第4話:空飛ぶベッドと、浮遊フロア建設計画
「このダンジョン、空に浮かぶお部屋って作れたりしますか?」
朝食後、ハーブティーを飲みながらティアが突然そう口にした。
「空に浮かぶって……空間魔法的な?」
「そうです。宙にぷかぷか浮いた寝室。雲の上みたいなベッドルーム。憧れだったんです」
スライムのポヨがぴょん、と跳ねた。
「実現可能です、マスター! 《浮遊基盤》という特殊素材を核に使えば、空中に固定できるフロア構築ができます!」
「まじかよ、何それ便利」
「便利です! ただし、浮遊基盤の生成には“ゆらぎの魔素”が大量に必要で……」
「どうすれば集まる?」
「マスターのくつろぎ度が最大になった時に発生します!」
「……え?」
「つまり、思いっきり“リラックス”するしかないのです!」
その日、俺は全力でくつろいだ。
温泉につかり、読書をし、ハンモックで昼寝し、ティアにマッサージまでしてもらい――
最終的にはスライムで足湯をされるという、訳の分からない状況にまで突入した。
「マスター……リラックスというより、怠けてません?」
「いや、これは真剣な仕事だ」
「たしかに、浮遊フロアのためですもんね……」
その甲斐あって、ダンジョン内に《ゆらぎの魔素》が漂い始める。
ポヨが目を輝かせながら跳ねる。
「集まりましたっ! 生成しますっ! 空飛ぶベッドルーム!」
浮遊フロアは、中央に厚いベッドを据え、その下に浮遊基盤が据えられていた。
空間の中に階段を描き、足を踏み出せば――ふわり。
無音で、静かに、床が宙に浮いた。
「すごい……!」
ティアは感嘆の声をあげ、雲のように柔らかいベッドにダイブした。
「わぁ……これは、やばいです……! なにもしたくなくなります……!」
「それが正解だ」
「最高のダメ空間ですわ……!」
俺たちはそのまま、ふかふかの浮遊ベッドの上で昼寝をした。
スライムが横に転がって、ぷすーと寝息を立てる音が聞こえる。
ティアの髪に、風がそっと揺れる。
「なあ、ポヨ」
「なんですかぁ」
「このダンジョンって、ほんとに自由だな」
「そうですよー。誰もこないですし、管理者のやりたい放題です」
「だったら、もっといろんな“癒し”を試していこう。あったかい音楽とか、星が見える部屋とか」
「いいですねっ! 星空フロアも設計できます!」
ティアが眠たげな声で呟く。
「次は……お菓子だけで暮らせるお部屋とか……」
「それ、すでに俺のキッチンに近いな……」
浮遊ベッドの上、誰にも急かされず、誰にも見つからず。
この空間が、少しずつ、心の避難所になっていく。
俺はそう確信していた。
◇あとがき
今回は「浮遊フロア」という異世界ならではの癒しギミックを導入しました。
ベッドに寝転んで、空に浮いてる気分って、まさにスローライフの極みですよね。
これからもダンジョン改築×癒しネタを増やしながら、のんびり続けていきます。
ティアとの関係も、少しずつ距離を縮めながら丁寧に描いていく予定です。
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