第六話:パンティーヌの成れの果て
かちゃッ。
乾いた音が、優聖の耳に聞こえた。
音がしたほうを見てみると、優聖の手は――冷たい手錠によって、自由を奪われていた。
「優聖、あたしだけを見てくれなかったバツよ!」
つまり、逮捕されてしまったのだ!
「……!? お前!」
満面の笑みを浮かべながら、優聖の前で竹下が仁王立ちしていた。
そう、竹下は優聖が変態行為を繰り返している間に、ひそかに警察を呼んでいたのだ!
「盗撮、下着泥棒、悪質詐欺……ふふっ、捕まえられる要素はたっぷりね?」
「くそーっ!! こんなところで捕まるだなんて嫌だー!! うわああああああああああ!!」
叫ぶ優聖は、無常にも身柄を拘束されていく。
音千亜の冷めた、けれど少しだけ悲しそうな視線に見つめられながら、優聖は警官に連行された。
十年後……。
柵のついた牢屋の中で、優聖は過去のことを悔やんでいた。
頬や顎には大量のチョコクリームのようなひげがこびりつき、元の美少年の面影はまったく無い、もじゃもじゃのおっさんになってしまった。
「ああ……なんであの時、俺はあんなにも必死に音千亜のパンツを求めていたんだろう……」
そう考えて、優聖は、ある一つの考えを導き出した。
――もしかして、俺は、音千亜のことが好きだったのかもしれない。
優聖は臆病で弱虫でヘタレだから、ストレートに好意を表すことが出来なかった。だから、彼女のパンツを手に入れることで、少しでも彼女を近くに感じたかったのかもしれない。
ああ、こうして逢えなくなってしまうのなら、恥ずかしがらずに『好きだ』と伝えておけばよかった。
けれど、思いを伝えることは、ここから出られない彼には出来ない。
優聖の両目から、大粒の涙がこぼれた。
けれど、涙は頬を伝う前に蒸発してしまって、彼は、自分が泣いていることに気付けなかった
パンティーヌを読んでくれた皆さん、ありがとうございました!