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炭鉱に向けて

忍者マルコー、マリーネ、ガルストン、リアナ、シェスト、デルルズと、サラマンダー号の運搬のための兵員が幾人かで、反帝国連盟ニズタムの本部へと向かう。と言って、その場所は旧コンシオ村の面々は知らないわけだが、黙ってついてこいとのことだった。どうやら極秘の場所らしい。


また、新開拓地では、リアナまで行かなくてもいいのになど、村長たちから引き止められていたが、新しくできる村への滞在を彼女は断った。村長は言った「憎しみにとらわれて、人生を棒に振るものではない」と。しかし、彼女はそれもあるのだが、もっと世界を知りたいし、ニクスの行方も気になっているなどいろいろなことがごちゃ混ぜになっているのだ。そう簡単に止められるものではなかった。


シェストも細工師や工具など、そういったことに長けていたので、滞在してほしかったようであるが、こちらはサラマンダー号のことがあったこともあり、なかなか同行を止めにくかった。


出立し、近隣の街で、食料を補給すると、マルコーは告げた。


「ひとまず、旧ドワーフ炭鉱レンズヘイヤを目指す。万一のため、大まかな場所だけでも、伝えておく」


「伝えておく、ってどういうこと?」


質問したのはリアナだ。


「道中何があるか分からんからな、通常なら三週間ほどでつくが、もしはぐれた場合、二カ月そこで待って、落ち合えなければ各自、進む、という算段とする」


「なるほどね、でもそんなに危険なの?」


答えたのはガルストンだ。


「こういうのは、危険かどうかじゃない、万一の時を考えて決めておかないといけない保険だ。難しく考える必要はない、子供のころに、今日遊びに行くって、学校で伝えておくくらいのようなものだ」


それにマリーネがお茶らけながらのってくる。


「私とマルコー兄ぃだけなら、一週間もかからず炭鉱には行けるんだけどねー」


「仕方ないさ、シェストやリアナは旅慣れていないのはもちろん、サラマンダー号の輸送が一番大変だからな」


「ちょっとー僕の心配はしてくれないんですか?」


と、ここでいろいろ荷物を背負わされた、緑の小鳥を頭に乗せたデルルズが言う。


「あんたは、一人旅には慣れてるでしょうし、警戒能力の高さは認めるけど戦力としては微妙だからねぇ。それより、いっつもついてる小鳥は何なの?」


「チークちゃんですか、かわいいでしょ!」


「ピッピーーーー!」


「うーん、なんかただのペットって感じがしないし、あんたからは動物使いとか芸を教えているとかそういう感じもしないのよねぇ」


「いやいやぁ……まだ何かお疑いで」


「当り前よ、私の勘は当たるんだから」


「マリーネは感覚派だからな、だから俺もお前に何かあるのだろうとは心にとめている」


「そんなー、一介のひ弱な青年ですよー」


「ひ弱な奴が長旅なんかできるかっ!」


と、マリーネがデルルズの頭を軽くこずく。


こうしてなんやかんや、ありながら街での補給も終え、ゆっくりと旅立つのだった。


#


街を出立するとそこそこに整備された街道が続いていく。


「なんか立派な街道ですね」


「途中まではねー、旧炭鉱への分岐があるから、そこからはちょっと悪くなっちゃうのよ」


「そんなに人がいないんですか?」


「炭鉱都市としては役目も終えてるし、ラページュまではもっと近い街道が整備されたからねー、もともと道がいいわけでもなかったし」


シェストと、マリーネが話している。


「詳しいんですね」


「ま、故郷周辺だからね」


「こいつは、修行が嫌でいろいろ抜け出していろいろ巡っていたからな。俺はそんなに知らんぞ」


「えー、だってあんなの頑張っててもたいして変わらないよー」


「それはお前だけだ……」


そすして、街道を少し進んでいくと、いつものごとくデルルズが警告する。


「西から三体、魔物か大型の動物、目視は難しい距離、相手は気づいてなさそうですね」


と、警告でありつつもなんとも気楽にデルルズは言う。危機感がないというより、メンバーを信頼している、と言った塩梅だ。


「進路上か、面倒だな。デルルズ、リアナの魔術が届く距離の手前まで近づいたらまた教えてくれ」


と答えるのはマルコーだ。


「わかりました」


しばらく進むと。


「はい、目視は難しいですけどこっちの方角です。あの岩のちょっと横です」


「よし、リアナ、見えたらいつものように風の斬撃を頼む」


「うん」


少し進むペースを落として、ほどなく。


「見えたっ!」


リアナの頭上に三つの風の斬撃円がクルクルと周りそれが解き放たれると、その先の魔獣二体に命中、かと思いきや、すでにマルコーとマリーネは突っ込んでおり、追従せず周囲を警戒するのはガルストン。そのままの勢いでマルコーとマリーネの巧みなコンビネーションに翻弄され、残った魔獣もあっけなく絶命する。


「いちおう周囲、警戒しとくねー」


というのはマリーネだが、これは、どちらかというと魔獣の解体やらをサボりたい方便である。それをマルコーもよくわかっているし、言ってもどうしようもないので、進んできたガルストンと幾人かと、魔獣を解体していく。


「ごめんなさい、一体うち漏らしちゃって」


「かまわない」


マルコーは後の説明はお前がやれとガルストンに目をやる。


「あぁ、魔術師の役割は、近距離戦になる前にできるだけ敵を削り切れたらよし、倒せなくても負傷させてくれてりゃありがたいってのが役割なんだ。それに、リアナは治癒や補助だってできるんだ、近接になっても役立てる。はっきり言って、帝国の魔術兵でも、両方できて、さっきので言えば、二体倒せてるのは上出来だよ。ふつう何人かの魔術師がいて、やっと当たるかどうかだからな」


「そうなんだ、何か実感ないけど」


「まぁ、ずっと村にいたんだし、あの周辺の魔獣は子供でも対処できるほど、小さくて弱かったからな、そのへん実感が持てないんだろうが、やっぱりリアナはすごいよ」


「そう」


「ったく、もっと胸を張りなさいよね、私と兄ぃ二人で一体、あんたは一人で二体、どこが不満なのよ」


「不満ってわけじゃないんだけど、なんていうのかな」


と、シェストが補填する。


「なに簡単なことですよ、さっきガルストンが言ったように、どこまでやるのが普通で、どこまですごいことかわからない点と、まぁ、たぶん、完璧にしなきゃと気負いすぎてるのかもしれません」


「そうなのかなぁ」


「仲間がいるんですから、フォローしあって、失敗は次に活かしたらいいじゃないですか」


「でもなんか、倒しきれなかったのが悔しいのよね」


最大の戦果をあげているリアナは妙に納得がいかないようだった。


そういう形で、旅は順調に進んでいく、ガルストンが戦いに参加する間もなく、デルルズの索敵、リアナの先制、すぐさまのマルコーとマリーネの残りの対処で軽く済んでしまうことばかりだった。


何日か過ぎ、街道も分かれ道へとたどり着く。よく整備されたほうと、昔しっかりしてましたよと、いう道の二つ。もちろん、残念な方を進むことになる。


「ここからは、少し警戒を増してくれ、街道は人が通る分、魔獣もそれだけ狩られているが、そうではない。崖にかかった橋なども多い」


リアナとシェストは少し緊張して、荒れた道を一歩踏み込むのだった。


#


そこは帝国の最奥、皇帝サザーランドの執務室に、皇帝と、黒い死神のような騎士鎧の者、報告に来た一般兵、腐敗した肉体を布で覆ったような樹木のようで黒い肌の男、その他幾人かがいた。


「陛下、報告にございます。コンシオ村では以前、伝承の手がかりなしとのこと」


「ふむ、だが気になるな、謎の爆発、どうみる、魔導研究所所長カルモン」


「伝承は残っていた、と考えるのが妥当かと。村を飲み込んだ、戦略級とはいかずともかなりの規模でございます、用心されたほうがよろしいでしょうな」


「痕跡を探そうにも、その魔術で消し飛ばしていような……なら、逃げた連中はどうだ?」


「はっ、島の反対側に通じる通路があり、その先で船に乗ったと思われます」


「どう思う、死霊使いガイナード」


呼ばれたのは、ぼろきれをまとう、腐敗したような肉体をした禍々しい黒い男だ。かすれた声でそれは告げる。


「逃げた村人の中に継承者がいるやもしれませぬ。それに、動きが早すぎますし船とは大がかりです、手引きした者がいるか、最初から準備されていたのではないでしょうかねぇ」


「準備……か、つまり、伝承が途絶えたというのもデマと?」


「はい。我らの目を欺くためかと」


「気に入らんな。伝令よさがって良い、おそらくそこはもう何も出てこんだろう、次の伝承を狙え」


「はっ」


命令を受けた一般兵はその場を退出する。


「ガイナード、あちらの件はどうなっている?」


「反帝国連盟の、ですかな?」


「そうだ」


「えぇ、どうやら奴ら、地底側と結んでいるようで、拠点はそちらかと。私自ら向かってもよろしいですか?」


「あぁ、あわよくば、奴らの首魁の首をとって来い」

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