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星に願いを  作者: 青鯖
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秩序

場が静まる。それもそうだろう。この世界には様々な薬がある。植物、人、機械。それぞれ、形も構造も全く違うが、薬としてそれらを補助する人工的創造物が存在する。しかし、魔法にはなかった。魔法には薬がない。どれだけ努力したって魔力は高まらないし、魔法の威力は変わらない。世界が魔法社会に染まったいまでも、魔法とは人間の進化ではなく神から賜った得体の知れないもの、という意識が根付き、魔法が神格化され、特別視される。神からの奇跡の贈り物が、人間の都合の良いおもちゃになる。そうなるとなったなら世界が変わる。そんなものをフギーは見つけたと言うのだ。

「それが本当だという証明はできるのか?」 

ボスは低い声でそう聞いた。それに対して堂々と答える様に頷き、ボスの前まで行く。

「ボス……禿げが目立っています。」

「なにっ」

慌てて頭に手をやるボスの隙を狙い、土を口の中へと放り投げた

「むっ!」

「吐き出さないで」

口を開くよりも先に強くそう言われ、渋々口を閉じる。そのまま一分待つ。その間ボスの表情は変わらない。

「これ、いつまで待てばいいんだよ」

何も起こらない現状に呆れてマーキュリーが口を溢す。それに応えるようにフギーが言う。

「もういいかな。ボス口を開けて目の前の炎を消すんだ。」

テーブルの上に蝋燭が置かれた。普段なら、そう言われてから二つ返事での行動は絶対にしない。だが、今回はフギーの言うことに大人しく従う。テーブルの上に立っている火のついた蝋燭に目を向ける。


「影よ。光を飲み込め。我が命ずる」


そう唱えると蝋燭に灯っていた火は消えた。

その景色には異常性がなかった。と魔法に通ずる者でも感じるだろう。

「魔法の制度が無くなっている……?」

一番初めに言葉を発したのはミラだった。その次にボスも違和感の正体に気づく。

「………闇が炎を消したというのか」

「魔法というものは奇跡だ。だけど、自然の摂理には逆らえない。風で重力は操作できないし、火は水でしか消せない。」

それが世界の秩序。だからボスは火を"飲み込め"と唱えた。しかし、目の前の火は闇で消えた。存在が消滅した。

「これを応用すれば魔獣を手なづけられる。あの魔法陣で活性化させた魔獣をってことか。」

「まぁ、そんなところだね。因みに今ボスにあげたのは魔力制限を解除する様に構造を少しいじった。」

「それは、他の用途でも使えるってことでいいんだな。そしたら俺の炎も変えられる。」

「私の野望も…………」

ボスが顔を上げてメンバーの顔をそれぞれ見る。すると一人だけ目を見開き虚空を眺めていた。クレラゼだ。思えばこの話題になってから一言も発していなかった。

「ミラさん、風で重力を操作するのと飛行魔法は違うんだよね?」

「えぇ、風魔法は重力を無視して対象の物を浮かせる魔法。それに対して飛行魔法は対象の物にかかっている重力を半減させる魔法。人に対してなら飛行。物なら浮遊と名付けられているわ。」

「それに何か違いはある?」

「うーん、試したことないから分からないわ。でも、そうね重力による浮遊の方が安定しているのかしらね?物を空中で維持させる時、風魔法の方が荒れそう、だと思わない?それによる感じ方に違いはでるでしょうね」

クレラゼは、ある出来事を思い出していた。それは、初めて飛行魔法の授業を受けた時のこと。ある人は空を飛んで一分もせず、体調が悪くなった。なのに、あの夜その人は迷わず空を飛ぶ選択をして、一分以上の空に浮いていた。もちろんその後、体調を崩してはいない。それがずっと違和感だった。だが、克服したのかとかそんな風にしか思えなかった。それはそれ以外の選択があり得なかったから。だけど今新しい選択肢が出てきて頭の中でそれが蠢く。

(もし、魔力の制限を解除する術を持っていたなら?もし、彼女は浮遊魔法による飛行が苦手なだけで風魔法での飛行が得意なのだとしたら?)

クレラゼは頭を働かせる。原理は分からないし、それに何の違いがあるのか分からなかった。だけど、あり得ない確率の仮説を立証させるために。虚空を眺めていた視界にボスを映す。数分前のボスの会話が頭に過ぎる。


「ある少女と会った。」


その一言しか思い出せなかったがそれだけで充分だった。その少女が自分の思い浮かべている人物なら?ずっと探していた人物だとしたら?あり得ない、世界に少女は何人もいる。あり得ないだけど、そんな期待を胸にしてしまったら聞かずにはいられなかった。

「ボス、さっきある少女と会ったって言ってたよね。その子は白銀の髪に黄金色の瞳をしてなかった?」

そんな偶然あるわけないと思いながら確信を持った声音で聞く。ボスは少し悩んでから口を開く。そして閉じてからまた開く。

「彼女がそうなのか」

それを聞いてクレラゼはさらに問い詰める。

「なにか話したの」

「この島が故郷であると聞いた。」

やっぱり、シロは……リトなんだ。やっぱり……リトは僕の運命だったんだ。

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