01 僕は死んだ
僕の名前は霧島武蔵。18歳。職業は自室警備員。つまり引きこもりだよ。
中三の終わりごろに、何だか外の世界がすごく恐ろしくなって、家から出られなくなってしまったんだ。
何がきっかけでそうなったのか、ハッキリしたことは思い出せない。
通り魔のニュースを見たからだろうか? それとも交通事故? 誘拐? 災害……、世界は恐ろしいことだらけだ。あぁ怖い怖い。なぜみんな平気な顔して生きていけるのだろう。
いや、僕も以前は皆と同じだったんだ。学校の成績もそんなに悪くはなかったし、運動もそれなりに出来た。いじめられてもいなかったし。
……でも、分からないぞ。裏では僕のことを悪く言ってたのかもしれない。知らないうちに嫌われていたかもしれない。あぁ嫌だなぁ、怖いなぁ。
そんな僕だけど、両親とは何だかんだで上手くいっている。
最初のころは僕の頭が変になったのかと心配して、精神科の医者に診せたりしたけど、結局何も異常は見つからなかった。だって、元からおかしくなんてないからさ。僕はこの世の恐ろしさに気づいただけなんだ。
だからお父様お母様、もうしばらくそのスネをかじらせて下さい。お願いいたします。
今日もいつものように、ネットで面白そうな小説を漁っている。
以前はお小遣いでラノベとか買って読んでたんだけど、さすがに18歳になってお小遣いはないだろうということで、極力お金を使わないで過ごすことにしたんだ。まぁ食費とか、ネット回線とか電気代とかは目をつぶってもらっている。
最近ちょっと良いことがあったんだよ。Uootubeの僕のチャンネルで、延々とネット小説の感想を配信してたんだ。そしたら僕のことを面白いと思ってくれる人が増えたみたいで、登録者がついに千人を越えたんだよね。収益化の承認も通ったから、これからはほんの少しだろうけど、お金が入ってくるはずだ。電気代の足しくらいにはなるかもしれない。
あっ、もう3時か。そろそろ寝ないとね。
早寝早起きしないといけないから。最近運動不足のせいなのか、ちょっと胸がバクバクするんだよねぇ。それって不整脈じゃないのってお母さんが言うんだけど、いやいや僕ってまだ18歳だよ? そんなわけないじゃん。
あぁ……今日も生産的なことはできませんでした。生まれてすみません。
ダメだ、夜になると考えが暗くなってしまう。もう寝よう。
あっ! あれっ!? 胸が! くっ、苦しい。
「うぐぐ……。だ、だれか……」
僕の意識はここで途切れた。