入学します!
「うーん、まとまらない。…………これでよし。もう部屋から出なきゃ!……招待状よ我が思う場所へ導く鍵となれ」
そういうと招待状がドアの形に変わった。ドアを開けると屋敷の何十倍も大きい建物の門が目の前に立ち塞がっていた。
私の名前はリト。今日から魔法学校に入学する12歳の美少女です!魔法学校は世界で唯一であり一番のエリート魔法学校。4歳になった者はいかなる人物であっても魔法適性検査をしなければならない。この法律で魔法適性が高かった者は4歳の頃から魔法学校の入学が決められている。私もその一人。今日から8年間びっしり魔法について学ぶんだ楽しみすぎるが
「あれ、おかしいな誰もいないし、門開いてないんですけど……」
(うそうそせっかくここまで来たのになんで門の前なの?!招待状には講堂前の広場に到着するって書いてあったのに。も、もう一回だ。)
落ち着いて深呼吸をする。
「招待状よ我が願う場所へ導く鍵となれ!」
・・・なんでなにも起きないのーー!笑えないこの状況とりあえず魔導通信機で連絡取れるか試そう。魔導通信機とは耳にそったような形をしている魔道具の一種で魔力を流せば誰でも使える非常に便利な通信機のことだ。
「コネクト魔法学校」
「はい、こちら魔法学校です。ご用件をお願いします。」
よし繋がった!
「あ、あの私今日入学するリト・ホーリーです。招待状の手順通りに魔文を唱えたらなぜか門の前に、」
「リト・ホーリー、リト・ホーリー、名前が確認されました。すいませんこちらがお送りした招待状が、今迎えを行かせましたのでそこで待っていてください。入学式には間に合いますのでご安心ください。それでは失礼します。」
良かった入学式には間に合うんだ。なんか音が聞こえる迎えかな?音の聞こえる方を向くと不思議な箱があった。
「お迎えに上がりました。リト・ホーリーさんで間違い無いですね」
「は、はい。」
「では、後ろにどうぞ」
なにこれ箱の中にソファがあるし、すごい早く走るんだけど
「あのこの箱初めて見たんですけど」
なんですかと聞く前に男の人は答えた。
「あーこれですか。これは車です。珍しいでしょう魔法学校にも5台しか無いんですよ。」
車、聞いたことある。炎燃期の前生活に多く使われた移動手段だと。炎燃期に陥った原因の一つであると言われているから車は認められた一部の人、場所でしか運転できない幻の乗り物だ。ちなみに普段の移動手段は馬車か箒か自転車か魔道具だ。
「広場前に到着しました。それではよい入学式を」
そう言ってお兄さんは車と共に消えていった。
広場に入ると他の新入生達はもう並んでいた。人数は80人くらいか、流石世界唯一の魔法学校といったところだろう。
「あなたはリト・ホーリーですね案内しますのでついてきてください。」
「………はい。」
「え、あの子ホーリーだって」
「あいつ勝ち組かよ」
「遅れて登場とか狙ったんじゃない」
あーあまた噂されてる。この世界でラストネームもしくはミドルネームは自分の魔法適性を指す。生まれもった才能で扱う自然魔法で言うと火はフレイム、水はアクア、草木はグレース、大地はアース、風はウィンド、光はライトニング、闇はシャドーといったものだ。これを七適性と言う。さっき自然魔法とあったがそれとは別に人々の研究により生み出された、誰でも扱える人工魔法。そのどちらにも含まれない少し特殊な魔法は特異魔法という。その中には治癒魔法や創造魔法がある。治癒魔法はホーリー、創造魔法はクリエイトと言う。その二つを合わせて九適性という。今の説明通り私の魔法適性は治癒魔法。聖女は、この世界で最も稀有な存在であるからその卵である。ホーリーは妬まれることがあるが、ホーリーだからと言って好き勝手言われるのは気分が害される。
「お静かに。今年の入学者78名全員が揃いましたのでただいまより入学式を行います。今からみなさんをある空間に送り込みます。そこで講堂に入るための鍵を見つけてください。鍵は全員分あり、命の危険はありませんのでそんな身構える必要はありませんよ。難しい課題でもなく、自分の運命を見つけるだけで良いのです。それでは健闘を祈ります。魔法陣よ彼ら78名を我が願う場所へ導きたまへ」
そう言うと知らない場所に一人で飛ばされていた。そこは夜の荒野だった。
どうすればいいんだろうか、あの人は運命を探せと言った。想像はつく、運命とは杖や石といった魔法媒体のことだろう。これは推測だが学校滞在中の8年間、それ以上の年月を共にすることになるのだろう。
(……………星。)
星とは聖女が魔法を使う際願うための媒体であったとされている。
(私も小さい頃聖女に憧れてよく星に願ったなぁ………)
懐かしさを胸に小さな声でつぶやいた。
「……星よ我を魔法学校の講堂に戻したまへ」
その瞬間光に囲まれ、気づけば知らない場所に移動していた。
(ここ…は、講堂?)
「おめでとうリト・ホーリー君は今から正式に魔法学校の生徒じゃ」
(うそでしょ、でき……たの?)
どうやら魔法の媒体にするものが反応し、講堂に戻ってきたらしい。
「リト・ホーリー媒体の提出を」
媒体がなにであるか考えた時、ポッケの中に光る石が入っていたので、これしかない、と思い、慌てて差し出した。
「は、はい!」
女性はそれを受け取ったら石をじっと見つめた。
「……っこ、これは!」
「なにか問題でもありましたか?」
女性が戸惑っていると広場で話していた、年寄りの女性が近づいてきた。
(あ、あの人広場の時の、偉い人なのかな)
「いえ、問題というかなんというか……あまりにも普通の石で媒体として機能するのか」
「……ふむ。リト・ホーリー」
「はい!」
急に名前を呼ばれて背中が跳ねる。
「この石を媒体とし、この傷を治してください」
その人は迷わずナイフで指を切った。
「できなければあなたの入学は認められません。いいですよね学校長。」
「うむ。良いだろう。」
え、う、うそーーー?!
「ほら早くやって見せてください」
(むりむりむりむり。急にやってみろって、でもできないなら入学できない。今までここに入ることだけを目標にして来たのにこんなところで躓くわけには、それに治癒魔法くらい毎日のようにしてたし、大丈夫だよ、私ならできる。)
大きく深呼吸をし、気を引き締める。
「………石よ我が命ずる彼女の傷を癒したまへ」
「……….これはまた」
「傷は癒えました、彼女は合格です。リト・ホーリーこの石を肌身離さずもっていなさい。」
「…………はい。」
(出来たーー、もう無理かと思った。でも結果オーライで良かったわ。)
「新入生78名の入学手続きが完了しましたので、続いて入学式を執り行います」
(今から入学式だったんだ)
・・・
(あーあ話長い、だるいなぁ)
「続きまして学校長からのお言葉です。」
「みなさん入学おめでとうございます。みなさんはそれぞれ目標を持ってここまで来たと思います。ですが、この学校に実力の伴わない生徒は要りません。なので死にものぐるいで頑張ってください。一年目での退学者が一番多いですから。改めて魔法学校への入学おめでとう。」
(…………私生き残れるかな)
入学式も終わり、それぞれの部屋で休むように言われた。生徒は寮で休むように言われた。