第39話『小さな机に置かれた古い鍵と、まだ見ぬ扉』
翌日、ティアは昨日の夜に見つけた小さな部屋へ再び足を運んだ。
モグはすでにそこにいて、壊れかけた机の引き出しをそっと開いていた。
中から出てきたのは小さな鉄の鍵。
「……これ、何の鍵なんでしょう」
ティアがそう呟くと、ポヨが不思議そうに首を傾げた。
「鍵ってことは、まだ開けてない扉がどこかにあるのかな」
モグは鍵を手に取り、じっと眺めていた。
ダンジョンにはまだ知らない場所がある。これがその扉を開く鍵なのかもしれない。
ティアは小さく微笑んだ。
「なら、探しましょう。いつかきっと、ここに来た誰かが開けられなかった扉を」
その日は鍵を持ったまま、三人でダンジョンを散歩した。
見慣れた廊下も、鍵があるだけで少し違って見える。
ティアはふと立ち止まって壁を撫でた。
「この奥にも、まだ誰も知らない部屋があるのかもしれませんね」
モグはそっと頷いた。
小道を曲がると、薄暗い空間に出た。
そこには古い木の扉がぽつんと立っていた。
「こんなところに扉……前はなかった気がします」
ティアが鍵を見つめ、ゆっくりと差し込む。
すると、錆びた音を立てて鍵はゆっくり回った。
ポヨが息を呑んだ。
扉の向こうは小さな部屋だった。
棚も机もない。ただ古びたランプがぽつんと置かれ、その下に小さな手帳があった。
ティアがそっと手帳を開くと、最初のページにはこう書かれていた。
『またいつか、誰かがここを見つけたら――この続きをお願い』
「……誰かの未完の物語ですね」
ティアは優しく手帳を撫でた。
「じゃあ、ここにも少しだけ私たちの物語を置いていきましょう」
【第三十九日目:小さな鍵が開いた扉と、まだ続く物語】
・モグが見つけた小さな鍵
・鍵が開いたのは、静かな部屋と一冊の手帳
・ティアとポヨとモグは、その続きを少しだけ書き足して部屋を出た
今日もまた、ダンジョンのどこかに小さな秘密が増えた。
それはいつかまた誰かが見つけるまで、そっとそこで眠り続ける。
◇あとがき
今回は“鍵”と“まだ見ぬ扉”をテーマに描きました。
このダンジョンには、きっと誰にも知られずに眠る部屋がまだまだあるのだと思います。
そしてその一つひとつが、物語を静かに待っているのです。




