報告①
「すまん、遅くなった。」
ガタッと椅子から立ち上がる音と同時に一斉に声を上げる
「ボス!無事だったんですね」
「ボスなんだから心配させないで欲しいんだけど」
「はぁ、無駄な心配かけないでください」
「無事の帰還嬉しく思うわ」
「あぁ、皆すまなかった。」
それだけ言うとクレラゼの前まで行く。
「お前の探している人の情報は得ることができなかった。」
「いいよ、別に。」
ボスがすまないと言う前にそう言う。
「なぁミラさん、ボスなんか嬉しそうじゃないです?」
隅の方でマーキュリーが小声でミラに耳打ちする
「そうね、いつもの三倍はジメっとしたオーラが薄くなっている気がするわね」
すると横からフギーが、ため息をつき、ギロリと睨んだ。
「ボス、何か良いことでもあったのですか?」
「おい、フギー!」
「こそこそと話す様な内容ではないんだからさ。答えたくないならボスもそう言う。」
「……娘と孫に会えたんだ。とても元気そうだった」
「疎遠になった家族に会う。目標の一つでしたもんね」
「……ボスは家に帰るんすか?そしたらチームは解散ですか?」
マーキュリーはあからさまに悲しそうな態度をとる
「いいや、そんなことはない。他にもやりたいことはあるし、私は君たちのことが好きだからな。置いていくわけない」
「契約関係なのに本当よく言う」
「居心地が悪いか、クレラゼ?」
「……」
話を切り替える。
「この島を探索していたら魔獣を活性化させる魔法陣が無数にはられていることが分かった。」
なんの予告もなく急に入ってきた情報に皆驚いた。数秒後情報を整理できたのかミラが口を開く。
「ボスを疑うわけではないけれど...私はそんなもの一つも見つけることができなかったわ。」
ミラはこのチームで最も魔法に精通している。それは、世界最高峰である魔法学校の防御システムを一晩掛からず解析してしまうほどに。だからこそ無数に貼られた魔法陣に気付けない自分を信じがたかったのだろう。
「私も明確に認識できたのは一つの陣だけだ。」
「さっきと言ってること真逆じゃん。ちゃんと説明しなよ。」
クレラゼがボスを睨む様に言う。それに対してボスは真摯に応える。
「私は明確に認識できたのは一つだ、そう言った。その一つを認識した時に、無数の魔法陣に私の感覚が私の視覚が反応した。証拠はない。だけど信じて欲しい。」
「そう、ボスの話は信じるわ。だけれど、そうだとして、新しい疑問が浮かぶわ。どうしてボスが見ることができて、私が見れなかったのかしら」
「それは……」
ミラはジーッとボスの目を見る。彼女は研究者の目をしていた。そんな眼をされたら嘘なんか付けるはずもない。
「……ある少女と会った。その少女の隣に居るとき、一瞬陣が見えたんだ。」
「その場所は分からないのかしら」
「すまないが、そこまで把握できんかった」
二人の話が一段落つくと、今度はフギーが話し始める、
「少女か、おかしい。今、この島には一人の人間と居候が二人、どれも男と記憶してたが、その少女とやらは本当に人間だったのかい」
「あぁとてもかわいい子だったよ。」
「ボスが言うなら間違い無いわね。それで、その少女は何者なの?魔法陣はどうするの?」
ミラは疑問に思っていたことを立て続けに言葉にする。
「俺らの計画の邪魔になるだけだから壊していいんじゃないか。女の方は利用できるのなら引き込みたいよな」
「あら、純粋なあなたがそんなことを言うなんて誰の影響なのかしらね?」
ミラはフギーを見るが、それを無視して話を続ける。
「はぁ、場所も数も不確定。魔法陣を壊すって言うなら、まず少女の方を狙うべきだ。でも、それを提案しなかったということは、有用な策があるのだろう?ぜひ聞かせてくれるかな。」
煽る様な視線から、今度はマーキュリーは目を逸らす。その様子に呆れた様なフギーは椅子から立ち上がり、離れたところに置いてあったカバンを持ってくる。
「………はぁ、本当にキミは。私は陣を壊さず置いといても良いと思うよ。」
フギーはゴソゴソとカバンの中を漁って、それを取り出し、皆に見せる。それは土だった。
「実は私にも収穫があってね。」
「お前、いつの間に?!ずっと一緒に行動していたじゃないか」
フギーは、当然の様にマーキュリーの言葉を無視して話を続ける。
「これはこの土地の深くに眠っていた、十年前の土だ。これには、強制的に魔力の活性、抑制させる力が宿っている。」




