第53話『欠片が集めた音と、ティアの秘密の約束』
棚の欠片はいつの間にか十指で数えきれないほどに増えていた。
ティアは小さな布でそっとその表面を磨くと、微かな線のつながりを見つける。
「昨日より、模様が繋がってる気がします」
ポヨは大きく頷き、ノートを取り出して欠片の模様を写した。
「ほら、ティアさん。ここ、この線!昨日はなかったですよ」
「本当……ありがとう、ポヨ」
ティアは微笑んでポヨの頭を撫でる。
ポヨは照れたように目を細め、またノートに向き直った。
モグは棚の奥からまた別の欠片を持ってきた。
欠片は光を帯びており、置かれた瞬間に微かに音を立てる。
「また鳴いた!」
ポヨが顔を輝かせる。
ティアはそっとその欠片に手を置いた。
「……この音をもっと集めたいですね。全部が響いたら、どんな音楽になるんでしょう」
「絶対きれいですよ!」
その夜、ティアは誰もいないカウンターの隅で、小さな紙片に何かを書いていた。
ポヨは不思議そうに覗き込む。
「ティアさん、それなに書いてるんですか?」
「……内緒です。ポヨには、まだ秘密」
ティアは少しだけ頬を赤くして、小さな封筒に紙をしまった。
ポヨはくすぐったそうに笑う。
「じゃあ、ぼくも秘密にします!ティアさんがいつか教えてくれるまで」
棚の欠片は夜が深くなるほどに、微かに光りながら音を繰り返した。
それは外の雨音やモグが棚を整える音と混ざり、小さな旋律になって響いた。
「この音、きっと欠片が喜んでるんだと思います」
ティアはそう呟くと、欠片をそっと撫でた。
モグは欠片を見つめ、静かに目を閉じてその音に耳を澄ませた。
やがてポヨがそっと言った。
「欠片が全部繋がったとき……ぼく、お願いごとするんです」
「どんなお願いですか?」
ティアが尋ねると、ポヨはにこっと笑ってノートを胸に抱いた。
「この場所がずっとこのままでありますように、って」
ティアはそっと涙を堪えて微笑み、モグは欠片にそっと触れながら小さく頷いた。
【第五十三日目:欠片が響かせた音と、秘密の約束】
・棚の欠片は少しずつ線を繋げながら、夜の中で小さな音を鳴らした
・ティアは誰にも内緒の手紙を書き、ポヨはいつかのお願いを胸に決めた
・モグは欠片に触れ、静かにその音を受け止めていた




