05 冒険者(?)がやって来た
僕のダンジョンに冒険者らしき一団がやって来た。
戦士っぽい少年が二人、魔法使いっぽい娘が二人の四人組だ。
しかし、なんだか若すぎる。
『中学生がコスプレしているのか? この世界では、あれくらいの歳で冒険者になれるのかねぇ』
装備もなんだかショボい。
サイズの合ってない傷だらけの革鎧にボロい剣、布の服にだぶだぶのローブと粗末な木の杖。靴も適当なサンダルで、ダンジョンを本気で探索する気があるのかと問いただしたくなった。
『まぁ、ニートだった僕が偉そうなことは言えないけど。それにしても、よっぽど腕に自信があるのか、それとも何も考えていないのか……』
ダンジョン前で打ち合わせもせず、いきなり突っ込むらしい。
「いくぞ!」「「「おぉーっ!」」
ドカドカと階段を降りて、ダンジョンに踏み込んできた。罠を警戒するそぶりすらない。完全な素人集団じゃなかろうか。
『無謀な連中だなぁ……。パーティ01、あいつらを追い払ってくれ。なるべく分かりやすく遭遇するんだよ』
『かしこまりました』
近くに控えていたパーティ01は、僕の指示通りあえて足音を響かせながら、通路の角から四人の前に姿を現した。
ちなみに、パーティ01はスケルトン4体、リッチ1体のパーティだ。パーティは01から30まで全部で30組あって、下の階になるとスケルトンがグールに変わったりする。リッチは頭が良く結構強いので、パーティのリーダーにつけている。これらのパーティがダンジョン内をグルグルと徘徊しているのだった。
侵入してきた連中は、突然目の前に現れたモンスターの集団に大いに慌てた。
「うわっ!」「スケルトンだぁ!」
「きゃぁ!」「リ、リッチもいる!」
戦士風の少年の一人が剣を抜こうとして、慌てたせいか手を滑らせ、剣を床に取り落とす。硬い金属音が辺りに響き、そのせいでより一層混乱がひどくなる。
「馬鹿、何やってんだよ!」「お前こそ、さっさと剣を抜けよぉ」
「早く追い払って!」「こっ、怖い……」
少年の一人がムッとしながらも剣を構える。剣を落とした少年も剣を拾い上げ、なんとか構える。
「魔法はどうなってんだ?」「おい、前を見とけ!」
「無理よ!」「集中できない!」
スケルトンたちがゆっくりと前衛の少年たちに向き合った。
少年たちはやけくそでスケルトンに突っ込んできた。
「うぉぉぉ!」「しゃぁぁぁ!」
カァン。キィン。
少年たちの振るった剣は、スケルトンに軽々といなされ、少年のうちの一人が体勢を崩してしまった。
『足を蹴ってやれ』
スケルトンの一体が体勢を崩した少年の膝のあたりを蹴とばすと、前のめりにパタッと倒れ、剣を手放してしまった。もう一人の少年はなんとか別のスケルトンと剣を交えているが、もう息が上がっている。
魔法使い風の娘二人は床にペタッと座り込み、戦意を喪失していた。
『……これは、お話にならんな』
リッチが連中に近づき、彼らに言い放った。
「お前たちの来るところではない。立ち去れ!!」
ついでに軽くエナジードレイン攻撃をしかけて、全員から体力を少しずつ奪う。
「「なっ!?」」「「ひゃぁ!!」」
辛うじて立っている少年も、戦うことを止めて膝をガクガクさせている。残り三人は床を這うように、入口の階段の方へ向かって後ずさった。
スケルトンたちが剣を構えたまま、ジリジリと四人との距離を詰めた。
「引くぞ!」
「「「うわぁぁぁあぁ」」」
最期まで立っていた少年の合図で、四人はどたどたと騒がしく出て行った。
そして彼らはダンジョンの外で、街から追いかけてきたらしい大人たちに捕まった。
その場でこっぴどく叱られ、大きな拳骨を食らっている。それから街の方へしょっ引かれて行った。
『なんだ、子供の遊びかよ……』
僕は大いに失望するのだった。
それからさらに数日後。今度こそ冒険者らしい一団がやって来た。