第7話:反撃の狼煙
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穏やかな日々が続き、私の心と体はすっかり癒されていた。けれど、夜になると、ノワールが書斎にこもっていることに、私は薄々気づいていた。
私のために、彼が一人で何かを背負い込んでいる。その事実が、私の胸をちくりと刺した。
朝食の席で、私は意を決して、向かいに座る彼に言った。
「ノワール、私にも何か手伝わせてほしいの」
スープを口に運んでいた彼の手が、ぴたりと止まる。金色の瞳が、静かに私を見つめていた。
「あなたが、私のために何かをしてくれようとしているのはわかるわ。でも、それは私自身の問題でもあるはず。あなた一人に全部背負わせるのは嫌。私も、自分の足で立ちたいの」
私の言葉に、ノワールは少し驚いたような顔をした後、困ったように微笑んだ。
「君は、ここにいてくれるだけでいいんだよ。休んでいてほしい」
「…嫌」私は、はっきりと首を横に振った。
「もう、守られているだけなのは嫌なの。お願い」
私の瞳に宿る光が、ただの感傷ではないと悟ってくれたのだろう。彼は小さくため息をつくと、降参したように両手を上げた。
「…わかった。じゃあ、まずは自分の身を守ることから始めようか」
その日の午後、私たちは隠れ家の裏にある開けた場所に来ていた。
「まずは、この世界の基本である四代元素魔法を試してみよう」
ノワールの言葉に従い、私は両手を前に突き出し、意識を集中させる。炎を、水を、風を、土を――。けれど、何度やっても、私の手からは何も生まれなかった。
「やっぱり、私には無理なのかしら…。あなたの足手まといになるだけだわ」
肩を落とす私に、ノワールは近づいてきて、優しく首を振った。
「そんなことはない。君がそばにいてくれるだけで、僕の力は何倍にもなる。魔法なんて使えなくても、君は僕にとって、誰よりも何よりも大切な存在だよ」
その温かい言葉が、じんわりと心に染み渡る。足手まといなんかじゃない。そう言ってくれるだけで、私は強くなれる気がした。
(ノワールの役に立ちたい)
ただ純粋に、そう願った瞬間だった。
ぽん、と。
私の手のひらの上で、何かが生まれた。それは、太陽の光をぎゅっと集めたような、温かい小さな光の球だった。
「え…?」
光はすぐに消えてしまったけれど、私とノワールは、確かにそれを見た。
「…やっぱり」
ノワールが、確信に満ちた声で呟く。
「君の力は、特別なものなんだ」
◇
その夜、ノワールは「君にも協力してほしいことがある」と、私を書斎に招き入れた。
壁に貼られた王都の地図と貴族たちの相関図を見て、私は息をのむ。彼が夜な夜な、これほどの準備をしていたなんて。
「まずは、君の無実を証明し、貶められた名誉を回復する必要がある。そのための最初の舞台として、近々王城で開かれる舞踏会を利用したい」
彼は、私に計画の一部を明かしてくれた。
「僕が、君を陥れた者たちが墓穴を掘るような『仕掛け』を用意する。リリアには、その舞台の『主役』を演じてほしいんだ」
私の役割は、「白銀の仮面の淑女」として、ただ堂々と舞踏会に参加し、人々の注目を集めること。それだけだと彼は言った。
何が起こるのか、全容はわからない。でも、ノワールが私を必要としてくれている。それが何よりも嬉しかった。
部屋の隅に置かれていたトルソーには、息をのむほど美しい、夜空色のドレスがかけられていた。その隣には、繊細な銀細工が施された、白銀の仮面。
「大丈夫。僕が必ず君を守る。君はただ、世界で一番美しい淑女として、そこにいてくれればいい」
彼の言葉に、私はこくりと頷いた。
不安よりも、信頼が勝る。守られるだけの令嬢ではない。彼と「共に戦える」ことへの静かな高揚感が、私の胸を満たしていた。
私とノワールは、互いの瞳を見つめ合う。
それは、復讐の舞台へと向かう、二人のパートナーが交わした、静かで、しかし何よりも強い誓いの瞬間だった。
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