第三話:デンジセイジン
「な、なによコイツ!」
「アイツはデンジセイジン。すべての下着に興味を持つ者よ」
と、どこからともなく現れたのは、大木名 桃華。
変態界のすべてを知る少女だ。また、彼女自身も相当の変態であり、優聖は彼女に一目をおいている。
「そして、デンジセイジンは女だけじゃなく、男にも興味がある。その分、あなたよりも性質が悪いわ」
「な……なんだって!?」
「ほら、あなたもズボンの下に気をつけなさい」
そういわれて、彼はあわててズボンのチャックを開けた。すると、なんということだろう。彼のお気に入りのコマネチパンツがいつの間にか盗まれていたのだ!
「なんてことだ……。この俺様のパンツを盗りやがってぇ!」
謎の生物、デンジセイジンは、パンツとブラジャーを手にしながら、挑発するように腕を上下させた。
「あぁっ、もう! とにかくなんでもいいから私のブラジャー返して!!」
音千亜が胸を抱えながら叫んだ。もうカオス以外の何者でもない。
すると、デンジセイジンはぴょこぴょことノミのように飛び跳ねて、窓から出て行ってしまった。
「もう! 困ったなぁ……。ノーブラで外を出歩くなんて私……恥ずかしくて出来ない!」
そういう音千亜を見て、優聖は声をかけた。
「お前、いま、パンツは履いているか?」
「う……うん」
「それじゃ、俺はブラジャーを持っているから、お前のパンツと交換しないか?」
といいながら、優聖はワイシャツを脱ぎ、ブラジャーを外した。これは以前、山田唯という少女から盗んだものだ。なんとなく装着してきてよかった……! と思ったのもつかの間!
「キモいッ!!」
パシィン! とすがすがしい音を立てて、音千亜は優聖にビンタをした。
「い……っ!? ゆいちゃんのブラじゃ駄目だったのかッ!?」
「そうよ!! 私は自分のもの以外のブラはつけないのよッ!」
ちくしょーっ!! 折角パンツを手に入れられるチャンスだったのに!
心の中でそうツッコミまくっていると、ふと、とある考えが出てきた。
「そ……それなら、お前のブラジャーを取り返したら、パンツをくれるかっ?」
「いいわよ! けれど、本当に貴方に出来るっていうの?」
「できる! できるのだ!」
そういう優聖だったが、具体的な解決方法はなかった。けれど何故か、『絶対に捕まえれる』という根拠の無い自信が優聖にはあった。
「そこまで言うなら……あんたを信じてやってもいいわ!」
そんな音千亜の声を聴いて、優聖は教室を飛び出した。まだ……ヤツは近くに居るかもしれない。優聖はまず、デンジセイジンが飛び降りた窓の外の地面に向かった。