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黒騎士、再び

ニクス達の、各霊獣達との一度目の接触が終わったころ、メルーナとギグに、ニクス、リアナ、ガルストン、シェスト、が呼ばれ、小さな会議室を借りての話がなされた。


メルナ婆さんが言う。


「お前たちには話しておかんといかん事がある」


そう言うと、村での召喚の巫女の真実や失伝の経緯が彼らに聞かされた。


もともと、メルナの娘サリナも召喚術は伝わっていた。そしてメルナの冒険好きの血も受け継いでおり、サリナもメルナと同様にいろいろと各地を巡っていったのだという、そうした旅の仲間との間でできた子供がリアナだった。しかし、旅先で召喚術を使っていたため帝国で狙われ、リアナの両親は捕縛され、サリナの仲間によってリアナはなんとか救出し里まで彼女を連れてくることができたのだという。そこで、メルナは先代の村長と相談して、召喚術については失伝したことにするか、帝国が狙っているなら村をいったん放棄するかを考え、村全体で考えた末に、前者を選択、秘伝の文書はすべて燃やし、非常時の際は脱出できるよう、経路を作っておくようにとしていたのだという。


「やっぱり親父たちは知ってたのか。それに、どうりで村を捨てるとき、話の運びが早いと思ってたんだ」


それにギグ爺さんが応える。


「さすがに、脱出船や、帝国の情報収集はしとらんかったから、ガルストンのおかげで気づけたし、多くの人が助かった。大したもんだ」


「さて、そういうことじゃから、リアナよ戦線に立つなら私が受け継いできた秘伝の秘術を授けるがどうする?」


「うん、やる、頑張る」


「となると、修行の時間を作ってもらわんといかんのぉ」


こうして、村の真実が話され、盟主ゲルニックと相談した結果、修行のためリアナとメルナはいったん行動から外れることとなった。また、アミダ様のところへ、これまでの経緯を報告するため、リアナが向かったところ、デルルズが、霊獣との意思疎通役をやってもいいと、今度はデルルズが参加することとなった。


#


ギグ爺さんは張り切っていた。彼のおかげで、ミニマンダー号とマルマンダー号はさらにパーツ点数を少なくしながら高性能化できたのである。サラマンダー号の解析も進み、機関銃の銃弾についてもめどが立ってきた。というのも、ギグ爺さんは、以前、帝国ロズがこれほど大きくなる前の時代に、魔導具やその兵器に関するトップクラスの国家で技術を学んだ経験があるのである。その国家は今では帝国に侵略されている。ギグ爺さん曰く、その技術がかなり取り込まれているのだという。


ギグ爺さんは歳は七十歳ほどだというのにまだまだ筋肉があり、足腰も強く、大きな工作でもかなりの役に立ち、ミニマンダー号やマルマンダー号の量産に向けて着々と準備が進んでいる。また、人員育成も務め、施設増強をゲルニックに打診した。


久しぶりに酒が飲める生活になった喜びもあってギグ爺さんはここのところ絶好調であった。


#


再び、最初に向かった霊獣の住処にニクス、ガルストン、マリーネと同じメンバーで向かった、ミニマンダー号が強化されており前回よりも快調だった。


「あの爺さんやるねぇ」


「たぶん村にいるのはもったいないくらいに技師としてはトップクラス、国家お抱えになってもおかしくない人だったと思うぜ」


「そうか、コンシオ村って、妙に他の町より良い機械や品物あったと旅した時に感じたんだけどそういうことだったのか」


「そうそう、私の故郷カゲロウの里のルートも構築できたって、ねぇねぇ、ニクス今度、うちの父に会いに行ってみない?」


「いきなりどういうことだ?」


「何言ってるのぉ、せっかくだし、ニクスが人語しゃべれるうちに会っておいて欲しいなぁって」


「ったく、お前らは、まぁでも、話せるうちにってのはそうだな」


「いや、なんかいきなりだし、話せなくなるとまで考えてなかったんだけど」


「可能性の話ではだろうが、言葉が交わせる霊獣も多いけど、どうなるかわからんのも確かだな」


「でしょー。あと、念のため、召喚術のなんだっけ、ほら、意志を伝える、やり取りするやつ、私も修行してみようかなー」


「マリーネは本当に前向きだよな」


ほどなくして、前回と同じ場所で着陸し、住処へと向かうと、同じように出迎えられ、奥で話し合うこととなった。


「そう言えば、人間は呼び名がないと不便なのだったな、我のことはグエルと呼んでくれ」


「わかった、グエル、各地も回ったんだがそちらの根回しも一部してもらえていたようで助かった」


「構わん。さて、ヴィルズについては情報がある、が、そちらの協力が必要になるまで伝えたくないと考えている」


「なるほど、どこで帝国に漏れるかわからない、そう考えているのか?」


「さよう。現に、いくつかの霊獣の住処は、帝国と思われる人間から攻められ、捕縛されたものもいると情報があった。帝国側の領土からその近くの霊獣達を非難させておきたい。帝国の領土について教えてほしい」


「わかった。そちらは協力できると思う。ただ、帝国がヴィルズについて察知してしまった場合、そちらと協力できる体制をとっておきたい、難しいか?」


「いや、よい考えである、我も考えておった。そちらからは、一度、召喚師を来させてくれ、彼らならこちらへ意志を伝えることは離れていてもできるだろうし、召喚して話すこともできよう。問題はこちらから伝えたい場合だ。これについて我と他二体に飛行できる霊獣で一度そちらへ向かっておき、面識を合わせておき、三体のいずれかが連絡に向かう、としたいがどうだ?」


「問題ない。せっかくだ、このまま一度俺達と、本部のあるリザンスに来てもらってもいいか?」


「構わぬが、盟主とやらの確認を一度踏まずともよいのか?」


「ああ、こちらはすでに、言葉の通じない霊獣とも行動している部隊がある。また、先にニクスに先行して盟主には連絡させておく」


「ほぅ、判断が早いな」


こうして、グエルはリザンスまでやってきて盟主や町の長とも会談し、それぞれの顔合わせが終わる。霊獣が来ることを町の民には長からも伝えていたが、空を飛ぶ、という点で驚く人たちも多かったし、また、なんだか楽しそうだと見物に来る人もいたりと様々な反応であった。もともと、霊獣ササビビが出入りしていたこともあって、抵抗感が少なくなっていたのが大きい。とはいえ、町の人からはこんな声も上がっている、恐ろしい魔獣とそうでない霊獣の区別をどうつけたらいいのかと。そう、人間からすると、目で見て分からないのだ。霊獣も話せるものばかりではなく、そして、動物のように一様ではなく、姿かたちが多様な点もどうしていいかわからないのだと。


また、このときせっかくなので、リアナとメルナが同席し、二人が顔を合わせた霊獣三体と意思疎通ができるようにしておいた。


ひとまずは、グエルは盟主ゲルニックから現状分かっている現在の地図と、昔の人界での地図を受け取りもどっていく。


霊獣とは同盟とまではいかなかったが、十分な協力関係を気づくことができたのだった。


#


メルナによるリアナへの修業にマリーネも参加した。リアナにとっては面白くないし、憎々しい相手ではあるが、一途で行動的ですごいなぁとも思うし、また、これまで修行をするイメージでもなかったから意外でもあった。メルナ曰く、本来人には誰しもそうした絆によって、思いを伝える力があるのだという。血筋によって才などはあるにせよ、修行を積めば、だれしも一定の場所まではたどり着けるとのことだった。


とはいえ、秘伝までいくと長い年月の修業を要するし素質もいる。


秘伝の一つは、霊獣の複数体の同時召喚と並行しての魔法の行使である。メルナは現役時代は五体ほどたったが、失伝させると判断し、修行をしてこなかったため、あの非常時では三体が限界だったという。


もう一つの秘伝は、霊獣ではなく親しい人間から力の貸し借りである。例えば、メルナがギグの力をかり受けて、怪力になる、そんなことができるのだそうだ。これができると能力を結集させて強力な相手に数で勝てない場合でも、勝てるようになる場合があるのだという。戦闘能力値が十の者が十人集まっても、三十の者には簡単に蹴散らされてしまう。しかし、十の者の力を一人に結集させて百にできれば三十の敵にもかなう、というのが理想形らしい。そこまで効率よく百パーセント力を借りきるのは難しい。また、自身の力を分け与えることもできるという。


さらにもう一つの秘伝は、意思のあるものの絆を中継地点として多数をリンクさせるというもの。例えば、メルナが利用できる召喚獣を、リアナがメルナを経由して召喚する、ということができるようになる。他にも二つ目の秘術と応用すると、かなり強力なものとなるらしい。


また、訓練のために言葉の通じない、霊獣をアミダ様のいる隠れ里から、一体来てもらっている。小柄なので、密かに実は来てもらっていてグエルたちのように大事になっていなかった。その霊獣は猫ほどの大きさのコロという人型の少女のようでいて、蝶のような羽の生えた存在だ。マリーネは目下、修行の末にコロとの意思疎通をすることが第一段階の目標である。


さて、そうしたマリーネの変容に兄のマルコーは驚いていた。そう、修行については良くサボり、つまみ食いで誰よりも早くその素質でもってやってきた妹が、修行に熱心に取り組みだしたのだ。人は変わるものだな、とも思うし、変えた存在、ニクスには感銘を受ける思いだった。


現在のところ、リアナは一度に二体の霊獣を召喚できているが、まだ、それに並行しての魔法の行使には至っていない。ゆっくり進んではいるが、これは本来、もっと時間をかけて修練するものなのだ。そう簡単に身に付けば苦労せんかったよと、メルナは言う。


#


ニクスはふと、マリーネが修行するようになって単独で行動できるようになり、風の声に導かれるまま、ある地点に向かった。しばらく飛行すると、そこは、以前、黒騎士と戦った場所、そう、元々地下にあった地下国家ゾーグの都市ザルーグだった。最初に彼が大きく覚醒した、まさにその場所であった。


そこには、一体の黒い騎士がゆらゆらと存在していた。それは霊体になりはてた、黒騎士だった。


「君がここに来たか、ちょうどいい。そうだな、一番の適任だ」


あの時の雰囲気とまるで違う、優しい温かみのある声色の男の声だった。


「どういうことだ?」


「私がここにいまこうできているのは奇跡か、運命のはからいだろう。そう、おそらく君に託すためだ」


「託すも何も、俺とあんたは敵同士だろ?」


「そう、帝国四天王黒騎士グレイは君の敵であった、だが、そうなる前は、ある冒険者だったのさ、帝国も何も関係ないね。そして、その記憶は霊獣と人間を融合させるという実験により失われていた。君には本当に感謝している。いや、感謝してもしきれない」


「なんだ、ここの人達が無事にすんでってことか?」


「まぁ、それはわずかにあるが、私はね、最も大切な存在を、危うく自分の手で殺すところだったのだよ。リアナを救ってくれてありがとう。君には私の力を託したいと思う」


「よくわかんねぇよ」


「そういうな。今更、どういう関係かを示したくはないし、そうする資格もない」


そういうと、黒騎士からふとニクスにさまざまな力が受け継がれ、ふっと黒騎士は消え去った。と同時に、ニクスは泣いていた。


「わかった、あんたの意思は受け継いだ」


そう、力だけではなく、思いも、そして一部の、帝国の残酷な実験の記憶などもニクスは受け取ったのだ。


受け継いだのは黒騎士グレイの、氷結とそれを起点とする生命力の強奪の力、一流剣術、そして彼が冒険者だったころに鍛え上げた伝説の格闘術であった。


そして彼は決心する、帝国皇帝は許しておけない、放置できない存在であり、戦うことを。

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