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第三話:始まりの予兆


「あの少年はなにかありますね。」

「気づいた?ありゃどう見ても闇の王子だよ。」

「やっぱり。」

「ついでにほら、あそこにいるのはお前の娘じゃないか?」

「!・・・・ヒカリ!どうしているんだ?!」

「牢屋にぶち込んどけっていっただろ?」

「は、、はあ、すいません。すぐにでも!!」

「・・・・いや、いい。このまま様子を見ていよう。」

「は、はい。」


「たいへんです!寝坊です!!どうして起こしてくれないのです?!」

「ご、ごめんなさい姫様!あまりにもぐっすりだったので。」

「もう始まっているんでしょ?!メインが行かなくてどうするんです?!」

フィーリは城の中にいた。

どうあがいても間に合いそうも無い。

「は!そういえば姫様!!例のイヤリングは?」

「ああ!!忘れたわ!!」

「でしたら、このビリーが取りにいってまいります!姫様は先に!」

「わかったわ。」

ビリーは振り返り戻っていった。

フィーリはなんとか走るが、パーティ着がどうも動きにくい。

足も大幅にひらくことができなく小走り状態で、はたからみるとねずみのようである。

「いーーやーーー!ゼぇゼぇ・・・どうしよう・・・。」

階段をおり一階までたどり着いた。

そこからホールまでは目と鼻の先であった。

「よーーーし!・・・・・・?」

ふと、気づくとなにやら地下へ続く階段から声が聞こえた。

『た、た〜すけ〜て〜〜〜』

「?誰かしら?」

地下には牢獄しかないはず。

そこにはもちろん見張りもいて、そのような大声を出すと怒られてしまう。

しかし、地下からは見張りの声は聞こえない。

『おーーーーい〜!』

「誰?」

フィーリは恐る恐る階段を下りていった。

次第に声が大きくなっていく。

『ジェンラ〜許さないからなー!おかげで我はまた5キロ太っちまったぜ〜』

「ど、どちら様?」

フィーリは一つの小さな牢獄の前に立った。

鉄の壁で中は見えなかったが小さい窓口から顔を見ることができた。

そこには随分と太った男が1人、用意されていたトイレの便器に挟まって動けない様子だった。

『だれかいるのか〜?助けてくれよぅ!ケツが挟まってるんだ〜〜〜!」

「ええ?!そんな・・・ど、どうしよう。」

「?女か?!女はいいよ!誰か男を呼んできてくれないか?!」

「でも、ほとんどの兵はパーティにいるし、ここの見張りもいないみたいで・・・。」

「なに?!見張りがいないのか?!やーりぃ!!」

男は勢いをつけグイッと体を前へと引っ張った。

バキッという音がして便器ごとなんとか取ることができた。

「どいてな。このマックス様のスーパー体当たりを見せてやるぜ。」

「は、はい。」

フィーリは端へより静かに見ていた。

どず

「〜〜だめか〜硬いや。」

「あ、あの、私はこの国の王女です。みすみす罪人を逃がすわけにはいかないのです。」

「え?!あんた、、フィーリ王女?!何でここにいるんだ?!」

「ちょ、ちょっと寝坊して、、。」

「な〜んだってそうじゃなくって!!よくも我たちをはめてくれたな!!

ジェンラっていうスパイを我が国に送ったりしてよ!!そーいうの卑怯だと思わない?!」

「・・・わ、私は戦争については深く存じておりません。全て祖母のリャマ様に任せております。」

「ああ、あの黒髪の女ね!我は絶対許さないからな!!死んだらのろってやる!!」

「あ、、あの・・・。」

「なんだぁ!文句あんのかぁ?!」

「・・・・出します。」

「・・・は?」

「出たらすぐに逃げてください。」

フィーリは看守の机の中にある鍵を取り出し牢獄の扉を開けた。

中から便器をお尻につけた太った男が現れた。

あっけらかんに見る男をフィーリは牢獄の外へ出した。

「この階段は城の中枢部の階段です。普段は沢山人がいますが、パーティのためほとんどいません。

階段を上ってすぐ左に非常口の扉がありますからそこから逃げてください。

もし、誰かに見つかったら私の名前を出してください。きっとなんとかなります。」

「・・・・・あ、ありがとよ。なんで助けてくれるんだよ。」

「・・・・・・・。」

フィーリは答えなかった。

「はは〜〜ん!さてはこの我、マックス様を好いてしまったかな?」

「ちがいます。」

即答され少しマックスは残念がった。

「私・・・幽霊とか苦手なんです。だから祟られても困るし、呪いなんてお断りですから。

それにあなたを捕まえたところで大した成果は出ないだろうし、逃がしても問題ないかと。」

「あ〜そうかいよ!でもま!逃がしてくれるならありがてえや!!でもな、

俺はお前ら光の一族を許したわけじゃないぞ!ジェンラに化けていた奴にも言っとけよ!!」

マックスは猛ダッシュで階段を駆け上り非常口を出た。

「お!無線は取られてないみたいだな。王子に連絡しなくちゃ!!!地下じゃ電波がねーからよ!」


『あ〜〜〜!王子!!我です!マックスです!!応答してください!!』

「・・・・こちらゼノン。作戦は中止だ。」

『王子!それどころじゃなイッス!ジェンラの奴スパイだったんですよ!』

「・・・・・ああ、知ってる。こちらの作戦はもう光の国に伝わっている。」

『え?じゃあ、・・・』

「我が国に光の国の軍が向かっているそうだ。二次軍もやられて打つ手が無い。」

『そんな、、どうするっすか?!』

「・・・・・どうするも・・・・・。」

『あ、諦めちゃだめっす王子!まだありますよ!王女を殺すんです!出直して体制を立て直すんですよ!

我は今城の外にいますからすぐ来てください!!王子が生きている限りは闇の国は滅びませんよ!!」

「・・・・ち、父上が、、、。」

(このままでは父上や残りの兵、民が・・・。)


ゼノンは扉に向かった。

マックスの言うとおりに体制を整え、すぐにでも自分の国に帰ろうとしていた。

もう格好など気にしてはいない。

シルクのマントもサングラスも外し,ただただ怒りだけがまとわりついている。

「こ、ろ、し、て、やる!皆殺しだ!!」

ジェンラへの怨み、自分の無力さ、すべてに腹が立った。

「ちくしょーーーーーー!!」

「どうしたの?」

目の前に現れたのは、先ほど会った自称王女のヒカリだった。

「どけ!」

「きゃ!!」

ゼノンはヒカリを突き飛ばしすたこら進む。

「な、なに?どうしたの?さっきとは違う・・・・。」

ヒカリはゼノンのあとを追い歩く。

その光景を、階段の上から緑色の髪の男が見て仰天した。

「ひ、ヒカリ!どこに行く気だ!!」

大声で叫ぶと階段を飛び一気に地上へ下り、なんとも凄まじい速さでヒカリのもとへ向かっていった。

ヒカリは慌ててゼノンの腕をつかんだ。

そのつかまれた腕に激痛が走った。

「わ、私はこの国から出たいの!もうあんなところは嫌なの!お願い連れ出して!!」

ヒカリは追ってくる男に向かって叫んだ。

「さよなら父上。私はどうせいらない生き物だから探さないで!」

「ひ、ヒカリ!待つんだ!!その男は闇の国の王子なんだ!敵なんだ!」

その言葉に周りがざわめき始めた。

「な、なにがなんでなんなんだ?!」

ゼノンも慌てる。

それよりも掴まれた腕が非常に痛いのだ。

細い指にこんなに握力があるはずが無い。

だが、今にも折れそうだ。

「ええーい!どうにでもなれ!!」

ゼノンはヒカリの腕を逆に取り、腰に下げていた短刀をヒカリの首にあてた。

「動くなよ!動いたらこいつの首はふっとぶぞ!」

「!!やはり、貴様、ヒカリを狙っていたな!!」

「微妙に違うが・・・まあいい!!こいつは人質だ!かえしてほしくかったら、闇の国に行った軍を呼び戻せ!

父上が死んでいたらこいつも同じように殺してやるからな!!」

ゼノンはヒカリを連れ外に出た。

そこにはマックスが高速馬〈チーホース〉の馬車に乗って待っていた。

「遅いですよ・・・て、その子なんなんです?」

「いいから急げ!!追っ手が来るぞ!」

ゼノンはヒカリを馬車に乗せ自分はチーホースに乗った。

「げ!まさか、正体ばらしたんですか?!」

「とう!」

鞭を思いっきりたたきチーホースは走り出した。

ぐんぐんと景色がかわっていき城が小さくなっていく。

そんな光景をヒカリは見ていた。

「これで・・・・私は・・・自由なのね。」

「なんすか?この女の子。」

「これからどこに行く?!」

「考えたんですけど村や町は危険ですから森の中に行きましょうよ」

「え!!!!」

ヒカリは仰天した。

「そ、それはまずいわよ!!」

「なんで?」

「だって、、森は父上や兄上達の遊び場みたいなものだもの。すぐ見つかるわ。」

「じゃあ、どうしたら?」

「ひとつのところにずっといるのは危険だから、てんてんと歩き回った方がいいわ。」

「そ、そうか。」

「いや、まずはジェンラを倒しに行く。」

ゼノンは淡々と答えた。

「ジェンラ?だれそれ?光の国にそんな人いたっけ?」

「たしか、本当の名前は善気だったか。」

「!!!ぜ、善気?!!!!」

ヒカリはより仰天した。

「あ、あ、兄上?!兄上を殺しに行くの?!」

「!!兄だって?!!!!!」

「だ、だめ!!それはだめ!!!逆にやられちゃうよ!!」

「王子が負けるわけ無いだろ!」

「ち、違うの!兄上は1人じゃなくて・・・。」

「?」

「どうでもいい!やられたらそれまで!俺は奴を殺しに行く!!」

「だ、だめだったら!」

「うるさい!お前は人質のみだぞ!!!」

「んもー!!人が心配してやってんのに!!!・・・・あ!」

「?なんすか?」

「そうだ!預言者に会いに行くのよ!その人にこれからどうすればいいか聞くのよ!」

「預言者?占いなんか信じられるか。」

「ちがうよ!ただの預言者じゃないよ!我が国に伝わる魔物!」

「魔物?」

「いまや誰も近寄らない洞窟に住んでいて名前が・・・・なんだったかな?」

「おいおい肝心なところだぜ?」

「とにかくそこに行こう!!ほら!私が人質の間はあなたたちの国もなんとか平気でしょ?」

「どうだか。今頃父上はやられてるかもしれない。」

「それも預言者に聞くのよ!その魔物はなんでも知ってるのよ。」

「わかったよ。で、方角は?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・さあ?」

「・・・おい。」

「あ!そういえば、我も魔物の話聞いたことあるッス。なんでもその魔物はすごい魔法が使えるらしイッス。」

「いまどき魔法は誰でもつかえるわよ。」

「ちがうよ。命と引き換えに使う魔法でたしか〈エデンマジック〉とかいってたな。

なんでもできるんですよ。星を破壊することも、光の国を滅ぼすことも!!!」

「!!!ほんとか?!」

「そうです!!エデンという魔物がその魔法を伝授してくれるらしいです。その人(?)を探しましょうよ!」

「そっちがいいな。」

「えー?預言者は?」

「あとあと。」

「じゃあ決まりですね!エデンという人を探しに行きましょう!!!」

「探しにいくくらいなら預言者に聞けばいいじゃない!なんでも知ってるのよ?!」

「む、・・そうか。」

「洞窟の場所がわかんなきゃ意味ないですよ。探すのはどっちにしろ。」

「ならどっちも探せばいいじゃないか。」

「・・王子!器がデカイッス!!!」

「結局探すのね。」

「体制の立て直しだ。とりあえず、闇の国の領土に帰って作戦を考える。」

(なんの作戦かしら?)

「城は危険だ。戻ることはできない。この無線を使えば光の国と連絡が取れる。

ひとまずこの女をそこに監禁して交渉をしよう。」

「監禁ッスカ?!王子・・・・そんな趣味が・・・。」

「ちがう!!!!!」

「私人質なのよ。でもね、私を殺してもきっとなんともないわ。むしろ喜ぶんじゃないの?」

「なんで?」

「要らない生き物だもん。」

「?」

「とにかく、、俺はジェンラを殺す!何があってもな!!!」

「うっす!王子!!どこまでもついて行きます!!!」

「・・・・・・無駄なのに。」



「あ〜あ、逃げちゃったわね。」

黒髪の女王リャマはホールの扉から静かに見ていた。

「あんなにしてまで生きたいのか?あの小娘。」

リャマは自分の髪を指でくるくる巻き、ぐいっと引っ張った。

ぶちぶちっと鈍い音がして髪の毛は切れた。

その髪の毛の切れ口から青い水がぽたぽたと、まるで血のように流れていった。

「あ〜、面白いことになってきたな。ところで、善気はどこ?」

「リャマ様、善気は今闇の国へ行ってるようです。すぐにでも戻ってくるように言いましょう!」

ヒカリの父レビランがリャマの前へいき膝をついて言った。

「・・ははは!馬鹿いわないで。闇王の首を持って帰ってくるように言ったわ。」

「?!なぜ?!それではヒカリは・・・?!」

「死ねばいいんだ。どうせ失敗作だから。」

「!!・・・女王といえど、私の子を侮辱することは・・・!!」

レビランは剣をとりリャマに向けた。

「・・・。」

リャマは髪の毛を一本また抜き取り、それをレビランに向けて言った。

『俺にはむかうなんていい度胸だなぁ。また操り人形になってもらおうか?』

そういったとたん、レビランの顔色が真っ青になった。

髪の毛はひとりでに伸びレビランの額にグサッと刺さった。

「・・!!!!」

レビランの額に髪の毛が入り込み文字が浮かび上がってきた。

『そう、俺の食い物は憎しみ。憎め!娘を奪った闇の王子を怨め!そして・・・殺せーーー!!』

「うおおおおおああああああああ!!!」

レビランの目は真っ赤に変わり、瞳がどす黒く輝いた。

その光景を見ていた貴族達にレビランは剣を振った。

貴族達は悲鳴をあげながら倒れていく。

兵士達は抵抗しようと剣を構えるが、相手が悪すぎた。

「レ、レビラン様!!おやめください!!」

「ははははは!!!しねーーー」

レビランはそんな兵の呼びかけを無視し次々と襲い掛かる。

『ふふふ・・・俺に逆らうととんでもないぜ?さ〜て、ゼノンにはどうしてくれようか。』

「私にお任せを」

レビランは体を止め言った。

すでにホールは無音だった。

「必ずや、王子、そしてあの小娘を殺してまいります。」

『おお。娘もか?はは!やれるもんならやってみな。だがな、とどめを刺すのは俺だ。1500年前の恨みをはらすんだ。』

「はい。」

レビランは扉を開け、凄まじい速さでゼノンたちを追った。

残されたリャマは腹を押さえながらレビランを見つめていた。

「・・・・・う、、、ダメよ。正気に返って・・・。」

その声はとても小さくて誰にも聞こえない。

もちろん、その周りに生きたものはいない。

『ちっ!!まだ完全に乗っ取れたわけじゃないのか・・・。』

リャマはすっと両手をかざしなにやら呪文を唱えた。

黄色い風が空から吹いて、リャマの体を包んだ。

たちまちリャマはその場から消え、風も消えた。


そして、その光景を1人の少年がじっと見ていた。

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