謎の部屋
一人になった私は死体の数の確認から始めた。確認した死体には保存魔法をかけ、状態の悪化を防いだ。次に発火の原因を調べることにした。特に怪しいことはなく、ワイル先輩の言った通り、魔法での発火の可能性が高いと思われる。そう考えた矢先、少しの違和感を感じた。
(ん、なんだろう……なんか違う匂いがある。)
それは、初めて嗅ぐ匂いで、特別嫌な感じはしないがどこか気になる。そんな香り。その香りは一つの道のようにどこかに続いているようだった。私は悩んだ末にその匂いを辿ってみることにした。その先には一つの扉があった。どこか怪しく思いつつもドアノブをひねる。当然だがそれは普通に開いた。暗く、小さい部屋だった。部屋の隅にはソファにテーブルがあり、ソファの上には可愛いクマさんがいた。部屋の隅には全身鏡がおいてある。どこか不気味な雰囲気の部屋だった。部屋を見ていると、後ろから声がした。
「だれかいるの?」
それは私と同じくらいの年頃の少女だった。
「あなたは?」
そう聞かれて私は戸惑う。何を思ったのか私はこう名乗っていた。
「私はプレッテだよ……あなたは?」
私も彼女に聞き返した。
「私は……ブライト」
「ここはあなたの部屋?」
「ううん、ここは牢獄」
ブライトはどこか寂しそうにそう言った。何か聞こうかと思っていたが、それはやめることにした。
「ねぇ、プレッテ。あなたはどうしてここに居るの?」
扉を開けたらなんて信じてもらえるだろうか。だが、嘘をつく必要はないため私は正直に言った。
「歩いていたら、扉を見つけて開けたらここにいたの、変でしょ?」
「ううん」
会話もなく、沈黙が続くがどこか居心地の良い。そんな変な感覚になっていた。コツコツコツ……。扉の外から足音が聞こえて来たと思ったら、目の前に扉が現れていた。その扉は最初とは違い、勝手に開いて私は吸い込まれていった。
「プレッテっ、また…またっ会えるかな?!」
そう聞くブライトに向かって、私は小指を立てた。気がついた時、私はホールの真ん中で一人小指を立てていた。空をみる。時間は変わっていないようだった。私は事件の調査を再開した。
「ふーんふふん……」
鼻歌が夜空に響く。
「あら、フギー呑気なのねぇ」
「ミラか……遅かったな」
フギーと呼ばれる男は、ミラと目も合わせず会話する。
「クレラゼも無事で嬉しいよ」
クレラゼは冷たい瞳でフギーの先のものたちを見つめる。
「あぁこれが気になるのか?実に不愉快だったよ。鳥籠の中しか知らないくせに、その外を知っているみたいなことほざいてさ。」
「クレラゼと言ったか?あんのクソガキよくも……っく」
一人の女が苦しそうに訴える。それに対し、クレラゼは表情のひとつも変えない。
「フェルトくん、クルミくん君たちは早く逃げるのよ」
「まだ生きてたんだ……」
「でも、メルシー先生っ!」
「教頭が倒れ、校長も別のところへの対応に向かっている今、一人でも生き残り真実を伝えることが大切ですっ!」
「同感ですわ、私も残ります。クルミ、貴方が生き残りなさい!私にはあのバカ後輩を止める義務がありますから」
フェルトの瞳は真っ直ぐクレラゼを見つめていた。その言葉を聞き、クルミはすぐに駆け出した。しかし、そんな美しい思いも崩れていく。ぐちゅっ…ぐちょ…ぶちっ…。汚い音と一緒に三名の美しい体の内部から、それを裂くように一つの美しい植物が生える。
「はぁ、本当に醜いよね。大体三十人近くの救魔法士様が一人の浪人に殺されるなんて……ざまぁない。」
「でも本当に救魔法士様?前私が対峙した神官様はもう少し粘りついた気がするけれど……」
「ミラさん、神官は救魔法士より格上だよ。」
「なるほど……」
「そろそろ時間か……ボスのところに行くぞ。マーキュリーのヤロウに遅れをとりたくない」
「ボス任務を完遂したんで、そろそろ戻りましょ〜」
そこは魔法学校の校長室だった。
「はぁ、マーキュリー。後始末くらいしないか。」
「それはいいですけど、このジジイはどうするんすか」
マーキュリーは歳をとった老人を見る。それは魔法学校の校長だった。闘いのあとなのか手足は縄で拘束され、口は布で塞がれている。
「こいつ手強くて俺とボスでも結構時間食ったし、ここで始末しときたいっすよ。」
ボスと呼ばれる男は少し考え込んでから答えた。
「こいつは危険だ。私がある程度処理をしてから始末を頼む。」
ボスが前に手をかざすと校長の体からオーロラがかったものを取り出した。
「うわ……あんだけやり合ったのにまだそんなに魔力が残ってたんすね。」
ボスはそれを瓶に詰める。
「後は頼んだぞマーキュリー。」
ニヤッと口角を上げる。
「炎よ、薄く広がり包み込め」
その炎で部屋も校長も含めた。建物一帯を燃やした。
「これで俺らについても、憎いこの世界も渦中の中……計画通りですねボス。」
「あぁ……だが気は抜くなよ、私たちが一人も欠けないことが任務の最重要項目だ。」
夜が明けて、太陽が昇り出した頃一人の成年がこう言った。"なにが起こったんだ"と。




