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第二三話 災厄の足音

「団長!」


ギルフォードが駆け寄る。クレアも、フォードも、全員が岩陰に向かった。


ルシアンは少し遅れて走りながら、改めて魔眼でゴリアテを確認した。

赤い光は見えない。つまり、ゴリアテに直近の命の危険はない。


そして、もしゴリアテが本物ではなく擬態や幻術の類であれば、害意として魔眼に映るはずだ。


本物のゴリアテさんだ。生きている。


「父さん!」

クレアが、ゴリアテの前に膝をついた。


「……ん」

ゴリアテが、ゆっくりと顔を上げる。


土と血にまみれた顔。だが、その眼には、まだ光があった。


「なんだ、お前ら……わざわざ迎えにきたのか」

掠れた声だったが、口調はいつもと変わらない。


「当たり前でしょ! どれだけ心配したと思ってるの!」

クレアが怒鳴った。その声は震えていた。


「心配?俺を誰だと思ってやがる。この程度で死ぬかよ……と言いたいところだが、腹が減って死にそうだ。ついでに酒も飲みたいな」

ゴリアテは、唇の端を持ち上げて笑った。


虚勢だとわかる。


体中に傷があり、中でも右脚の傷は出血こそ止まっているが浅くない。

満足に動けなくなったから身を隠していたのだろう。

そして明らかに衰弱している。


「……団長」

ギルフォードが、静かに言った。

「あんたが生きていて、よかった」


その一言に、ゴリアテは少し目を伏せた。

「……ああ。悪いな、心配をかけた」

珍しく素直な言葉だった。


フォードが手際よく応急処置を施し、持参した非常食と水をゴリアテに渡した。


「ゆっくり食べてください。胃が弱っているはずです」


「わかってる」

ゴリアテは干し肉を小さくちぎり、ゆっくりと咀嚼した。


クレアは父の隣に座り、じっとその様子を見守っている。

先ほどの怒声が嘘のように、今は静かだ。安堵しているのだろう。


ルシアンは少し離れた場所で魔眼を使って周囲を警戒していた。


「ギルフォード」

簡単な食事を終え、人心地ついたゴリアテが口を開く。


「この森にいる例の化け物……ここに来るときにも遭遇したか?」


「ああ。お前を見つける前に一匹だがな。何とか倒した」


「倒した?」

ゴリアテが、意外そうな顔をした。


「俺たち六人がかりでな。クレアがいなければ無理だったし、ルシアンがいなければ犠牲も出ていただろう」


「ルシアン…そういえば、あのガーゴイル団の小僧がなんでいるんだ?」


「わたしも、周囲を見回ってくる」

ルシアンの名前が出ると、気の抜けた表情をしていたクレアが慌てて立ち上がりゴリアテのそばを離れた。

それを見たギルフォードが苦笑する。


「二人とも年頃だしな、例の商隊護衛の仕事で何かあったんだろう。クレアと文通していたらしい。で、行方不明の父親を追って死地に行く女を心配して駆け付けたってわけだ」


「若いヤツの無茶は嫌いじゃないが、よくここまで来れたもんだな」


「ああ、ルシアンは不思議な眼…『魔眼』を持ってる。なんでも未来の危険が見えるらしい。正直ルシアンがいなければアレンはあの化け物との戦いで死んでいただろうな」


「ほう、そりゃ感謝しねえとな。それであの黒い化け物はどうだった?」


「魔獣でも魔物でもないな。知性があるかも分からんし、誰かが悪意で作り出した化け物としか思えん」


「良いところをついてるぜ、流石だなギルフォード。お前の片目をもっていったヤツはな、驚いた事に話ができたんだ」


「あの化け物と会話ができたのか!?」

無意識に失われた目に巻かれた包帯を撫でる。


「ああ、ここからは全員に話をしておくか…みんな集まってくれ」


ーーーーーーー

ぐるりと自分を囲む六人を見回すとゴリアテが口を開いた。


「あの黒い化け物、奴らは『劫魔(ごうま)』というらしい」


劫魔(ごうま)……?」

「聞きなれない言葉ね?」

「悪魔のたぐいでもないのか」

みなが口々に疑問を抱く。


「俺に聞かれても分からんぞ。あいつらの『自称』だ。やつらはこのノクスラントに封じられている神、『ヴァイセン』ってやつの眷属で、自分たちの事を劫魔だと言っていた」


「神?ずいぶんスケールの大きな話っすね」

頭をかきながらジムが応える。無理もないことだ。


「『災厄のザルガ』と名乗る一匹と随分剣を交えたが、そいつがベラベラとよく話すヤツでな。その封じられたヴァイセン様がもうすぐ解放されるんだとよ」


「ちょっとまってよ、父さんあいつらと会話できたの?」


「俺が会話できたのはそのザルガってやつだけだ。自分に『災厄』なんて二つ名をつけるなんてアホなヤツだと思ったが…強さだけは確かに災厄かもしれねぇ」


「団長と剣を合わせて、まだ生きてるんですか?」


「ああ、正直に言えばな、俺が虎の子の煙幕を使って逃げ出した。あのまま戦っていたら負けていただろうな」


「そんな……父さんが勝てないってほとんどの人間が勝てないって事じゃない!?」


「俺は別に人間の代表になったつもりはないがな、一対一で戦うのは得策じゃない。だからといって、数だけいても死人が増えるだけ。難しい相手だな」


「対策は立てられそうか?」

ギルフォードが問う。


「分からん、生意気にも剣は達者だし、よく分からん魔術も使ってくる。俺の剣が心臓のあたりを貫いても平気だったから弱点も人とは違うんだろう。幸いなのは、知性の高いやつは数が少ないってところだな」

もっとも…と言って革袋から水を飲む。


「その知性が高いのが少ないって話も、当の本人からの情報だから本当かどうか知らんがね」


「その、ザルガって劫魔は何て言っていたんですか?」

ルシアンは少なからず動揺を隠せなかった。まさか自分の出生の地に隣接するノクスラントにこんな未知の危険が潜んでいたとは。


「ヴァイセン様が心血を注いでお力を与えてくださった四人の上級劫魔、そして私を含めた六名の中級劫魔はなんたらかんたら、って正直覚えちゃいねぇ。だが、災厄のザルガってやつは中級なんだろうよ。だが一つ言っておくぞ」


ゴリアテは改めてぐるりと全員の顔を見回す。


「とにかく、そいつに出会ったら戦うな。どんな手を使ってでも逃げろ」

すっと、ギルフォードが立ち上がりゴリアテの言葉に頷く。


「……分かった、お前らもいいな!」

ギルフォードが、団長の言葉を改めて皆に言い渡した。


少し休息を取った後、一行は撤退を開始した。


ゴリアテは立ち上がれるまで回復していたが、万全には程遠い。骨こそ折れていないが、右脚の傷が深く一人では満足に歩けない。ギルフォードが左から支え、ゆっくりと森を進む。


ルシアンが先頭で周囲を警戒し、アレンとフォードがゴリアテとギルフォードを挟むように進む。クレアはしんがりだ。


「おい、ルシアン」

不意に、ゴリアテが声をかけてきた。


「は、はい」


「少し話がある。ギルフォードと交代してちょっと肩を貸してくれ」


ギルフォードが自然に離れ、ルシアンがゴリアテの左側につく。

肘から先がないゴリアテだが、ルシアンの肩に乗る上腕からは逞しさを感じる。


しばらく無言で歩いた後、ゴリアテが口を開いた。


「……助けに来てくれたこと、礼を言う」


「いえ、俺は皆さんについてきただけで……」


「謙遜するな」

ゴリアテが、ルシアンを見た。


「お前の眼がなければ、俺を見つけられなかったかもしれんし、誰かが、少なくともアレンが死んでいたとギルフォードから聞いた」


ルシアンは、何と答えていいかわからなかった。


「それと」

ゴリアテが、周りに聞こえぬよう声を少し低くする。


「お前、娘が、クレアが好きなのか?」


「え!?」

思わず声を上げ、ゴリアテの肩越しに最後尾のクレアを見る。


彼女と目が合うが、口元が『前を向け』と言っているのが分かった。


「はい……好きなんだと……思います。その、俺なんかがすみません」


「何で謝る?もしかして、もう手を出したのか?」


「手?いや、そんなことは誓って!」


「逆に何で手を出さん?娘は器量も悪くないだろう?」


はぁ…とルシアンが困り顔で息を吐く。

「ゴリアテさん、からかってますよね」


ゴリアテは愉快そうに笑った


「悪いな、半分は冗談だが、しっかり聞いておく必要があるのは本当だ。正直、俺はお前の事をよく知らん。サルタニアの闘技場でクレアから逃げ回っていた姿は見てたがな」


「あれから......この半年足らずの間、自分なりに鍛えているつもりですけど、正直、クレアとの差が埋まった気はしません」


「よーいドンでクレアと戦って勝てるようになるかは、一生かけても分からんぞ。それだけ娘は特殊な存在だ」


「それは、そうかもしれません……」


「でもな、正直お前の顔を見て『見違えた』と思ったぜ。ちょっと堅いが覚悟が決まってる顔だ」


「……」


「クレアには、同年代で心を許せるヤツがいない。親として不甲斐ないことこの上ないんだが……この先、クレアを任せてもいいか?支えてやってくれるか?」

ゴリアテの目に揶揄うような色はない。


「クレアが何て言うか分かりませんが、俺の方は支えに…守りたいと思ってます」


「そうか、隣国のアイーダにリーフェという村がある。もし、クレアが母親の事を知りたがったらそこに連れていってやってくれないか?」


「はい…でも、クレアに直接伝えないのですか?」


「まぁ、色々あってな……」

ゴリアテは言葉を濁した。何かを言いかけて、飲み込んだようにも見える。


「まあ、覚えておいてくれたらそれでいい」

ルシアンは追及しなかった。言えない事情があるのだろう。


木々の間を抜けるひんやりとした風が、汗ばんだ肌に心地よい。だが、森の奥から漂う空気には、どこか淀んだものが混じっている気がした。


「そういえば」

ゴリアテが話題を変えた。


「お前の眼、『魔眼』だったか。ギルフォードから聞いたが、実際のところ、どういう代物だ?」


「自分に迫る『死の危険』をはらむモノが赤く光って見えるんです。危険度が高ければ深紅、間接的なものなら薄い赤、そんな感じです」


「俺も色んな魔眼持ちと会ってきたが、初めて聞くな」


「あとは、最近になって、自分が『意識した人』の危険も視えるようになってきました。ただ、自分への危険予知なのか、自分以外の人への危険予知なのかまでは分かりませんから、対象を広げ過ぎると、戦場全てが赤く見えて役に立たなくなりそうです」


「便利な眼なんだか、よく分からんな…いや…」

ゴリアテは少し考えるように間を置いた。


「便利なだけじゃ済まんか。死の危険見えるってのは、精神的に楽なもんじゃないだろう」


「そうですね、でも俺が今生きてるのはこの眼のお陰ですから」

そういって苦笑するルシアンだった。


前方で、ギルフォードが手を挙げた。小休止の合図だ。

一行は足を止め、各自が水を飲んだり、武器の具合を確かめたりする。


クレアが後方から歩いてきて、ゴリアテの様子を確認した。

「父さん、大丈夫?」


「ああ、問題ない。少し休んだら歩ける」


「無理しないでよ。ルシアン、ごめんね。後で代わるから」

水を一口飲むと、クレアはルシアンに何か言いたげな視線を一瞬だけ向けたが、小さく首を振ると赤銅色の髪を翻して隊列後方の歩哨に戻った。


その様子をゴリアテは口を半開きで見送った。

「お前……俺が思った以上にクレアと良い雰囲気じゃねえの」


「なんですか、急に!?」


「いや、あんなに柔らかい表情を見せる娘の顔は初めてみたぜ。ニーナとダブって見えた。ニーナはさっき話したクレアの母親で、今は亡き俺の最愛の妻だ」

ゴリアテは感心したように頷いた。


「ルシアン、お前生まれは?その年で傭兵なんぞやってるって事は戦災孤児か?」


一瞬ためらったが、クレアに明かした秘密だ。ゴリアテに隠す理由も見つからなかった。

「俺、ロス公爵家の生まれなんです」


ゴリアテの眉が動いた。

「ロス公爵家……。王家も含めた七大貴族の一つじゃねぇか。だが......十年近く前か?王家に反逆したとかでノヴァク公爵の兵に攻められて、取り潰された家だな」


「流石に、お詳しいですね」


「まあな、 いくさの種に鼻が利かなくなったら傭兵はやってられないからな。といってもサイクロプス団は関わっちゃいないぞ」


ルシアンはその言葉に少しばかり安堵を覚えた。


「俺は、その戦火の中で父の親友だったっていう、ガーゴイル団のゲイル団長に預けられて、今日まで何とかやってきました。正直、何となく悔しいって気持ちも無くはないんですけど、生きる事で精一杯って感じでしたね」


「お前もなかなか複雑な生い立ちだな」


ルシアンは、クレアを見た。彼女は少し離れたところでギルフォードと何か話している。

「クレアには、俺の生い立ちを話したんです。そうしたら……」


「そうしたら?」


「俺のために、ロス公爵家の跡地を見に行ってくれたんです。焼かれた公爵邸は、何故かまだ、ノヴァク公爵の私兵が封鎖していたらしくて…それなりに危険だったはずなんですけど……」


ゴリアテは黙って聞いていた。


「なんだか、嬉しくて」

ルシアンの声には、素直な感情がこもっていた。


ゴリアテは娘の背中を見た。

(……なるほどな)

内心で、ゴリアテは納得した。

クレアはルシアンに惹かれているのだろう。直情的な娘がわざわざ危険を冒して誰かのために動くなど、よほどのことだ。


「ルシアン」


「はい?」


「さっきのクレアの母親の話だがな…」


―――

その時、ルシアンの魔眼が、激しく反応した。


視界の端に、光。赤ではない。深紅だ。

これまで見たどの警告よりも濃く、禍々しい。


「敵が……来ます!」

ルシアンが叫んだ瞬間、木々の間から影が現れた。


「ほう」

低く、しかし明瞭な声。


二本の足、二本の腕、その上には人のような頭部。形状は人間のようだが、表皮は漆黒の体躯。

こいつらに性別があるのか体格や声からは男のように思える。

頭部には一角獣のような角が生え、瞳は金色。

そして全身からは圧倒的な威圧感を感じた。


「また会えたな、『傭兵王ゴリアテ』」


「……災厄のザルガだったな」

ゴリアテが、ギリリと歯を食いしばった。


「しつこい野郎だ…」


「当たり前だ。この地を管理するのがわれの尊き使命、不遜に立ち入った者を逃がす道理はない」


「ふん、俺をはじめ四人は無事に逃げのびたぞ。存外大したことがないんじゃないか?」

スッとゴリアテに並んだギルフォードがザルガに挑発めいた返答を返す。


「あの時の仲間が戻ってきたのか?お前は覚えているぞ我が目を潰した男だな。だが…他は顔ぶれが違うな。いずれにしても、七匹に増えたとは、嬉しい誤算だ」


(七匹……)

ルシアンは、その言葉に背筋が冷たくなった。人間を獲物としか見ていない。


「我はヴァイセン様の迷宮神殿を守護する者。その使命は崇高。だが......正直に言えば、退屈をしていたのだ。そして、我がどの程度の力をヴァイセン様から与えていただいたのか、常々知りたいと考えていた。そんな時にお前たちがやってきた。そこの『傭兵王ゴリアテ』は人間の中ではまずまず強いのだろう?忌々しい戦神メイスの力をそれだけ振るえる者はそう多くあるまい。我はそれと互角以上に戦えた。それだけで、ヴァイセン様の偉大さを実感できるというものだ」

ザルガの声には、純粋な喜びが混じっていた。


「全員、逃げろ!」

ゴリアテが、低く言った。


「こいつは俺が引き受ける。お前たちは森を出ろ」


「団長」

ギルフォードが、静かにもう一歩前に出た。

「さっきは、ああ言いましたけどね」

そして剣を抜く。


「サイクロプス団は、アンタがいてこそですよ」


「ギルフォード……お前」


「俺も残る」

ジムが、バスタードソードを構えた。


「逃げろって言われて逃げられるかよ」

「同意です…」

アレンもフォードも、武器を手にした。


「父さん」

クレアが、二振りのショートソードを抜いた。

「私も戦う。置いていくなんて、絶対にしない」


「お前ら……」

ゴリアテは何か言おうとして、やめた。

代わりに、小さく笑った。

「……馬鹿な連中だ」


「ほう、今度は誰も逃げぬとは結構なことだ」

ザルガが、芝居がかった仕草で手を叩いた。


「楽しみが増えた」

そして、指を鳴らす。

パチン、という乾いた音が森に響いた。


次の瞬間、木々の間から、影が湧き出した。


黒い皮膚。金色の目。


だが、その形は様々だった。

不定形に蠢くもの。獣のような四足のもの。八本、十本と異常な数の脚を持つもの。海の底にいそうな、ぬめりを帯びたもの。

共通するのは、まともな生態系には存在しえない、奇形にして異形の姿。


「下級劫魔だ」

ゴリアテが、吐き捨てるように言った。


「数は……十は超えてるな」

ルシアンの魔眼が、赤い警告で埋め尽くされた。視界のあちこちが、危険を示す光で染まっている。


「傭兵王ゴリアテよ」

ザルガが、一歩前に出た。


「我はお前との戦いの決着を楽しみにしていた。だから提案しよう」


「提案だと?」


「お前の仲間には、下級どもの相手をしてもらう。その間に、我とお前で決着をつけよう。どうだ?」


「……俺を殺すまで、お前は他の奴らには手を出さないと?」


「ああ、違えぬ」

ザルガの口元が、歪んだ笑みを浮かべた。


「もっとも、お前を始末した後は、残りも殺すがね。逃がすつもりはない」


「父さん……!」

クレアが声を上げた。

ゴリアテは満足に歩けない。右脚の傷が深すぎる。そんな状態で、あの化け物と一対一など——


「クレア」

ルシアンが、クレアの腕を掴んだ。


「落ち着いて」


「でも、父さんが——!」


「分かってる。だから、俺たちはこっちを早く片付ける」

ルシアンは、周囲を取り囲む下級劫魔を睨んだ。


「ゴリアテさんに加勢するために、まずこいつらを倒す。それしかない」


クレアは、ルシアンの目を見た。

そこには、恐怖があった。だが、それ以上に、決意と覚悟があった。


「うん、……分かった」

クレアは、深く息を吸った。


クレアの琥珀色の瞳が、金色を帯び始める。

劫魔の金目とは異なる、ルシアンが美しいと感じる色だ。


「早く片付けて、父さんを助ける」


「ああ」

ルシアンも目の前の一体に向けて剣を構える。


ザルガが、両腕を広げた。

「さあ」


その声が、森に響いた。

「始めようか、人間」

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