王族
ロビーに入ろうとしたら王族がロビーを牛耳っていた。
「ラビーちゃん、そんなに焦らずともあやつの返答は決まっておる」
第一王子トラッシュ・アース・ゴディース。良い噂は聞かないが政治や戦略を練ることに長けていると聞く。見た目は小太りしていてムカつく顔面をしている。
「そうですよラビー、淑女は優雅に微笑みを絶やさず殿方を待つものですわよ。」
第一王女ローザ・グレース・ゴディース。一言で彼女を表すなら美人。そうとても美しい見た目をしている。だが性格はそれとは真逆だとか。
「そうですわね。お兄様、お姉様!私もっと王女らしくなれる様精進しなければ!」
第二王女ラビー・ライトニング・ゴディース。上二人とは違いとても良い噂しか聞かない。国思いの優しい王女、国民に寄り添う王女、愛らしすぎて王城から出してもらえない王女。などよく分からない噂が飛び交う人だ。因みに私たちと同年代である。
あまり目につかない様に静かに通り過ぎようとした。だがそれは無理だった。
「あら、あなたプレッテではなくって!お久しぶりね!」
ラビー王女に話しかけられた。
「プレッテですって?!」
「お、お久しぶりです……」
「プレッテか……汚い血がっこっちに近寄るでない!」
「そうよ!あなたなんか生きていること事態汚点なんだから!」
「お兄様、お姉様いくらなんでもそんな言い方は…アビー怖いです!」
「そうね……ではその罰をこのドブネズミに与えなくてはね」
目を疑った。彼女はムチを取り出してプレッテの足目掛けて鋭く打った。バチっ。痛々しい音がロビーに数回響く。その間にプレッテの頬は段々赤に染まっていく。
「ふんっ、次はムチで調教してあげるわ。昔から大好きだものね、プレッテ?」
バチっ、さっきよりも鋭い音が響いた。咄嗟に瞑った。恐る恐る目を開けると床に赤い液体がポタポタと滴っていた。
「もう一発っ……!」
再び音が鳴る。はずだったが音はなにも聞こえない。
「ジロールっ!」
「シオル様!」
「王女がお呼びとのことで急いで来て見ればなんの騒ぎでしょうか?」
(な、なにこれ殺意?シオルがなんかいつもより眩しい?気がする)
「なにか用があったのでしょうが、この状況だと話はできなさそうですね。」
王族をギロりと睨むとそれに怯んで、慌て出す。
「いえいえ、そこまでの話ではないですよ。あぁ…プレッテももぅ下がって良いぞ。長い間悪かったな」
そう言われ、プレッテは逃げるようにわたしの背中の後ろに隠れた。プレッテを見る好奇の目に気づき、すぐさまローブをプレッテに覆わせた。
「では、それももう必要ないですよね?」
「え、えぇもちろんですわ」
そう言いサッとムチをしまう。王女はその後ろから甘い声でシオルに話しかける。
「シオル様ぁ!お待ちしておりましたわぁ!」
「ごきげんよう、アビー王女殿下。私にどのようなご用でしょうか。」
いつものシオルより冷たい声色に唾を飲み込む。さっき感じたオーラは殺意の方だったと分かり背筋を伸ばす。それとは反対ににっこりと微笑む王女も私の目には異質に映った。
「えぇ、実はね……いやぁお恥ずかしいですわ!」
ぽっと赤らめた頬を両手で抑える仕草に周りは心を射抜かれたように倒れていく。それとは裏腹に明らかに機嫌の悪そうなシオル……「この茶番早く終わってくれないかな」とか思っているようにしか見えない。
(もう少し上手く隠せば良いのに)
「スゥーはぁー………よしっ…………シオル様っ!」
「えぇなんでしょうか?」
「わ、私アビー・ライトニング・ゴディースのパートナーとして明日催されるプラムに参加してくださいませ!」
(王名を出すほどシオルのパートナーになりたいって……すごい傲慢さだ)
そう感心していると、シオルが一瞬こっちを見た。だがすっとアビーの方に視線を戻し、キラキラ顔でこう言った。
「パートナーとしてあなたをエスコートできること光栄に思います、アビー王女。」
その言葉に王女様も口をパクパクさせていた。さらに追い討ちを掛けるように王女の耳元で小さく呟く。
「アビー王女……次誘う時は二人きりのときでお願いします…………」
アビー王女はシオルに見惚れた状態でしばらく固まってから口元に人差し指をたて薄笑いを浮かべるシオルに、一言も喋らずこくこくと頷く動作を繰り返していた。それ以外にも周りを囲っていた観客たちも年齢問わずシオルに見惚れていた。そこで私はシオルのイケメン度合いを改めて再確認することになった。
それから王女様が明日の準備をするために他の王族と取り巻き数名を連れてこの場を去った。それを合図とするかのようにここにいた人たちもこの場を去っていき、この場には私とプレッテだけになった。
「リト……ローブありがとう。」
「………うん。」
恥ずかしいが私はこういう気まずい時の対処方が分からない。なんて声を掛けて、どういう行動をすれば相手を傷つけずに済むか。
(優しく声を掛るのは同情されてると思ってムカつくし、元気に振る舞うとプレッテが気を遣ってしまう……今日は災難だったね、なんて相手の事情に勝手に突っ込むことなんて絶対ダメだ。)
色々考えた結果私はこう言った。
「……………落ち着くまで居るから。」
自分でも分かるこの不器用さに私は照れ臭くなる。その後に笑い声が聞こえたかと思うとプレッテが笑顔になって私に寄りかかっていた。
それから少ししてプレッテと私はゲニウスを呼び出すことにしたが、ゲニウスは部屋にはおらず学園中を二人で探し回った。最後に言った図書館で彼を見つけた。
「私のパートナーになって……ほしいです」
「…おう、俺でよければ」
「やりましたねー、リト!」
「ってかなんでプレッテがいるんだよ!」
「リトの親友ですから………それよりもパートナー決まってなかったんですね。もう決まっていると思ってました。」
「……あぁ昨日まで俺はプラムに出ないつもりだったんだ。だが昨日の夜あることが起こったんだ!…なんだと思う?!」
(家族から連絡があったのかな?)
「母さんと姉さんたちから手紙とドレスが送られてきたんだ!その手紙には土産話の一つもなかったら俺の部屋にある本全部捨てるって書いてあって!」
「本とか読むんですね」
「あぁ、本は俺の命だ!それなのにあいつらぁ…なんの罪もない本を脅しに使いやがって……!」
「だから私の誘いもオーケーしたの?」
「あ、あぁ…!でも誰でもよかった訳じゃないぞ!知らないやつとはパートナー組みたくなかったし………でも知ってるやつもほとんど決まっててぇ……だからリトには本っっ当に感謝してる!」
「私もパートナー決まってなかったんだし、頭下げなくても……」
その後、他愛ない会話をした私たちは別れてそれぞれが部屋に戻った。




