04 ダンジョン完成
ダンジョンの難易度設定をどうするか少し悩んだけど、いままで僕が遊んできた数々のRPGを手本にすることにした。低い層階は簡単にして、深層に近づくにしたがって徐々に難しくなるようにするわけだ。
ただし、低層階で発見できるアイテムはあまり価値のないものなので、冒険者は良いアイテムを求めて次第しだいに深層に降りて行き、最終的に罠にかかると。
『と、言葉にすれば簡単だけど、実際にそれを実現するのは難しいぞ』
僕がここに来たとき、この世界の色々な情報も頭に詰め込まれた。
ダンジョンのことだったり、召喚できるモンスターのことだったり、この世界に生きる人間や彼らの暮らしぶり、社会システムのこととかいろいろ。
『ようはネット小説でお馴染みの、剣と魔法のファンタジー世界なんだけど……』
ファンタジー度合いがどれくらいなのかが、いまいち良くわからなかった。
魔法一発で街が吹っ飛んだり、生身の戦士が岩山を真っ二つにしたり、そんな超人がゴロゴロいる世界だったら何を対策しても無駄なわけで。
『まぁそこは常識の範囲内だよね。さすがに世界のパワーバランスが滅茶苦茶になるような存在はそうそういないだろ。でも、魔法があってモンスターがいるってことは、僕の世界の人間よりは強いはず』
ということで、この世界の冒険者の戦闘力を、僕がいた世界の人間の3倍ぐらいだと仮定した。この仮定に沿って罠を設置し、モンスターを配置してく。
といってもモンスターを好き放題召喚すると、コストがかかりすぎてしまう。召喚するときだけじゃなく、維持管理するのにも魔力は必要になるからね。
スケルトンなど一部のアンデッド系モンスターは空気中の魔力だけで動けるけど、強力なモンスターになってくるとそれでは足りなくなるのだ。足りない分は僕の魔力を供給するわけだ。
モンスター一体ずつは大したことなくても、それが50体になり100体になればバカに出来なくなる。なにしろ僕のダンジョンは100階層もあるんだから。
各階層にみっちりとモンスターを配置する、なんてことはできない。
『つまりランニングコストを気にしないといけないんだな。なんか、経営者っぽいこと考えてるなぁ』
あれこれ考えた結果、強力なモンスターを10階ごとに配置することにした。僕のいる最深階は、念のためにさらにもう5体追加。鉄壁の守りだろう。
さらにスケルトン等のアンデッド系モンスターを5体一組として徘徊させることにした。このアンデッドパーティは30組作って、ダンジョン各所に散らばらせてある。場合によっては遊撃隊として使えるだろう。
『あとは誰かやって来るのを待つだけだ。細かい調整はそれからにしよう。正直、加減が良く分からん』
それから1週間がすぎ、1か月がすぎたが、誰もやって来なかった。
『さすがに暇だ……。まだ、誰にもここが発見されてないってことかな。そうだ!』
僕は召喚していたリッチにお願いして。丘の上から空に向けて、大魔法を放ってもらうことにした。
ちなみに、リッチは悪の魔法使いのなれの果てだ。各種魔法攻撃に特化したアンデッドモンスターで、僕のダンジョンでは徘徊組のリーダーにつけている。
『ドーンと派手な奴を、間隔を開けて3発ほどお願いするよ』
『かしこまりました』
しばらくすると丘の頂上に、太い火柱が天高く上がった。
ゴゥっと地鳴りのような音が響き、周囲が明るく照らされている。
『さすがにここまですれば、誰か気が付くんじゃないか?』
それから三日後に最初の訪問者がやって来た。