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一進一退

緊急事態であったため、訓練中のリアナにも協力の要請がかかり、遠隔地にいた忍者マルコーをテレポートで直ちに呼び戻す。彼からも案がないか確認したかったのである。しかし、諜報や戦術には長けている彼も案は浮かばない。彼から、父に相談してみたいという打診があり、リアナはマルコーを中継し彼の思い描く故郷であるカゲロウの里をイメージ、そうしてリアナとマルコーはカゲロウの里にテレポートした。


マルコーの案内をうけ、カゲロウの里へ入り、マルコーの父、現統領モウルズと会談する。


「なるほど、状況はよくわかった。少し視点を変えてみてはどうだ、そう、たとえば普通の戦いで針で覆われて近づきにくい敵はどうする?」


「遠距離から弓で」


「そうだ。毒への対処という点に視野がもっていかれておるかもしれんな。我らの場合、暗殺だと相手の死体を確認したいが、毒の散布が止まれば元凶は消えたと判断できよう」


さっそく、リアナとマルコーはこの案を本部へと持ち帰った。


この案を起点にすると、二つの可能性が浮かび上がった。一つは、大型の魔導兵器などを用いた超長距離砲撃である。もう一つは、相手に気づかれない毒のない高度へ魔導兵器を飛ばし、そこから大規模な爆弾、またはそれに類する破壊力を持った対応である。


二つに対する共通の問題は、狙う座標をどう決めるかである。広範囲に毒の霧をまき散らしているため、狙うことが難しい。


また、超長距離砲撃は、大型の魔導兵器については帝国でも実験が少し進んでいる程度で、こちらの技術では国をまたぐような戦略級の兵器には程遠い。魔術でも難しいとのこと。召喚術も難しく伝説にある霊獣ラグナードと呼ばれる竜の破壊光線が伝えられているが、その霊獣は確認されていない。


次に、高高度からの爆撃は、爆撃機が難しい。サラマンダー号は音もなくとはいかず、高度についての問題は確認中となっている。そして、大型爆弾については、消滅の魔術の魔導具としての大型化ができるかどうかこれから試作という段階で、もう一つ可能性があるのは、メルナ婆さんが里のしんがりとして使った召喚術だが、そこまでの長距離では使ったことがないのが不安要素である。


ひとまず、帝国の毒の散布状況、とくに高さの確認と、大型爆弾の開発着手、それに並行してのサラマンダー号の高高度化の検討を進めることとなった。


#


ニクスはベットにあおむけで考えていた。リアナが死んだと思って覚醒したあのときの力が出せれば、今の状況を打開できるのではないかとも思うのだ。だが、何度か練習してみてもうまくできなかった。その理由に心当たりはある。もし、それができたら、それをやったら、おそらくさらに自身の変貌は一気に広がる。そう予感させるのだ。だからこそ怖い。そう、それは当然だった、多くの人たちが頭部がこのように変わってしまっても、今まで通り接してくれてはいる。けれど、そういう仲間から怖がられる、という怖さではなく、人間の部分が全くなくなってしまうというのが純粋に怖いのだ。右腕だけだったときは気にしていなかった。そう、それは、今までの自分を、肉体を、捨てきるという覚悟が必要で、まだ、それを持てないのだ。


そうして考えていると、マリーネが今からそっちへ行くよーと意志が伝わってきてそれに「わかった」と返事をする。最近は本当に意思疎通ができるようになってしまっていてニクスは驚いている。まだ、彼女は視界外だとニクスくらいにしか届けられないとのことだが、それでも彼はすごいと思ったし、感謝もしている。たとえどうなっても、分かり合える相手がいるだろうというのは安心できる材料の一つだった。それでも、今の体を捨てきれるほど、覚悟は固まらない。


連絡があった通り、マリーネがやってくる。


「考え事でもしてたの?」


「まあな」


「戦略を練るのはそういう人に任せるのがいいとも思うけどねー。あと、自分で何とかしようって考えてない?」


「よく分かるな」


「女の勘半分と召喚術師の見習いとしての感覚半分かな」


「そりゃすっかり俺も霊獣になっちまったもんだ。でも、放置してるとここまでって可能性もあるんだろ」


「そうでしょうね、たぶん」


「俺が完全に人じゃなくなっちまっても愛してくれるのか?」


「それはもちろん。だから頑張ってるんだし。でも、もうちょっと今のままでいて欲しいかな。子供欲しいし」


「ありがとう。にしても、毒で焦土ってエグいよな」


「そうだねー。わりとどの四天王もそんな感じよね、一国を一瞬で滅ぼせちゃうくらいの感じ」


「あぁ、一個人で戦略級の兵器だ」


「そうそう、だからそんなのに一人でどうこうしようなんて、考えすぎないほうがいいかも。ニクスって、ついさ、できちゃうことが大きいからさ、自分が何とかしなくちゃって考えすぎているかもよ?」


「ダメか?」


「ダメ、自分自身か、それとも私を優先して」


「はいはい」


#


毒の霧の観測結果の報告が届いた、高度自体は巨大魔導兵器で着艦した高度もなく、散布領域は小国全体を覆うほど、それがゆっくり進軍しているとのことで、毒の採取は失敗、濃度は濃く中心や発生源の観測もできないとのことだった。また、毒の霧はとどまることなく発生しており、いったん収まったり、縮小したりということはないということだ。補給が必要ないのかもしれない。


飛行高度は現在のサラマンダー号でも問題がないが、迎撃されると問題である。なるべく察知されたくなかった。


そうした知らせが各所に届きつつ、メルナ婆さんは、人間の察知に長けているデルルズを呼び寄せた。実験をするためだ。挨拶もほどほどに、メルナ婆さんは彼の力をかり受ける。すると、周囲一帯の人間の意思や敵意をうっすら感じ取ることができた。メルナ婆さんもあるていどの周囲の人間の意思をわずかに感じ取ることはできていたが、二人の力が合わさったことで、その距離は都市をまたぐほどの感覚へと変貌した。


それは、召喚術の力を変質させたもので、大地の意思を読み取って、中継して感じ取っているとメルナ婆さんは感じる。そう、デルルズは知らず知らずのうちに、秘伝の三つ目のリンクさせる変化版を使っていたのである。それは、壮絶な人生と才能ゆえになしえたことだとメルナ婆さんは思う。


「お前さん、何ともすごい力じゃないか」


「ありがとうございます」


メルナ婆さんは感じたことを説明し、作戦に利用できそうだと言った。そう、超長距離での敵の察知にめどがついたのだ。


おそらく、敵は単独で行動している可能性が高かった。だから、意思のありか、さえわかれば、狙いが定まる。毒の霧は味方を巻き込まないようには考えず無遠慮に放たれていた。敵の所在は観測されている領域の中心かそこから後方の位置と推測されている。後は、サラマンダー号と、メルナ婆さんの召喚術次第となってきていた。


#


そんなおり、霊獣グエルからの知らせで魔導金属ハバラウムの所在が分かった。また、彼らは帝国の領土が分かっていたことで避難がかなり進んでおり、助かったとのこと。そして、今回の件に関しては、霧からの避難民の輸送に、飛行できる大型の霊獣達が協力してもらえる運びとなった。


金属ハバラウムについては、ニクス、マリーネ、ウェーゼンが参加し、運搬のため飛行輸送船マルマンダー号で向かった。今回必要となるものかは分からないが、鍛冶の霊獣から念のためと助言があり、三人が向かう運びとなった。


大型飛行霊獣群による避難輸送に関しては、ガルストン指揮の元で、霊獣との意思疎通にリアナがサポート役として参加し、これまでにない大規模な避難が実施されていく。それは、かなりの混乱が予想された。魔獣も霊獣も区別がつかないし、ここ最近は凶暴な新たな魔獣に苦しめられてきた。カニ型霊獣ササビビに守ってもらった地域が多いわけでもない。そうした混乱を抑えるため、まず、霊獣一体を、ガルストンとリアナが乗って向かい、いったん谷を越えるくらいの短距離から、スタートさせ、順次、霊獣達を増やしていくという方式をとった。


さて、サラマンダー号の改良は難航していた。シェストやギグ爺さん、他の兵器開発の仲間たちとも頭をひねるが、改修案がまとまらない。飛行できる高さを上げるのも難しく、加速エンジンを使う事情で音はどうしても出てしまうのである。浮遊エンジンを使えば、音はなくせるが速度と高度が全くでないのだ。


メルナ婆さんはデルルズの力を借りて、超長距離への狙撃が可能か、また、高い高度からでもデルルズの力は使えるのかの実験を行っていた。


超長距離の狙撃の実験では、狙う相手が必要だった。極力弱めた魔術で狙ってもいい感じで避けてくれる、そんな人としてマルコーが的役で協力する。その実験では成果があった。マルコーにミニマンダー号で遠隔地に言ってもらいそこを狙う、その距離をどんどん広げていきテストをしたところ、かなりいい感じとなった。マルコーは巧みによけたが、事前に狙ってきている位置を知らなければ、難しかったという。


また、ミニマンダー号にメルナ婆さんが複座に乗り、マルコーが操縦し、使い高いところからの能力発動にも問題がないか、そして遠隔でもデルルズの力がかりられるかの確認をしたところ、こちらも問題がなかった。メルナ婆さんもデルルズも共に召喚術が使えるため、力の伝達がしやすいようだ。


反帝国連盟側は、各自、できるかぎりの能力をふりしぼっていた。

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