皇帝サザーランド
霊獣グエルから反帝国連盟本部に火急の知らせがあった。帝国により、ヴィルズの封印が強襲をうけているのである。
そこで確認されているのは、皇帝サザーランド、四天王レイリア、研究員とは思えぬ人外の力を持った存在、炎の効かぬ大型の人型の化け物、そして選りすぐりの帝国精鋭部隊が魔導兵器も持ち込んで暴れているのだそうだ。最奥で、防衛する竜の霊獣により、精鋭の兵士や魔導兵器などは一網打尽にもできているとのことであるが、それでも、先の四人が特に強敵で、じりじりと削られており、応援の要請がかかった。また、参加するには精鋭のみにしてほしいとのこと。中途半端な戦力では、何もできず死にに行くようなものだとも伝えられた。
急遽、リアナとメルナ婆さんの協力で各地の強き仲間を集めることとなった。彼らがその場を長時間離れるのはデメリットもある、なにせ各街道の警備などでの要となっている存在だからだ。しかし、ことは急を要するし、もし封印が説かれたらどうなるかわからなかった。おそらく、帝国はもうヴィルズの魂については確保している、そう考えて間違いなさそうであった。なら、肉体が解き放たれた時、人界と霊界が統合した以上の大災厄が待っている。それは、絶対に阻止しなければならないことだった。
こうして、遠方からはルゥ、ベンケイ、マルコーが召集される。本部近郊にいた、ガルストン、シェスト、ニクス、マルコー、ウェーゼンと、修行を中断してメルナ婆さんとリアナも会議室へと集められる。
「一同、集まってくれて礼を言う。ことは緊急を要する。グエル殿から、帝国がヴィルズの肉体を封印した場所を突き止め、現在進行中、霊獣達は抵抗しているが、圧倒的な帝国の戦力の前に押されていると報告があった。今回は、本当に最後の決戦とし、おそらくここで皇帝サザーランドを討ち取らねばならぬと考えている。皆の協力を頼みたい」
つづいてガルストンが告げる。
「これに勝利し、今度こそ、平和な世界をとりもどそう」
会議は終了し、各自準備に入る。
ニクスは、鍛冶の霊獣のところへ向かう。そう、剣の調整と鞘を作ってもらっていたのである。
「おそくなってすまん、だがなんとか決戦には間に合った、できておる」
その剣は黒かった持ち手や装飾が鮮やかに、白、赤、金によって施された、神々しいものになっていた。鞘もそれに合わせて作られている。
「あと、鞘はニクス、あんたの霊獣化を抑制する働きがある、持っているだけでいい、いやぁ、まぁこれが一番難しかったんだがなぁ、ガハハハ」
「そんなことができるのか!すげぇたすかる」
「おう、存分に力をふるってくるといい」
シェストはこの日のために用意していた魔導スーツを身にまとう。下半身はパワードスーツ的な足回りを強靭に補助するもので、大きな腕が背中のバックパックから左右に二本接続され、頭に巻いたリングより意思を伝達し自在に操ることができる。バックパックには、ギグ爺さんが良く使っていた魔導ガトリング砲の改良版が二つと、鍛冶の霊獣に作ってもらった大きな剣、また、いつも使っていた魔導銃を改良したものを二丁という構成である。この、パワードスーツや魔導機械の腕は、金属ハバラウムがあったからこそ成立したものだ。
ギグ爺さんから激励の言葉が送られる。
「ワシの分まで頼んだぞ」
「もちろんです。皆さんのおかげで、作れた武器です。頑張ってきます」
鍛冶の霊獣は、その他のメンバーにも最大限の装備をわたした。マリーネが受け取っていたブーツの改良版を、マルコーが受け取り、彼の武器や防具も一新する。各々、最大限の武具による強化が図られた。
準備万端、グエスの記憶を中継してリアナのテレポートで現地へと向かった。
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皇帝サザーランドと霊獣との激闘は、終盤に差し掛かっていた。霊獣は巨大な黒竜も傷だらけとなり、他に残るもあとわずか。対して、帝国側は、皇帝サザーランド、四天王レイリア、研究所所長カルストン、対ニクス用魔人ニベラがまだ余裕の表情で健在だった。
「やはりラグナード、お前がここの守りをしていたか」
「名乗った覚えはないぞ。そうか、お前、ヴィルズか、お前に肉体を差し出した人間がいるとは、何と愚かな!」
霊獣ラグナードの超長距離の破壊光線はすでに打ち尽くしていた。今戦えているのは、ここに残っている霊獣達は皇帝サザーランドの重力魔術を受けても耐えてそのまま戦えるだけの胆力があるからだ。だが、それでも、動きは鈍くなり、スキができ、攻撃をくらうきっかけとなっていた。
そんなさなか、飛行し先行していたニクスとブーツで高速移動をしていたマルコーが皇帝達を挟み込むような形で駆けつける。
「あいかわらず、きにいらんな。カルモン、ニベラ、後ろを頼む」
「お任せください」
「ワカッタ」
ニクスは、二ベラと呼ばれた大きな赤い鱗をもつ人とも魔獣とも霊獣ともつかぬ存在と対峙し、マルコーはカルモンと対峙した。すぐさま、ニクスは近づく前に巨大な炎で圧倒することを試みるが全く効く様子もないため、つづいて風の斬撃、しかし、これも効果がない。
「だったらこれでどうだ!」
と、黒騎士より引き継いだ氷で凍結させ、生命力を根こそぎ奪うと、あっという間に息絶えた。
横で、縦横無尽に空中で三角跳びをして戦うマルコーもカルモンとの対決は有利に運んでいる。
「前回で手の内を見ている、対策しているにきまっていよう」
と、マルコーもカルモンに止めを刺した。
「ちっ、我が後ろをやる、レイリア持ちこたえよ」
「わかりました」
そうは言うものの、レイリア一人では荷が重いため、皇帝サザーランドの左手による重力魔法は霊獣達へと向きながらの戦いとなった。
ニクスはサザーランドに接近しつつ渾身の一撃で、炎と風を混合させた鞭での一撃を放つ。マルコーも、里秘伝の手裏剣を飛ばす。それらを、サザーランドは右腕一本の剣で弾き飛ばす。ニクスもマルコーもそのままの勢いで接近すると、二人は剣の衝撃ではじき飛ばされる。
そして、サザーランドのあまたを切り裂く剣の一閃が放たれるが、続いてやってきたガルストンのバリア、ルゥの何重もの氷の壁がそれを軽減、他のメンバーも柔軟にそれを回避する。
残りの味方も駆け付け、シェストのガトリングは、遠距離のレイリアを狙い、霊獣達の支援に役立つ。また、ウェーゼンやベンケイが加わり強力な前衛が増えたことで、サザーランドは得意の一撃を放つ機会をつかめない。ルゥによって、霊獣達にかかっている重力魔法は妨害する。
ニクスは、鞭から、剣へと切り替えると、サザーランドは驚愕した。
そう、彼にとってもっとも忌々しい武器、魂を刈り取る武器が黒騎士に持たせていた銀の魔剣だったのだ。しかも、ニクスの剣術はその黒騎士をほうふつとさせる。それはサザーランドにとって非常に忌々しい感情を抱かせる。サザーランドにとってその魔剣は一太刀、一傷をも受けるのははばかられるものである。彼の魂、ヴィルズを削りきり、やがて消滅させかねない、致命の武器であった。そうした、戸惑いはほんの瞬きのほどのスキとも言えない戦いの空白地帯が生まれる。
それを見極めたリアナは勝負を決めにかかる。秘伝の二つ目と三つ目を組み合わせる。メルナお婆ちゃんの力をかり受け、自身がもつ召喚術と秘伝の力をさらにそこあげし、遠くの仲間も近くの仲間の力も借り受けて、彼女はマルコーとマリーネの力で軽やかに跳躍するとデルルズの憑依魔術を仮受け、ニクスと合体、その姿は金色の鎧をまとった黄金と赤の炎をまとわす戦士である。そこからウェーゼンの蹴りの一撃をニクスの竜術により昇華、さらにみんなの力をのせて皇帝サザーランドに解き放った。
「「おぉおおおおおおおおおお!」」
その一撃がすぎると、皇帝サザーランドは爆散、リアナとニクスの合体は解けその場に姿を現す。
前方では、レイリアも霊獣達が奮闘し倒されていた。戦闘は勝利で終わったのだ。
「汝らの助力なくば、封印は解かれていただろう。世界を守るものとして感謝する」
ガルストンが答える。
「こちらにとっても影響のある事でした、これで終わったと考えていいのですよね?」
首を横にふるラグナード。
「敵は去った、されど、あの男に憑依していた魂であるヴィルズは人が魔獣や霊獣の実験の末に生み出したとされておる、しばらくは安寧が続くやもしれんが、世界を再び、霊界と人界に分けてほしい。ヴィルズの肉体は封印されているとはいえある、残念ながら人間は皆賢くなかろう」
「なるほど」
「月の扉を使えば、封印はできよう。だが、長く人生を共にした絆をもった召喚術に長けた存在でなければ扱えん、詳しくは言葉ではなく意志で伝えよう」
そういうと、その理由が皆の頭に流れ込んできた。
「わかりました。本部へ戻り、しばし検討させてください」
「うむ、良い判断を期待している」
こうして激闘は勝利で終わった。だが、最後にまだ、やることが残っているようだ。




