第四話:詐欺--。
窓の外の地面では、デンジセイジンがつぶれていた。
きっと飛び降りたはいいが着地できず、死んでしまったのだろう。デンジセイジンの緑と紫が混ざったような血液に音千亜のブラとコマネチパンツは汚れてしまっていた。
優聖は無言でブラとコマネチパンツを手に持って、教室に戻った。
何故か怪盗パンティーヌの服に着替える時間すらなかったなぁ……と思いながら、でろんでろんの血液が滴るブラジャーを音千亜の顔の前に持ってきた。コマネチパンツよりも被害が酷い。
「きゃー! なによ、これ!」
「デンジセイジンの血だよ! ちょっくら叩き潰してやったぜ!」
優聖は見栄を張って嘘をついた。そして、
「ほら! ブラをとりかえしてやったんだから、パンツよこしな」
と、外道な取引を持ちかける。
「……うっ、あぅ……」
音千亜は目に涙を浮かべながら、親指をパンツにひっかけた。
「ふふふ……ふははははは!! それでいいのだよ! さぁ……早く!」
優聖は既に誇り高き怪盗ではなくなっていた。……いや、すでに人間ですらない。女の子の敵、狼だ!
にやけた口からはするどい牙が見えている。音千亜は涙目のまま、するするとパンツを下ろしていく。するする……するする……。音千亜はパンツを足首まで下ろし、今まさに脱ごうとしたその瞬間!
「あれ? 音千亜さん、なにやってんスか?」
がらがらーっとドアを開けて現れたのは、音千亜ファンクラブ(非公式)の会長だった。ちなみにこの会長もかなりの変態である。おまけにきもい。
「うぅ……何やってるって……悪質詐欺にひっかかっちゃったの! 見てわかんない!?」
音千亜はもう希望すらなかった。こいつに話したところで何になるというのだろうか。
しかし、何故か奇跡が起きる気がした。
「ウワァ、そりゃァ大変ッスね! 音千亜さんのファンとして俺、許せないッス! 何とかしてみせまッス!」
そういうと会長はオタッキー全開な携帯を取り出すと、すっと携帯を耳にあてた。
『もしもし? あ、今超一大事なんだよぉ!! ……いいから早く文芸部室に来いよぉ! 早くしないと音千亜たんのおぱんてーが鑑賞できなくなっちまうんだよ! なっ? 出来るだけ多くのファンクラブ会員を集めて撮影を始めるんだっ! よろしこっ!!』
「……くそっ! 余計なことしやがって!」
優聖は鬼のような形相で会長を睨み、音千亜に向き直った。
「オラッ! 早くパンツよこしな!」
「……ッ!!」
「オラオラセイヤ! パンツパンツセイヤーッ!!」
そう叫びながら優聖はリズミカルに音千亜の生尻を叩いた。
パンパンッ! スパパンッ! パパパンパンパンッ!!
音千亜の白いお尻が見る見るうちに赤く染まっていく。
「痛い痛い痛い痛いいったぁああああああああいッッ!!」
絶対にパンツだけは守らなくてはっ!! いつの間にかわが子をこの命に代えてでも守りたい! と願う母親の気持ちがわかったような気がした。
パンパンッ、スパパンッ! お尻はもうもちそうもない!!
そう思ったそのとき――。
『僕たちの音千亜たんをいじめるなぁああああああああああああ!!!!』
がらがらがらがっしゃん! 文芸部室、ヲタ男集団登場なう!