クレラゼ過去②
大きく手を振り、孤児たちのところに駆ける
「みんなー!」
彼女に気づいた子が次々に笑顔になる。
「シロ姉!さっきかっこよかったよ!」
「シロお姉ちゃん!これ見て教会の人がパンくれたの!一日三回一人一個食べられるんだって!」
「おいシロ、剣!剣で勝負しようぜ!」
彼女の名前はシロと言うらしい。シロは子供たちに人気な様だ。
「お姉ちゃん、その人だぁれ?」
「この人は……」
困った顔でこちらを見る。
(そういえば名乗ってなかったっけ)
「クレラゼ」
「クレラゼお兄ちゃんだよ!」
シロはそう言った。だけど、僕は優しく接することに慣れていなくて、「よろしく」って言ったら、子供はみんな隠れてしまった。くすくすと笑うシロをじっと見る。
「こっち来て!一緒に話しましょ!」
そうして僕は孤児院の庭へ連れられた。
「髪!まずはその長い髪を切らないとダメだと思うわ」
茂みに座ったら急に言われる。
「あと視線を合わせて話すのも大事!」
「子供の接し方?」
「子供と仲良くしたいんでしょ?だから作戦会議!」
別に子供と仲良くしたいわけではなかったが、彼女のことをもっと知りたくて耳を傾けた。
(あ、両親だ)
一時間もしたら両親は迎えに来た。
「あ、お母さんたち。じゃあこれでお別れだね」
じゃあね。と手を振る彼女を見る。
「明日もっ、明日も来るから」
この日、生まれて初めて光を知った。
次の日また孤児院へ行った。すると当然の様に彼女はいた。
「……どうも。」
「わぁ、クレラゼ!前髪切ったんだね!」
そう。髪を切った。流石に伸ばし切った髪を急に切ると両親も驚くだろうから。まず前髪を切った。
「なんだ?」
白の足元にいる子供がジッとこっちを見てくる。その子はシロにそっと耳打ちする。
(一体何を話してるんだ)
耳打ちを終え、子供は逃げていく。
彼女の顔がすっと目に入る。彼女は何か話しているけれど、耳に入ってこない。きっと、光に慣れていなかったのだろう。僕はそのままぼーっと見る。
「ねぇ、聞いてる?」
「え、っと、ごめんもう一回いい?」
やっと言葉を捉えることができた。
「もう、しょうがないな。さっきの子がねクレラゼのことかっこいいって!昨日会った人とはまるで別人みたいだったって!」
(髪を切るだけでそんなに印象が変わるのか)
「そしたら、次は話し方だね。子供に好かれたいなら、もっとゆっくり優しく話さなきゃ」
それから話し方を変えて、人に対する態度も変えた。子供とも親とも仲良くしてあげた。そうすると、今までのことが嘘の様に会話ができた。
今日もシロと話す。あれから一月経つが、毎日必ずあるその時間はとても好きだった。それだけではなく、今日はとあることを聞こうと思っていた。
シロが来て今日の出来事を話す。いつもと変わらない話でもシロは笑う。風がそよぐ。鳥が空を飛ぶ。そして、朱に世界は染まる。その情景を一枚に切り取って記憶にしまう。それから聞いた。
「ねぇ、シロは聖女様のこと信じてる?」
急に変なことを聞いたからか、大きい目をぱちくりさせる。
「……聖女様は信じるよ。」
何か決心したかの様な強い瞳で僕を見つめる
「ねぇ、クレラゼ。あなたが私の運命だって信じていい?ううん、勝手に信じるね。」
(運命?)
あまり親しみのない単語に躓くが、そんな僕を置いて彼女は走る。
「私ね一年と一月前に聖女様からお告げを聞いたの。それによるとね、私はこれから牢獄へ行くんだ。一回足を踏み入れたら二度と出られない牢獄に。それで世界は救われるんだって。私すっごい嫌だった。だけどみんなのためなら仕方ない。ってそう思っちゃったんだ。そしたらね、聖女様から助言をもらったの」
「一年後孤児院で"運命"と出会うことができたら牢獄に入らなくても世界が救われるって。」
「ねぇ、クレラゼ。私はもう牢獄には行けないの」
その瞬間、僕は光に囚われた。




