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新天地

船旅が終わり、港街で補給を終え、一行はすこし、心が落ち着いた。ラページュの指定された場所まではまだ歩くが、普通の食事と、船の上での揺れた生活から解放されるというだけでもありがたかったのである。それでも、荷物を背負っての移動となり、なかなか大変である。


港は活気に満ち、多くの商人や旅人が行き交っていたが、まずは何よりも、自分達の足元を固めたいと思い、一行は港には軽く立ち寄っただけで、ランページュの用意された地へと向かったのである。


さて、ここで少し問題があったのが、サラマンダー号であったはずだが、準備万端、運搬用の馬車まで用意されていた。反帝国連盟ニズタム側はこれをなんとしても入手したいのである。といって、簡単に馬車にすっぽり収まる大きさではない。


「なぁ、いくら馬車三台あるといっても、運搬は難しいんじゃないか?」


「だいたいの分解して良いところとダメなところ、分解したときの再構成はわかってきましたので、運搬用に分解できると思いますよ」


「それは構わんがシェスト、そうなると、お前までこっちに首突っ込むことになるぞ。お前がいなけりゃ、本部に戻っても戻せないんだから」


「なにいってるんですか、僕も同行させてください」


どう断ろうかと頭を抱えるガルストンだったがそこにもう一人加わる。リアナだ。


「私も連れて行ってよ、昔以上に魔術に関しては自信があるんだから」


「俺は構わないが、無茶だけはするなよ」


と、ひとまず、ガルストンの本部行にシェストとリアナも同行することが決まった。もしかすると、リアナは、いやシェストも帝国に憎しみを覚えての参戦希望なのかもしれない。ガルストンとしては、そうした泥沼に巻き込みたくはないのだが。


とはいえ、ゆっくりと、一行は道を進んでいく。


たまに現れる魔獣は、ガルストンやシェスト、リアナはもちろん、忍者マルコーとマリーネがいればまったくもって敵にならなかった。


何度か魔獣と対峙したあとふと、前方から魔獣に追われて逃げて来る男がいた。緑の小鳥を肩に乗せた小柄な男性だ。


「ひえぇーお助け下さーーーーい」


緑髪の細身の男性が勢いよくこちらへとやってくる、奥にはモンスターが何体か連れている。


「俺に任せろ!」


そんなガルストンに緑の小鳥がすれ違う。ガルストンは、太い大きな棒を組み建てて使う、単純な鈍器とは言えぬ不思議な武器で戦っていた。棒を突き立てたかと思うと、その棒を軸に自身を動かし的確に攻撃したり、かと思うと、その鈍器でそのまま殴ったり、変形させて柄の部分を長くして殴り飛ばしたりと鮮やかな戦闘だ。

村のころのガルストンは剣と盾だったので、戦い方は様変わりしている。


「はぁ、ありがとうございました!」


やってきた緑髪の青年は感謝をこちらに示すも、周囲の皆が快く思っているわけではない。敵や魔獣を擦り付けるような行為だったからだ。


「どうするかはあんたしだいだ、俺はガルストン、あんたは?」


「デルルズといいます、帝国から追われてましてずーッと逃げてきたんですよ」


「ここまで!?さすがに大げさじゃない?」


と、驚いたのはマリーネだ。


「ええ、ラページュ周辺からは追ってはかかっていないんですが、さっきみたいなことが度々ありますし、定住の地もありませんし」


「そうか、デルルズさん、あんた、何か特技はあるかい?」


「特技……ですか、あれば苦労しないでしょうね」


「このまま村の新天地、というのもありだが、いったん俺と同行してもらおうと思うのだが、マルコーどう思う」


「好きにしろ」


「ふーん、いいけどー、たぶんこの人隠し事してるよ?」


「そうなのか、デルルズとやら」


「めっそうもございません」


「だそうだが」


「嘘つきはそういうものでしょう、まったく。本部の途中まではたぶん同行するから見張ってあげてもいいけど、そこから先は知らないわよ?」


「当然だ、俺が判断したことだからな」


「じゃぁ、その、荷物でも何でも持たせてもらいますので、よろしくおねがいします」


こうして、デルルズが旅の動向に加わった。


そこからは、不思議と旅が楽になった。デルルズは周囲の敵を予測したのだ。そのおかげで、順調に進んでいくことができた。


そこに疑問を持ったのはマリーネだ。


「ねぇ、デルルズ、どういう技で敵を予測してるの?」


「技というか、ほんの数百メートルほどですが感じれるんです、敵意がどこにむいているかとか。ずっと、追われる暮らしをしてきたせいでしょうかね」


「あやしい!」


「忍術でも、気配の察知、殺気の察知はかなりの上級でないとできないのよ。それも、数百メートル、絶対に何かまだ隠してるわね」


「隠してませんよー」


と、いろいろ問答はあったが、無事、目標につく。そこはまだ開拓もなにもされてない自然が彼らの新天地として授与された。


「え、ここなの?何も無いじゃない?」


「自分たちで切り開けってことでしょうか…」


そうして、ラページュ側のこの近辺の商業長と、元コンシオ村長、マルコー、ガルストンが同席し、話し合いとなった。


「私は東側商業長モルドー、君たちに用意された土地は見てきたかな?」


「はい」


「開拓をする、というのであれば、こちらから資金の援助もするし、開拓によってなした財は君たちの物となる。悪い取引ではあるまい」


「そうですね、私は受け入れます。村人の説得はお任せください」


「いさぎよいな?」


「これ以上を望むのは過ぎたるもの、と考えております。それに、財産にしてよいのでしょう?」


「そうだ」


「でしたら、頑張るしかないではありませんか」


「それと、我々と反帝国連盟は、何も関係ない、そなたたちはたまたま遠い地から流されてきたさ迷う人々だ、それでよいな」


「はい」


「つぎだ、ガルストン、君の暴走のおかげでかなり帝国での諜報活動がしにくくなったそうだ、かなりいろいろ言われるだろうな。ま、それはそうとして、カゲロウ団のマルコー、マリーネには、反帝国連盟ニズダム本部までの道案内を頼む。また、例の魔導兵器も持ってくるようにとのことだ」


「謹んでお受けいたします」


「すぐに旅立つのでは、村が経ちいくか不安だろう、一週間ほど、開拓する村で滞在することを許す」


こうして、コンシオの村は、まったくのゼロからの復興となったのだ。いや、過去のことも忘れろ、とも言われているのだから、コンシオの村についても残さず、完全な心機一転となった。


#


リアナは、もっと自分でできることを知りたかったし、もしかしたら、巫女の伝承が他の地では残っているかもしれない。そしてなにより、帝国ロズが許せなかった。だからこそ、ただ村でまたのんびり暮らせればいいとは考えることはできなくなっていた。そう、復讐である。一人でできることはごく僅かかもしれない、それでも、帝国に一泡吹かせてやりたい、そう彼女は思ったのだ。だからこそ、ガルストンと同行させてもらうことをお願いしたのである。


もしかしたらその先で、ニクスにも会えるかもしれないし。ニクスは果たしてどこに行ったのだろう。


#


元コンシオ村の面々は一丸となって、ひとまず今日の寝床をざざっとつくり、一日たつごとに、その場所は住む場所である、という形を作り出してく。数日晴れだったことも幸いしたようだ。


「以前のものが使えない不便さもあるが、こう、ゼロからはじめるというのも気分がいい」


という村人たちもいた。そう、彼らの目には、あの戦乱から失っていた輝きがもどってきていた。


いったん仮家が一通り完成し、次に本格的な家を作るための土台のための整備と、資材の調達が始まっている。


村長が言う。


「ガルストン、ここはもう問題ない。君たちは君たちのなすべきことをしてくれ」


「わかりました」


こうして、ガルストン達は、反帝国連盟ニズダムの本部を目指すこととなった。

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