第27話:君という光
これで完結となります。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
ぜひ、今後の創作活動のためにも、ご評価やご感想を忌憚なくいただければとても嬉しいですm(__)m
「私たちは、二人なら無敵でしょう?」
私の言葉は、絶望に満ちた玉座の間に、静かに、しかし凛として響き渡った。
混沌の王が放つ、全てを圧し潰すようなプレッシャーの中、ノワールは私の瞳に宿る揺るぎない光を見て、一瞬、息を呑んだ。そして、彼はふっと、その口元に、絶対的な信頼に満ちた笑みを浮かべた。
「…ああ、その通りだ。忘れていたよ。僕の主は、いつだって、僕なんかよりずっと、気高くて強いんだった」
彼の言葉に応えるように、私は全身の魔力を解き放つ。私の体から溢れ出したのは、もはやただの治癒の光ではない。この世界に存在する、あらゆる邪悪を浄化し、秩序へと導く、原初の聖なる光そのものだった。
「ノワール!あなたの闇を!」
「言われなくとも!」
ノワールもまた、全魔力を解放する。彼から放たれたのは、混沌の王が纏う破壊の闇とは似て非なるもの。全てを呑み込み、無に還し、そして新たな始まりを準備する、夜空のように静かで、深い、秩序の闇だった。
私の純白の光と、彼の漆黒の闇。
対極であるはずの二つの力が、玉座の間の中央で、互いを打ち消し合うことなく、惹かれ合い、そして、完全に一つに混じり合った。
それは、破壊でも、消滅でもない。
混沌を秩序へと還し、無から有を生み出す、伝説にも記されていない奇跡。
――『創生の魔法』。
私とノワールの、揺るぎない絆だけが生み出すことのできる、究極の魔法だった。
「僕たちはずっと一緒だ、リリア!」
「ええ、永遠に!」
私たちの心が、完全に一つになる。
光と闇が螺旋を描きながら、巨大な奔流となって、混沌の王へと突き進んだ。
『オオオオオオォォォ…!』
混沌の王が、断末魔の叫びを上げる。その不定形の体は、創生の光に包まれ、その内なる憎悪と絶望が、次々と浄化されていく。禍々しい闇は、温かな光へと変わり、やがて、全ての存在が、きらきらと輝く光の粒子となって、天へと昇っていった。
光が収まった時、玉座の間には、静寂だけが残されていた。
王都を覆っていた暗雲は消え去り、窓からは、再び、優しい太陽の光が差し込んでいる。
全ての戦いは、終わったのだ。
◇
王都は、解放された。
ダリウスのクーデターと、混沌の王の降臨という未曾有の危機は、聖女リリアーナと、謎の黒騎士ノワールの活躍によって、完全に退けられたのだ。
第二王子が新たな国王として即位し、王都の復興が始まった。
私は「救国の聖女」として、ノワールは「救国の英雄」として、人々から最大限の賛辞と栄誉を受けた。国王からは、王都に留まり、国政に力を貸してほしいと、何度も懇願された。
だが、私たちの答えは、決まっていた。
私たちは、全ての公職を丁重に辞退し、愛する故郷、ヴァインベルク領へと帰ることを選んだのだ。
◇
季節は巡り、秋。
ヴァインベルク領では、平和の訪れと、豊かな実りを祝う、過去最大規模の収穫祭が開催されていた。
領地は、リゾートを訪れる貴族や、特産品を求める商人たちで溢れかえり、どこもかしこも、人々の笑顔と活気に満ちている。
リーナがプロデュースした「聖果」のスイーツの店には、大陸中から人が集まり、長蛇の列を作っていた。テオが率いるヴァインベルク騎士団は、その頼もしい姿で、領地の平和を誇らしげに守っている。
私は、領主として、月の庭園を見下ろせるバルコニーから、その光景を感慨深く見つめていた。
辛かったこと、苦しかったこと、全てが、この輝かしい光景に繋がっていた。
「素晴らしい眺めだね、リリア」
ふと、隣に立ったノワールが、優しい声で言った。
「ええ。見て、ノワール。みんなが笑っているわ。これが、私たちが守りたかったものなのね」
「ああ。そして、君が笑っている。それが、僕が守りたかった全てだよ」
祭りの喧騒が、心地よいBGMのように聞こえる。
私は、この上ない幸福感に包まれながら、ずっと胸に秘めていた想いを、彼に伝える覚悟を決めた。
「ノワール…」
私は、彼の騎士服の袖を、きゅっと掴む。
「私、あなたのことが好きです。私の、ただ一人の騎士様としてではなく…一人の男性として、愛しています」
勇気を振り絞って告げた言葉。
ノワールは、一瞬、世界で最も幸せな顔で驚いた後、その大きな腕で、私を優しく、しかし力強く抱きしめた。
「…僕もだよ、リリア」
彼の声は、喜びと、愛しさに、微かに震えていた。
「君が僕を拾ってくれた、あの寒い日から、僕の世界には、君という光しかないんだから」
彼は、そっと私の顔を上げさせると、その唇に、深く、愛に満ちたキスを落とした。
月の庭園の柔らかな光が、私たち二人を、祝福するように包み込む。
もう、虐げられるだけの公爵令嬢は、どこにもいない。
私の隣には、最強で、最高に甘い、私のただ一人の騎士様がいる。
私たちが築き上げた、この日だまりのような楽園で、二人の幸せな時間は、ここから、永遠に続いていく――。
【完】
完結までお読みいただき、本当に本当にありがとうございました( ;∀;)
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また、もう1作連載中の『リジェクトコード 〜ミミズに転生したけど、理不尽な社会はもうこりごりなので、竜のチカラを解放して、世界を破壊することにします〜』は連載中ですので、こちらも併せてお読みいただけると嬉しいです!
→こちらはミミズが人間になって、俺ツヨかます話となってます^^
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長いような短いような連載でしたが、最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
ぜひ、今後ともよろしくお願いいたします<(_ _)>




