テスト前
テスト三日前。一ヶ月の地獄生活を過ごして、私たちは30分間板を浮かし続けることに成功した。これはシオルが「こんなに授業でやっているんだからテストに出るはずだ」と山を張ってくれたのでクラス全員の目標としたのだった。
「さぁ、みんな、テストの三日前になったのでテストの内容を発表しようと思います。今回の大型テストでは四つのテストをしてもらい、その評価が成績に反映される。一つ目は魔力量の測定。二つ目は基礎魔術の筆記試験。三つ目はクラスが一つのチームとなって戦う対人戦。四つ目は精神力の測定だ。それじゃあ授業を…….」
始めようと、ブラベ先生が言いかけたが、それはセリーが勢いよく席を立つことにより、発言が遮られた。
「テストについてはそれだけですか?」
「はい、これだけです。」
セリーはありえないという表情を浮かべ、怒涛の勢いでブラべ先生に質問した。
「詳細な試験内容の提示はしてもらえないのですか?!」
「………残念ながら詳細なテスト内容は教えることができません。」
セリーが「なんで」と聞き返そうとした時、クワイルが言った。
「落ち着け、セリー・アクア。きっとこれも試験のうちなんだろ。大方、急に言われた無理難題のテストを出して、俺らの対応力を見ようって魂胆なんだろ。」
「確かに、魔法士には魔力と精神力が必要とよく言われるが、魔物との戦闘で対応力が必要ないわけないしね。」
クワイルの意見にシオルが賛同したことにより、セリーも納得し、席に着いたようだが、ブラべ先生は顔色一つ変えず、「お話が終わったようなので今から授業を始めましょう。」と言い今日の授業が始まった。
昼休み、私たちは作戦会議をしていた。時は遡ること三時間前。一限目の授業が終わった後、シオルがクラス全員に呼びかけた。
「みんな急で悪いんだけど今日からテストまでの三日間昼休みと放課後に作戦会議をしない?先生は三つ目のテストにクラスが一つのチームとなる対人戦と言っていた。だからそれについての作戦を少しでも多く考えたいと思ったんだ。どうかなみんな参加してくれる?」
そんな提案を受けて、断る理由は普通に考えたらないのでリリィ、セリー、プレッテ、ダズ、ゲオルグ、クレラゼは迷うことなくその意見に賛同した。
「……リトとクワイルはどうする?僕としては参加してくれると嬉しいんだけど」
「俺は明日の放課後以外ならいつでも参加できるが、明日の放課後は無理だ。すまない。」
「いや、予定があるなら仕方ない。それに参加してもらえるだけ嬉しいよ。」
「予定ってなぁに〜」
「そうよ気になるから教えなさい」
「……な、なんでもいいだろ。お前らに関係ない。」
クレラゼとリリィが冷やかし混じりに聞いたら、クワイルが珍しく戸惑った。それを見て二人は冷やかしを続けた。
「………で、リトは?」
少し考えた後に恐る恐る言った。
「私、昼休みなら行けるよ。」
「……放課後は無理ってこと?」
「無理っていうか、私テスト勉強したいの!クラスのみんなより私は遅れてて、三十分板浮かすことできるようになったのも一番最後だし、勉強もそんなできなくて筆記も自信ないし……。でも、みんなで作戦立てるのは賛成だから昼だけ参加っていう形にしてもいいかな。」
そうなのだ。実は私このクラスで一番出来の悪い生徒である。板を三十分間浮かすのも他の人は一週間でできるようになったとのに対して、私は昨日やっとできるようになった。それだけでなく、座学の授業も全然だめなのだ。知識もそうだが、根本的に物事に対する考え方が一般的なものとずれているらしく、読解や歴史は特に苦手だ。
「もちろんそういう理由なら問題ないよ。でもそんなに卑下する必要はないと思うよ。周りとの違いを明確にすることはもちろん大切だけど、君はテスト三日前までに板を三十分間浮かせ続けるっていう目標を達成した。その事実が大事なんだ。だからもっと自信を持ってあげて欲しいな。………それじゃあみんな昼休み教室に集まろう」