第42話:欠片を辿る廊下と、ポヨが見つけたひび割れ
モグが持ち帰った小さな石の欠片を見てから、ティアは廊下を歩く時にそっと床や壁を探すようになった。
ポヨもそれに倣って、ぺたぺたと廊下を歩きながら小さなひび割れを見つけるたびに、「ここ、欠片の仲間かも」と覗き込んだ。
「ほんとうにどこまで繋がってるんでしょうね」
ティアが優しく笑うと、ポヨは少し誇らしそうに胸を張った。
「見つけたらもっとすごい話になる気がします!」
廊下にはまだ知らないひび割れや、小さな物語がそっと息を潜めているようだった。
モグは静かにそれらを眺めながら、また別の場所へ歩いていった。
廊下の角を曲がった先に、いつもより濃い影があった。
そこにはほんの小さな、でも確かに同じ模様の走るひび割れが続いていた。
ポヨがくんくんと匂いを嗅いだ。
「石なのに、なんか匂う気がする……これ、モグさんの石と同じ仲間だと思います」
ティアはそっと指先で撫でた。
「いつかこれがどこへ続いているのか、全部辿ってみたいですね」
その夜、カフェに戻るとティアはレシピ帳とは別に新しいノートを取り出した。
「欠片の記録帳」と表紙に小さく書き込み、そこに今日見つけたひび割れの場所を描いた。
ポヨはその横にまた自分の絵を描き足す。
「これ、ぼくが見つけたとこ!」
モグはノートを少し覗き込み、それから静かに棚の石板を整理し始めた。
いつもの仕草だけれど、どこか嬉しそうに見えた。
【第四十二日目:欠片を辿る小さな歩みと、見つけたひび割れ】
・モグが持ち帰った石の欠片をきっかけに、ティアとポヨが廊下を探索
・廊下には同じ模様のひび割れが静かに続いていた
・ティアは新しいノートにその場所を記録し始め、ポヨも絵を描き足した
今日もまた、このダンジョンに少しだけ足跡が増えた。
いつか全部の欠片を繋げられる日が来るだろうか。
それまで、この静かな廊下をゆっくり歩いていこう。
◇あとがき
今回はモグの持ち帰った欠片を手がかりに、ダンジョンの廊下に眠る小さな秘密を辿っていく話でした。
ポヨの絵とティアのノートは、きっとこれからも増えていくのだと思います。
また続きを紡げるのを楽しみにしています。




