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星に願いを  作者: 青鯖
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クレラゼ過去編③

それから一夜明ける前に事件は起きた。魔獣が現れた。一匹だけじゃない十匹……いや百匹。島を埋め尽くしてしまいそうなくらいの魔獣が現れた。島は踊り、叫ぶ。

(シロっ、シロ)

叫びたかったが声が出ない。それに動けない。金縛りにあったのか手も足も髪の毛一本さえも感じない。

(なんでっ、なんで動かないんだ!)

理由は案外すぐに分かった。両親だった。二人の声が壁越しに聞こえてくる。


"生きてね愛してる"


最近態度を好転させ、両親とも前よりかは会話ができた。だがそれだけだ。それだけでなんで勝手に一番大事な存在になったんだ。どうにもできなかでも叫び暴れ続けた。魔法が解けるまで。


魔法が解けて、島を走り回った。黒い沼があちこちにあったが、人の死体は一つもない。結局なにも分からないまま保護され、島をさることになった。その後孤児院に入れられたが、すぐ出て行った。それからは適当に街の角に住みついた。


「お母さん、明日このお洋服にする!」

はねる声がした。その子は青に白いレースのついた綺麗な服をもっている。

「そうね、アクアだといいわね」

(そうかもう儀式の時期か、俺はもう……)


儀式とは十歳になる年に、自分の魔法適性を調べることだ。同時に名前を授かる。自分の手を見つめて力を込めるが何も起きない。

この世界では魔法は人権に匹敵する存在だ。魔法が使えなければ職につけない。だけではない好奇の目で見られてから理不尽な暴力、血縁者からも見放され、生涯光の元へは戻れない。


ゴーン、ゴーン

時計の鐘が鳴る。

(飯の時間か)

今日も市場で息を潜める。ローブをした四人組を標的に定める。財布は女の腰にぶら下がっている。人気のない路地に近づいた。

(今だ)

そう思い、素早く器用に財布を捕らえた。はずだったが、それと同時に自分も捕えられていた。

「これは、小さい盗人か」

俺の体を闇が飲み込もうとして、悟った。終わりだと。しかし、闇は動きを止める

(なんだ)

「おい、宿に戻るぞ。フギー、そいつを持て。」

男は自分の荷物を渡して俺を抱える。

「飯も金もやる。見返りは求めん。だから大人しくしていろ。」

がっしりと抱えられ、逃げようにも逃げられない体勢になった。男は何も口にしない。


もうすぐ路地を抜ける。あの事件から一年。もう二度と感じることのできない黄金の光。僕を運命だと信じてくれた光。それではないけれど、どこか安心する。そんな光と共に僕は路地を抜けた。


「お前儀式に失敗して魔法が使えないんだろう」

飯に食らいついていた時に聞かれた。

「…………」

「その沈黙は肯定と受け取ろう」

儀式、十歳になる年に受ける。魔法適性検査みたいなやつ。その子の魔法属性は何なのか、そして魔法は使えるのか。

「そうか……なぁボス。こいつうちで面倒みないか」

赤髪の男がそう言った。この社会で、差別を受ける子供に手を出すなんて物好きなやつだ。

「そうだね。一時的に保護してまた路地に返せばいいよ。」

「おい、フギー!俺はそういう意味で言ったんじゃねぇぞ!」

「無駄なリスクを減らせと言っているんだ。なにより、計画をこれ以上先送りにはできないだろ」

言い合いが始まる。俺は目の前にある宝を口へ運びながら逃げる隙を探す。

(こんなところに居たってシロは救えない。金をもらって島に戻らないと)

そう思い金目のものに触れようとするとぬるっと阻止される。

「まぁこれも運命だと思って君も諦めなよ」

「運命……こんなものが運命だと言うのか?!」僕にとって運命という言葉は特別だ。どこに行っても絶対に途切れることない光。そんな気高く、美しいものを軽々しく言われて怒鳴る。それに驚いたのか、呆れたのか男は黙る。その反対に今まで黙っていた女が口を開く。

「運命……まるでそれがなにか分かっている様な口ぶりね……まぁ確かにロスト島の生存者というだけで運命とは言えるのかもね、クレラゼくん」

「なっ、なんで俺の名前」

「大人はなんでも知っているのよ。ところで君は本当に運命を知っているのかしら」

(もちろん、知っている。だけどこれは力だ見返りもなく教えても、利益が薄い。)

だけど、言わなかったらどうなるのか、本能でわかってしまう。結局正直に話すしかなかった。

「俺の運命は彼女で彼女の運命も俺だ。そんだけしか分からない」

下を向く。恐怖で顔が上がらない。

「決めたわ。この子をうちで保護しましょう」

想像してなかった言葉が耳に留まる。

「なっ、ミラさん。理由はなんだ。あなたという人が意味もなく子供を保護するなんて言わないだろう」

「もちろんよ。まず、この子は運命を知っている、しかも相互での運命。これだけで彼は保護対象よ。それだけじゃないわ。彼にはとてつもない程の魔法の才能があると断言できるわ」

ガッシャーン。皿の割れる音が響く。

「あり得ない!俺に才能があるだって?!俺は魔力なしだ。そう言われた!それで俺は…だからあり得ないんだ!」

怒りたいわけではない。物に当たりたいわけでもない。だけどそうしないと収まらない。

「君は魔力を隠すのが他の人よりも上手なだけ。誰も気づかないくらい。それほど魔力のコントロールが優れているということよ。」


「だけど、だからって俺はもう十一だ。魔力の解放は十歳にしかできないっ!」

叫び喚く俺に女は優しく抱きつく。

「もう解放されているのよ。ほら私の魔力を感じ取って。怖がらないで想像してどうしたいのか」

知らない感覚を他人に任せて想像する。どうしたいのか。

「俺は怒りを鎮めたい」

すると、割れた皿の破片が集まり、一枚の皿に戻る。

「これは…」

「……俺と同じ」


「使えた。これが魔法。」

初めての魔法に胸が躍る。

「クレラゼ・クリエイト。私たちについてこないか?そしたらお前の願いも叶えてやる。」

差し伸べられた手を迷わず掴んだ。深い海への切符を。二度と地上には戻れない。だけど光は僕に届くから。それだけで生きる理由になってしまうのだから。

「俺は、俺の運命を救いたい。そのためならなんだってやる」

俺は世界を見た。汚い世界を。その中でシロが俺に光をくれた。彼女が俺を求めた。俺はそれに応えなければならない。それが俺の運命だから。

君のハッピーエンドに絶対に辿り着かせてあげるから。

「会いたいなぁ。」



「新しい作戦はいいと思うけど……少し時間をかけすぎではないかしら」

「四年なんてすぐだろ。なにより、それが上手くいけば願いが叶う」

「歓談中に失礼するよ」

フギーが紙をひらひらさせながら入ってきた。

「学校復興するって連絡があった。」

「予定通り再開するのね。………新しい授業体制が気になるわ」

「まぁ、大丈夫なんじゃねぇか。ここに連絡が来たってことは、怪しまれてないってことだろ。」

「本当にそう思ってるならお前は愚かだ。クレラゼのこと気にかけてあげなよ。彼このままだと、どんどん強くなるよ。君よりもずっとね、マーキュリー。」

「そんなの知っているっつーの」

男が去った後にポツリと呟いた。

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