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第5話:僕たちの家

いつも読んでくださりありがとうございます!


本日連載開始で朝に4話投稿しましたが、

本日、もう数話ほど更新することにしました!


楽しんでいただけると嬉しいです。


明日も更新予定です(*^^*)


それでは、どうぞ!




ノワールの腕に抱かれたまま、私は息をのんで彼の横顔を見つめていた。その瞳に宿る静かな怒りが、不思議と私を安心させた。


「な、何者だ貴様!」「その罪人を離せ!」


影の束縛からかろうじて逃れた衛兵が、震える声で剣を構える。だが、ノワールは気にも留めなかった。


「……やかましい」


彼がただ一言呟くと、衛兵たちの足元の影が再び蠢き、今度は巨大な闇の手となって彼らの体を優しく、しかし抗うことのできない力で包み込んだ。悲鳴を上げる間もなく、衛兵たちは一人、また一人と闇の中へ沈み、気を失ってその場に崩れ落ちる。


殺したわけではない。

ただ、眠らせただけ。その手際の見事さに、彼の力の底知れなさを垣間見た気がした。


「さあ、行こう、リリア」


彼は私を抱いたまま、まるで闇に溶け込むように歩を進める。追手の怒声や警鐘が背後で遠ざかっていくが、私たちの歩みを止めるものは何もなかった。


王城の堅牢な壁も、厳重な警備も、彼の前では意味をなさない。私たちはまるで、誰にも見えない幽霊にでもなったかのように、静かに、そして迅速に王都の喧騒を抜け出した。


どれくらい経っただろうか。気づけば私たちは、王都郊外にある小さな一軒家の前に立っていた。森に囲まれた、静かで目立たない隠れ家だ。


「ここは…?」


「僕たちの家だよ。君がいつか話してくれただろう?『静かな場所で、二人で暮らしたい』って。急いで用意したから、あまり豪華じゃないけど」


彼はそう言って、少し照れたように微笑んだ。家の中は、彼の言葉とは裏腹に、塵一つなく整えられていた。暖炉には穏やかな火が熾され、部屋の隅には、私が好きだと話したことのある白いカモミールの花が飾られている。


彼は私をそっとソファに下ろすと、手際よく温かいスープを用意してくれた。


「まずは体を温めて。ずいぶん痩せたね…僕がいない間に、どれだけ辛い思いをしたのか……」


言いかけて、ノワールは悔しそうに唇を噛んだ。

その姿に、私はたまらなくなって問いかけた。


「教えて、ノワール。あなた、本当に私の知っているノワールなの…? なぜ、人の姿に…」


彼はカップを置くと、私の前に跪き、まっすぐに私を見つめた。


「僕は、ただの猫じゃなかったんだ。古に存在した聖獣『闇猫ノクターン・リンクス』…その末裔だった」


彼は静かに語り始めた。


本来の力をほとんど失った状態で私に拾われ、共に過ごすうちに、私を唯一の主と定めたこと。そして、寿命が尽きる瞬間、私を守りたいという強い願いが引き金となり、魂が根源へと回帰し、本来の力を取り戻し、人間に転生したのだという。


「力を完全にするのに、少しだけ時間がかかってしまった。本当にごめん、リリア。寂しい思いをさせて」


「ううん…」私は首を横に振る。

「ううん、いいの。また会えただけで…私は、それだけで…」


再び溢れそうになる涙をこらえていると、ノワールは私の手を再び強く握りしめた。


「もう二度と、君から涙の雫一粒たりとも零させはしない。僕のすべてを懸けて、君を守る。だから…」


彼は私の手を取り、その甲に誓いの口づけを落とした。


「だから、どうか安心して休んで。君が眠っている間に、愚かな者たちへの報いの準備は、すべて僕が終わらせておくから」


その言葉は、何よりも心強い魔法だった。数週間ぶりに感じる、心の底からの安らぎ。抗いがたい眠気に誘われ、私はゆっくりと意識を手放した。


夢と現の狭間で、誰かが私の髪を優しく撫でるのを感じた。猫が甘える時にするように、そっと頬をすり寄せてくる気配。


ああ、本当に…。私の騎士様が、帰ってきてくれたんだ。


今回もお読みいただき、

本当にありがとうございましたm(_ _)m


今後の展開に向けて、

皆さんの応援が、何よりの励みになります。


「面白かった!」

「続きが気になる!」と思っていただけたら、


ぜひ、

【ブックマーク】や【評価(★〜)】、

【リアクション】、そして【感想】

で応援していただけると嬉しいです!


誤字脱字報告も大歓迎です。


皆さんの声が、

私の創作活動の本当に大きな原動力になります。


次回更新も頑張りますので、

引き続きお付き合いいただけますと幸いです!

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