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03 地上につながった



 あれからたぶん一カ月になると思う。

 なんで日数が分かるのかというと、ずっと心の中で数を数えていたからだよ。生身の身体では絶対に出来ないことだけど、今の僕なら問題なくできた。数を数えながら作業するのも余裕だった。


 ともかく、この世界に来てからだいたい一カ月が経過したころ、僕のダンジョンはあと少しで百階層になるところだった。一番面積の大きなフロアは僕のいる階で10キロ四方くらい、一番小さいフロアでも数キロ四方くらいの大きさがある。

 もしRPGなんかやっててこんなダンジョンが出てきたら、絶対に途中で投げ出すだろう。

 そして、「広大にも程があるだろう!」と文句を言って、クソゲーのレッテルを貼ったに違いない。


 そんなけた外れに大きなダンジョンを、僕は嬉々として、さらに拡張し続けていた。

 なにしろここは僕の城なんだから。ずっと実家の子供部屋暮らしだったから、持ち家にあこがれていたんだよね。


『ここに大広間を作って、長い廊下をつなげてっと……。ここには落とし穴を作って、落ちた先は、フフフ……』


 独り言を言いながら、僕は飽きることなくダンジョン作りに勤しんでいた。



 頼りになる仲間もできた。

 ダンジョンが大きくなるとともに、僕の持つ魔力量も当初に比べて飛躍的に増えていた。それでモンスターを召喚できる状態になったんだ。といっても、強力なモンスターはコストがかかりすぎるので、僕が召喚したのはゴーレムが10体に、スケルトンが10体だけなんだけど。


 ゴーレムたちにはダンジョン内のこまごまとした修繕や掃除を、スケルトンたちにはダンジョン内に湧く虫やネズミの駆除をお願いしている。

 痒い所に手が届くというのか、身動きのできない僕にとっては、手足のような、いや、孫の手のような存在なんだ。


 運用コストがほとんどかからないのもありがたい。

 彼らの動力源は空気中の魔力で、魔力はこのダンジョン内にはいくらでもあるんだよ。僕のダンジョンがある限り、彼らは永遠に動くことが出来る。


『これって、永久機関じゃね? いや違うか……。でも、凄いことには変わりないし。もうこいつらだけで回そうかな』


 ケチな僕は……そうじゃない、コスト意識の高い僕は、彼らに頬ずりしたいほど、彼らのことを気に入ったのだった。



『そろそろ出口が見えてもいい頃だぞ』


 そうこうしているうちにダンジョンの深さがちょうど百階層になった。

 ということは一番上のフロアは少なく見積もっても、僕のいる最下層から300mは上にあるはずだ。僕の超感覚も地上が近いと言っている。


『この階段をもうちょっと伸ばせば……』


 突然ガラガラと土が崩れ、ぽっかりと穴が開いた。そして、明るい日差しと新鮮な空気がダンジョンに入ってきた。


『完成だ!』


 入口が出来たと同時に、僕の最大魔力量がグッと増えた。


『おぉ! 完成ボーナスのようなものか? まぁともかく、使える魔力は多いに越したことないしな』



 すぐさまスケルトンたちを使って、ダンジョンの周りを探索させた。


 スケルトンたちの目を借りて、周囲を観察する。ダンジョンの入口は小高い丘のふもとにあるようだ。そしてその小高い丘の周りは、ずっとはるか遠くまで草原が広がっていた。

 丘の頂上に登り、360度ぐるっと見わたしても、街とか村とか集落とか、何も発見できなかった。どこまでもどこまでも、目の届く範囲には草原がずっと続いていた。


『はたして、こんな所に人が来るだろうか……』


 ちょっと残念な気持ちになったが、街中に入口が出来て大騒ぎになるよりはずっとマシだったろう。

 僕はスケルトンたちをダンジョンに戻して、冒険者たちを迎え撃つ算段を考えることにした。




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