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第6話:スコーン騒動と、キノコ三姉妹の初登場



スコーンは簡単に焼ける――はずだった。


「マスター、なんか……キッチンフロアの天井、ぴょこんぴょこん動いてません?」


ポヨが言ったとおり、天井から“きのこらしき何か”が、ぶら下がっていた。しかも、三つ。


「……スコーンの発酵、見にきたのか?」


「違いますね! あれ、きのこです! しかも、動いてます!」


三つのきのこは、ふるふると揺れながら着地した。足のようなものをちょこちょこ動かし、帽子のようなかさを小さく傾けながら――


「こんにちは〜、マスター〜」

「にゅふふ、ジャムの匂い〜」

「ふわ〜、お菓子お菓子〜!」


「な……なにこのキノコたち……」


ポヨがぴょんっと跳ねて距離を取る。


「マスター、あいつら《菌糸ネットワーク》の住人です! このダンジョン内に自然発生する魔物型植物、通称《キノコ三姉妹》です!」


「誰がそんな呼び名を……」


「僕が今つけました!」


三姉妹は、それぞれ帽子の色が違った。


赤いかさで元気な長女、ムク。


白いかさでぽわぽわしてる次女、ネネ。


黒っぽいかさでぼそぼそ喋る三女、クロム。


「このダンジョン、あったかくて、甘くて、最高〜♪」


「ここに住んでいいですか〜?」


「いいとも言うまで住みます〜」


「えぇ……」


けれど不思議なことに、彼女たちが歩いたあとは、畑の土がふっかふかになり、空気がやたらフレッシュになる。


「……あれ。これ、浄化されてない?」


「はい、あの子たち、《空気清浄》と《土壌回復》の特性を持ってます!」


「えっ、有能」


「でしょ!?」


そのまま三姉妹は、ジャム工房フロアの片隅にちゃっかり根を張り、

パンの香りに誘われてキッチンへ侵入してきた――というわけだ。


スコーンの生地をこねながら、俺はティアに訊いた。


「どうする? この子たち、放っておく?」


「いいんじゃないですか? かわいいし。しゃべるし。あったかいし」


「……それ、全部スライムにも言えますよね!」


ポヨが抗議する。


「いやいや、あの三姉妹、なんか得体が知れないんですよ!? クロムなんて、時々詩を呟いてますし!」


「“泡立つ香り、焼かれる宿命……”って、さっき言ってたな」


「……スコーンの気持ちを代弁してるんでしょうか」


そんなことを話しているうちに、焼き上がったスコーンの香ばしい匂いがフロアいっぱいに広がる。


焼きたてのスコーンに、昨日のジャムを添えて――

甘くて香ばしい、優しい朝食の時間が始まった。


「いただきまーす!」


「うまぁあああああいっ!」


「きのこも、いただきま〜す」


「いや、きのこは食べる側じゃなくて!?」


スコーン作りは無事(?)成功。

キノコ三姉妹という新たな住人も加わり、ダンジョンはますます賑やかになっていく。


けれど――あくまで、のんびりと。


「明日は何しようかな。ハーブを乾かして、ティーセットでも作るか」


「それなら、僕、陶器製造魔法、習得しますよ! 今から!」


「それ、どっちかというと錬金術では……」


そんな、ゆるゆるとした会話が続く昼下がり。

最果てのダンジョンは、今日もまた静かに、温かく息づいている。

◇あとがき

今回は新キャラ・キノコ三姉妹の登場回でした。

ほんのりファンタジーな魔物たちが、暮らしの中に自然に溶け込んでいく感覚を出したくて描きました。


この世界は、異世界でありながら“現代の田舎”のような、そんな居心地のよさを目指しています。


◇応援のお願い

キノコ三姉妹のように、このダンジョンを訪れてくれる読者が増えてくれることを願っています。

もしこの物語がちょっとでも気に入っていただけたら――

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