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第5話:ダンジョン産の果実で、手づくりジャム工房をつくろう



「マスター、ハーブティーに合う“甘いもの”が欲しいです!」


朝一番、ティアとポヨが揃って目を輝かせながら訴えてきた。


「昨日は浮遊ベッドで昼寝したし……今度は、口に甘いやつをお願いします!」


「確かに、そろそろお茶菓子的なものがほしいですね」


「……なるほど。じゃあ今日はジャムでも作るか」


「やったあああ!!」


「でも、材料って?」


「《果実の森》を作るしかないな」


《ダンジョン編集》の力を使い、地形を拡張する。

今回は《果実の森フロア》を生成。


広く、日の光に似た光が射し込む空間には、青や赤の果実がたわわに実る樹木がずらりと並ぶ。


スライムのポヨがぴょんぴょん跳ねて興奮している。


「うおおお……これ全部、食べていいんですか!?」


「勝手に食うな。選別してからだ」


ティアはと言えば、夢中で果実を眺めながらノートを開いていた。


「この白い実、リンゴとナシの中間みたいな味……皮が薄くて煮込み向きですね」


「こっちの黒いベリーは……酸味が強いけど、火を通せば良いアクセントになるかも」


さすがは旅人だけあって、食に関しては鋭い。

彼女とポヨ、そして俺の三人で、バスケットにいくつもの果実を摘み取っていく。


ジャム作りは、果実を刻み、火にかけ、魔素糖と呼ばれる異世界の砂糖で煮詰めていく工程になる。


「煮込みは任せてください! 魔力火加減、得意です!」


「よし、じゃあ任せた。焦げたらスライム鍋な」


「命がけで火を見守りますっ!」


ティアは果実を潰しながら、じっくりと煮詰め用の瓶を並べていた。

俺は木製の小瓶にラベルを書いていく。


《紅霧ベリーの甘酸っぱジャム》

《白桃果のとろふわジャム》

《柑橘毒実(※毒なし)の爽やかジャム》


「このネーミングセンス、嫌いじゃないです」


「俺もな」


しばらくして、キッチンフロアにふわりと甘い香りが広がった。

ポヨが小皿にひとさじジャムをすくって味見し――


「うまぁああああい!!!」


「叫ぶな」


ティアも焼いたパンに塗って口に運び、


「……っ、幸せです」


俺もひとくち。

異世界産の果実とは思えない、ほのかな酸味と深い甘み。

ただただ優しくて、心がほぐれる味だった。


ジャムは瓶詰めして、キッチンフロアの壁棚にずらりと並べた。

ポヨが誇らしげにそれを眺める。


「これはもう、“ジャム工房”ですよね!」


「うん。じゃあ、このフロアに看板つけようか」


《甘味保存庫フロア - JAM LABO》


ティアが笑った。


「こんな場所で、こんな丁寧に食を作るなんて……やっぱりこのダンジョン、私にとっては特別です」


俺は、なんだか照れてしまって、言葉に詰まる。


この場所が誰かの居場所になるのなら――

今日の果実の甘みは、そのままこのダンジョンの“意味”になるのかもしれない。


「明日はスコーンを焼こう。ジャムと合うしな」


「やったー!!」


こうしてまた一つ、この最果ての地に、あたたかな記憶が加わった。


◇あとがき

甘い香りと、のんびりした手作業。

スローライフの魅力って、こういう“ちょっとした暮らしの営み”にあると思います。

今回は「食の楽しみ」がテーマでした。


このまま“暮らしを丁寧に広げる”ことで、ゆるゆると長く続けていきます。


◇応援のお願い

最果てのダンジョンを応援してくれる読者さんの存在が、物語の力になります。

いいね・ブックマーク・フォローで、ジャムの甘さより甘い応援をよろしくお願いします!

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