第5話「未完の青春、再起動」
「さて、と」
ケインたちと別れたジークは、自宅への帰り道を1人歩きながら考えていた。
(俺ももう27歳だな……。結婚かぁ……)
「まぁ、俺みたいなヤツには、アミちゃんみたいな素敵な女性は現れねぇだろうなぁ」
そんなことを呟きながらも、ジークはどこか悲壮感は無く清々しい顔をしていた。
(俺はケインみたいに立派な人間じゃないからな……。夢も叶えられてないし……。ったく、しょうがねぇ兄だ)
そんなことを考え歩いていると、ジークの自宅にたどり着いた。
「ただいま~」
誰も待っていないことを知っていても、なんとなく挨拶をしてしまうのは癖だ。
ジークは少し苦笑いしながら部屋に入ると、電気を点けてベットに腰を下ろした。
そしてそのまま仰向けになると、スマホの通知音が鳴った。
それは高校の旧友、テリーからのメッセージだった。
『クラス会の日程と、集まる予定のメンバーが決まったから教えとくな! 楽しみだなぁ』
とのメッセージと共に、日程と集合場所、そして参加するメンバーの情報が送られてきた。
『了解!ありがとうな』
そう返信し、ジークは送られてきたメッセージをじっくりと確認する。
「日程と集合場所はオッケー、と……。来るメンバーは……懐かしいなぁ……ん?」
見ていると、ふと1人の名前が目に留まった。
それは高校時代にジークが片思いをしていたものの、ついぞ告白できなかった相手の名前。
「キャシー・パーク……?」
思わず名前を口に出したジークは、慌ててスマホを閉じた。
(ど、どうしたんだ俺? さすがにこの歳で未練がましいだろ!)
少し顔を赤くして混乱しながらも、ジークは冷静になろうと深呼吸する。
(いやでも……もしかしたら会えるかもしれないのか……?)
そう考えたジークは、もう一度日程と場所を確認する。
「集合時間は明後日の18時で場所は駅前の居酒屋か……キャシー……キャシー……」
落ち着こうとするものの、さっきまで幸せそうなケインとアミと一緒にいたため、どうしても思考はそちらに引っ張られてしまう。
「ま、まぁ! もう27歳だからな。キャシーさんは素敵な女性に成長してるだろうから、もうとっくに素敵な男性と結婚してるだろう。うん」
自分に言い聞かせるようにそう呟くも、高校時代のキャシー・パークの笑顔や声、しぐさなどを思い出してしまい胸が高鳴る。
それと同時に、彼女とデートやイチャイチャする妄想が、高校時代同様に頭を駆け巡る。
そして妄想は現代に移り、クラス会で再会した自分と彼女は実は両想いで、そこから頻繁に連絡を取り合うようになり、ついに2人は……などとエスカレートしていく。
「や、やばいやばいやばい!」
自分の妄想が恥ずかしくなったジークは再びスマホを閉じると、そのまま布団に潜り込み、妄想を振り払うように頭を振る。
「す~、は~! はぁ……。落ち着け、そして寝よう……」
ジークはなんとか妄想を振り切ると、電気を消して目を瞑るのだった。
そしてそのまま眠りについたジークは、夢を見た。
それは高校時代のキャシー・パークが夢に出てくる夢だった。
『ジークくん……好き』
夢の中では、2人きりで誰もいない教室の中で、キャシーに告白されるという夢だ。
「お、俺も! ずっと前から好きだったんだ……!」
そう言って彼女の手を取ると、キャシーは嬉しそうに微笑む。
2人は見つめ合うとゆっくりと顔を近づける。
「あ……」
そして唇が重なろうとしたところで、ジークは目を覚ました。
薄いカーテン越しに朝の光が滲む。湯気の向こうで鼓動だけが少し速い。
「はぁ……なんて夢を……」
時計は朝の6時を回っていた。
汗だくになった身体を洗い流すためシャワーを浴びながら、ため息を吐くジーク。
(ほんと俺ってこの年になっても変わんねぇなぁ)
シャワーから上がって部屋着に着替えると、髪をタオルで拭きながらリビングへ。
冷蔵庫にあった麦茶をコップに注ぐと、ゴクゴクと飲み干す。
そして一息ついたところで、キャシーの笑顔や仕草を思い出してしまいまたも顔が赤くなる。
(ダメだな俺……)
そんな自分に呆れながらもジークは一息つくと、再びベッドに入り二度寝をするのだった。
目を覚ますと、すでに昼過ぎだった。
リビングに降りると、ケインが帰って来ていた。
「お、帰って来てたか。あのあとアミちゃんとゆっくりできたか?」
ジークがそう尋ねると、ケインは嬉しそうに答えた。
「ああ、兄ちゃんのおかげで楽しかったってさ。あらためて昨日はありがとうな、兄ちゃん」
頼りない兄である自分に、優秀な弟から面と向かってお礼を言われて、ジークはつい目を逸らして照れてしまう。
「い、いや別に俺は何もしてねぇよ。幸せになれよ、ケイン」
それでもなんとか言葉を絞り出すジーク。
「ありがとう。兄ちゃんも早くいい人見つけろよ!」
ケインは冗談めかして笑いながら言った。
そんな弟の言葉にジークは、再びキャシー・パークのことを思い出してしまう。
(いい人か……)
そして思わず顔が赤くなってしまったジークに、ケインは怪訝な顔をした。
「どうしたんだよ兄ちゃん? もしかして気になる人がいるとか?」
ニヤニヤしながら言うケインに、ジークは慌てた。
「ち、違げぇよ……。い、いや……違くはねぇけど……」
ジークはしどろもどろになりながら答える。
そんな兄の様子を見て、ケインはニヤニヤしながら言った。
「なんだ兄ちゃん! やっぱりいるんじゃん!」
「う……。ま、まあな……。明日の夜、高校時代の仲間で集まる飲み会があってな」
観念したかのように言うジークを見て、ケインは嬉しそうだった。
「お! 同窓会か! いいねぇ~! で、そこに昔好きだった女の子が来るってことだな?」
「べ、別に好きとかじゃねぇよ。ただ高校時代にちょっといいなと思ってただけで……」
そう答えるジークの顔は真っ赤になっている。
そんな兄の様子を見てケインは嬉しそうに言った。
「ま、そういうことにしといてやるよ! それじゃあ、ちゃんとオシャレして行かないとな!」
「……まぁ、そうだな。少しでも見栄え良くしておくよ」
「おう! いい報告を待ってるぜ!」
そう言って笑うケインに、ジークは苦笑いを浮かべるのだった。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
次回もぜひ、よろしくお願いします!




