選手よりも特徴が無いようにすら思えてくるのだ。


(でもこれはトーナメント二回戦。つまり相手も一勝している訳だ…)


康治は背中に冷たい汗をかいた。


身体的長所が特に見当たらない選手が強いということは、自動的に技能が優れていることになる。


康治のように銃が特殊な場合も無くはないが、今回は普通に見える。


狙いが正確な選手を相手に試合を行うとお互いに満身創痍になるケースが多く、大会などでは共倒れの現象が良く見られるほどだ。



そしてもう一つ、特徴のない選手を相手にする際に注意しなければならないことがある。



(劣化弾の乱れ撃ちとかやめてくれよ…)


劣化弾が強力であれば、ゴリ押しで勝利をつかんでくることも有りうる。


劣化弾に対しては『GUARD BULLET』が効かないことが多いため、避ける以外の対処方法が存在しない。


ただこれはこの競技の腕の見せ所でもあるので、観客には喜ばれる。


選手本人としてもそこそこ楽しみな部分なのだが、被弾した時に受けるのは痛みだけでなく傷を負うこともあるので、ケース・バイ・ケースと言えよう。


「試合開始五秒前」


意識の集中。動きの読めない相手に対してとる作戦は決まっている。


迷うことはない。



「開始」



相手が銃を構える。


そして康治もまた、その正面で銃を構える。



正面での打ち合いというのは、実のところごく一般的な試合運びであって、むしろ康治がした一回戦の戦い方は体力を消費するためあまり使われない。


康治が一回戦で大きく動いたのは、準備運動の一環だった。


初戦はある程度手を抜けそうな試合だったので、一日のアップを兼ねて動きのある試合をしたのだ。



とはいえ、正面での打ち合いがまったく動かずに行われるというのもあり得ない話だ。



相手の攻撃を利一は体に染みつけた回避行動で避ける。追撃を避けるため隙は小さく抑えるのがベストだ。


相手から五発の連撃があった後、タイミングをずらしながらもう一発の攻撃が飛んでくる。


反撃すべく構えていた『ATTACK BULLET』をリボルバーを回して『GUARD BULLET』に交換する。


すかさずトリガーを引くことで、本来大きく動かなければ回避できない攻撃も最小の動きで防御、康治の場合はさらにリボルバーを回して『ATTACK BULLET』に戻し、反撃につなげることもできる。


だが康治は相手の挙動をみて、大きく回避行動をとった。


相手は弾倉を交換することなく、康治の居た場所の地面を狙い引き金を引いた。



引き切ったと同時に、狙った先の地面が爆散する。



(劣化弾だな、しかもかなり強力な。)


狙いを康治自身に合わせなかったのは、おそらく人体に対して効果がないためだろう。


劣化弾は元の『SPELL BULLET』の殺傷能力をある程度以下まで抑えている。


もともとは人体にも効果があったとしても、劣化弾はその効果を無効化してしまうのだ。



だがたとえ地面に対してしか使用できなくとも、その効果は絶大。


爆風から威力もかなり低いことが伺えるのだが、康治の足場は撃ち込まれるたびに悪化していく。


(作戦ミスだな。近づいておけば相手も撃っては来なかっただろう。)


相手選手の情報が不足している状況では、様子見をしようという選択を選びがちになる。


その選択こそが命とりにもなるのは、半ば仕方のないことかもしれない。


つまり、すべてはここからの問題なのだ。



どんな障害があっても勝利を掴み取れなければ、この大会で優勝などできない。


それは康治が全国大会に向けてのトレーニング中、ずっと考えてきたことである。



臆せず、進むしかないのだ。



マガジンを交換しだした相手選手を見ると、康治は『ATTACK BULLET』を一発相手に放つ。


相手もそのまま受けるようなヘマはせず、手元で作業しながら回避する。



康治の勘が当たれば、相手はこちらが特殊な拳銃を使っているとは考えていないはずだ。


そのために手元が見えないように立ち回ってきたのだから、気づかれていては困る。



ならば相手は、次の康治が放つ弾を『GUARD BULLET』だと予測してくるだろう。


これは攻撃と守備を交互に繰り返す弾倉における弾の配置で、もっとも一般的なパターンなのだ。


正直効率も一番いいので、これ以外のパターンを使うほうが少ないくらいである。



弾の配置を考えなくていい康治は例外だが。



一発目は受けるか回避するだろうと思いこんでいる相手の顔に『ATTACK BULLET』を一発。


避けるであろう方向を予測し、そのまま五連撃。


康治の予想通り相手は想定外の攻撃を避けきれず肩に被弾。


身についている癖のまま左へ走り出すと、そこでは五発の『ATTACK BULLET』が待っていた。


『GUARD BULLET』を使用すれば防げるが、しかし相手が用意していないのは明白だ。


あらかじめ使う順番を予測し弾倉に弾丸をセットしなければならないこの競技では、異なった弾倉を使い分けるのは得策ではない。


リロードに時間がかかることはかなりの痛手になるからだ。


よって弾のセットする順は一つ目の弾倉と同じ。


この選手は『GUARD BULLET』を使わないで戦うスタイルなのだろう。使い辛い『GUARD BULLET』は、慣れていなければ逆に隙となる。


なんにせよ、ここで『GUARD BULLET』が使えなければ、負けである。



相手選手の顔が引きつるのを視認しながら、康治は万が一に備えて銃を構えておく。



相手が体を切り返して攻撃を避けようとする。


(いまさらだな。)


体が元の方向を向いた時には、五発の弾丸が全弾ヒットしていた。




倒れていく相手選手を見届け、康治は控室へと戻る。


ご意見・ご感想その他森羅万象は感想欄、企画サイトの感想掲示板にてお待ちしております。



そういえばみなさん。夏が暑いですね。


合宿所は涼しかったんで帰ってきて呆然としました。


暑さに負けないように張り切って夏を過ごしましょう!

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