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ep7 魔女

「久しぶりですね。この姿になるのは」


 森の魔女は妖しい微笑を浮かべた。

 討伐軍は皆、魔女の何やら底知れぬ恐ろしさと蠱惑(こわく)的な妖艶(ようえん)さの狭間で狼狽する。

 そんな中、セレスが厳しい表情でエヴァンスに詰め寄る。


「どういうことなの?」


「そんなの、見ての通りだよ」


「いったい貴方はこの森のことを、森の魔女のことをどこまで知っているの?」


「落ち着きなよ。君ともあろうものが。伝説の魔女様を前にして失礼だ」


「は?」


 セレスを横にはねのけ、エヴァンスは一歩前に出る。


「改めまして、どうも初めまして。偉大なる幻惑の魔女、エルフォレス様。僕は魔導師のエヴァン・スコットです。どうぞ御見知りおきを」


 まるで陛下に謁見するような姿勢で、エヴァンスは膝をついて挨拶をした。

 彼の後ろでセレスと騎士長は唖然とする。


「幻惑の魔女。その名を久しぶりに聞きました。魔導師エヴァンスよ。貴方は随分と昔のことをご存知のようですね」


 幻惑の魔女は感心して目を細めた。


「魔道を志す者として当然のことです」


「良い心がけです。さて、魔導師エヴァンス。貴方はワタクシと話をしたいと言いましたね?」


「はい。貴女とお話がしたく、ここへ参りました」


「一体ワタクシと何の話をしたいと?」


()()()()()についてです」


 一瞬、時が止まる。

 この男は何を言ってるんだ?

 討伐軍の誰もが皆、理解ができずに固まった。


「それは、どういう意味でしょう」


 幻惑の魔女から微笑が消えた。


「どういう意味か。貴女がわからないわけはないでしょう」


「......なぜです?」


「それは、貴女がかつて(いにしえ)の四天王と恐れられた魔王の最高幹部の一人だったからです」


「!!」


 一同に衝撃が走る。

 青天の霹靂(へきれき)

 それは誰もが初めて耳にする話だった。

 古の四天王など聞いたこともない。


「エヴァンス!」

 

 誰よりも動揺を隠せなかったのは勇者セレスだった。


「幻惑の魔女?古の四天王?そんなもの聞いたことがないわ。魔王と戦った時も、そんな奴等はいなかったわ。それに遺産って...」


「質問が多いなぁ。というかさ、御本人に直接聞きなよ。すぐそこにいらっしゃるんだから」


 エヴァンスは幻惑の魔女を目で示した。

 セレスは苛立ちを募らせてエヴァンスを睨みつける。


「わかったわ。貴方が答えてくれないのなら直接問いただす」


 勇者セレスは幻惑の魔女に向かって、ザッと一歩前に出た。


「森の魔女よ。さっきエヴァンスが言ったことは事実なのか?」


「ワタクシが古の四天王の一人という話ですか?それとも?」


「すべてに答えろ」


「その前に貴女は何者なのですか?そちらのエヴァンス様は先にお名乗りいただきましたのに。同じ人間でも礼儀には随分と違いがあるのですねぇ」


 魔女は不敵に微笑した。

 セレスは毅然(きぜん)としたまま言う。


「それは失礼だったわね。私はセレスティアリス・ホワイト。()()()()()()光の勇者よ」


「まあ。貴女が、魔王を倒した勇者ですか」


 セレスが()えて強調して言った言葉を、幻惑の魔女は繰り返した。

 勇者セレスは魔女の反応を(じつ)と観察する。


()()()()()()、魔王を倒した。もし貴女が本当に魔王の最高幹部の一人だったのなら、思うことがあるでしょう」


 セレスの発言は討伐軍に緊張を走らせる。

 明らかに挑発的だからだ。

 もし本当に森の魔女が魔王の最高幹部の一人であるなら、かつての大戦以来の激闘が訪れるであろうことは必至。


「勇者様」


 騎士長が確認するように呼びかける。

 セレスは肩越しに目だけで答えた。

 最大限の警戒と戦闘態勢を取れと。

当作品をお読みいただきまして誠にありがとうございます。

面白かったら感想やいいねなどいただけますと大変励みになります。

気に入っていただけましたら今後とも引き続きお付き合いくだされば幸いです。

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