クレラゼ 過去①
クレラゼは生まれてからずっと一人だった。家族は居るが会話ができなかった。そう、彼の家族は熱心な聖女信者だった。口を開けば聖女様、聖女様と。朝起きた時、食事の時、仕事の時、掃除の時、夜寝る時の子守唄でさえ、全てが聖女様だった。そんな家で育ったものだから、聖女も魔法も嫌いになるのは必然だった。
その日は親に連れられ教会に行った。お祈りをした後孤児への寄付をすると孤児院に立ち寄った。親が寄付を終え経営者に挨拶をして帰ろうとしていた時、その少女に出会った。
「この偽善者めっ!」
平凡な少女。自分はヒーローだと信じて疑わないよくいる子供。その子は大声でそう叫んだ
「そのお金はどうせ私たちに使わないくせに、そんなの施設を見たらわかるのに」
確かに孤児院の子達はある程度清潔だが、一般的に見たら汚い。それにふくよかな子は一人もいなさそうで、みんな暗い表情をしていた。
(子供の僕でも分かることだ。大人が気づかないはずない。どれだけ叫んだって、施設に住んでいる以上はあの経営者の下だ。)
そう思っていた。だけど違った。
「ただの自己満足でお金なんか払うな!この聖女狂い!」
「……くっ、ふ」
思いもよらぬ言葉に吹き出す笑いを堪える。だってあいつは不当に金を使う経営者ではなく、寄付金の使い道にも気付かない熱心な信者に対して怒鳴ったのだ。僕の嫌いな聖女狂いに。
「おいっまたお前か!うちの施設に入ってないくせに首突っ込んでんじゃねぇぞ!」
経営者がその子を捕まえようとした時、後ろから犬が飛び出してきた。犬は経営者に襲い掛かろうとしたが、子供の「待て」という一声で動きを止めた。
「そろそろね」
「おいっ、今日も騒ぎを起こして何をしている」
騒ぎになってから見回りをしていた聖騎士がやってきた。
「なっ、聖騎士様お騒がせして申し訳ありません。すぐに騒ぎは収めるので。」
「いや、その必要はない。」
ぺこぺこと頭を下げる経営者に対して聖騎士は剣を突き出した。
「横領罪と詐欺罪の容疑がかかっている。速やかに連行しろ。」
「は、なんだって?!何かの間違いだ!」
「それに伴い、孤児院の経営者としての資格を剥奪することになった。」
「嘘だ!そんなこと…違う私は!証拠!証拠がないだろう」
「連日騒ぎを起こされては、こちらも調べる他ないのでね。色々証拠は揃っている。そちらのご夫妻詳しい状況と教会から日々の寄付金に対してのお礼の品を用意しましたので、一緒に来てもらいますよ」
「えぇ、ええ!喜んで協力させていただきます!」
「教会に行けるなんてとても光栄だ!あぁ、クレラゼも一緒に行こう!」
(絶対に行きたくない)
そう思い、嘘をつく
「孤児院の子達と一緒にいてもいい?こんなことが起こってしまって…きっと不安だと思う」
とびっきり子供らしく上目遣いでねだる。
「あぁもちろんだ!終わったら迎えにくるからここで待っているんだよ」
父と母がいなくなってから僕は近くにいた少女の元へむかう。少女を前にして言葉が詰まる。
「君は孤児院の子供なの」
必死に絞り出した言葉だった。
「ううん、違うよ!私は……近所のお姉ちゃんだよ!」
すると、僕の手を引っ張って孤児たちのところに駆けていく。




