再会
リアナはふと、メルナお婆ちゃんに会いたいなぁと思った。慰めてほしかった。昔は、嫌なことがあったとき、なんだかんだ、慰めてくれたものだった。
そして、不思議なことに、なんとなくお婆ちゃんがどこかにいる、そんな感覚があった。つながりがもてる感覚だ。そうして、服を着替えて、彼女はふとその感覚の先にテレポートした。
するとそこには、メルナお婆ちゃんとギグ爺さんが困ったように、臨時で作ったような小屋の中でお茶を飲んでいた。
「お婆ちゃん!」
さっそうと、リアナはメルナに抱きつく。
「おぉ、リアナじゃないかぁ、懐かしいのぉ。どうやら、召喚術を身に着けたようじゃのぉ」
「お婆ちゃん、お婆ちゃん。よかった、生きてた、生きてたんだぁ」
リアナは抱き着きながら泣き始めた。
「おぉおぉ、心配かけてすまなんだのぉ」
「まったくじゃ、メルナがテレポートをちゃんと使えれば、良いのに、昔から苦手でどこへ行ってしまうのかわからんのが難点じゃよのぉ」
「仕方ないじゃろうギグ、肌に合わんもんは肌に合わんのじゃ」
「よかったぁ。でも、どうやって?」
「それはのぅ。あの時、秘匿の大爆発を起こせる召喚を使って、巻き込まれぬタイミングでギグと一緒に無理やりテレポートして難はのがれたんじゃ。皆はどうじゃ?」
こうして、再開を果たし、これまでの道のりをリアナはぽつぽつと話し始めた。
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ニクス、ガルストン、マリーネは、順調にマルマンダー号で飛行していた。操縦はマリーネがやっている。片腕ではガルストンは難しかったのだ。マリーネはなんでもこなす転生の素質であっという間に操縦を覚えてしまったのである。
飛行速度は、サラマンダー号の四十パーセントほどとややゆっくりであるが、そもそもサラマンダー号自体が早いし、地形に関係なく真っすぐ飛べ、歩くより断然早い。マルマンダー号でそのまま霊獣の集落へ行ってしまうと、怖がられかねなかったので、目的地から少し離れた地点で着陸し、そして、向かった。
近づけば霊獣の隠れ里のように、霊獣の幼体がふわふわとしていた、そうしてゆっくり進んでいくと、ゆっくりと現れた三体のそれぞれ異なる霊獣がやってきたので、ガルストンが言葉を投げかける。
「こちらに敵意はない、言葉は伝わるのか?」
「どうした人間、む、すこし違うのもいるようだが、我は言葉が通ずる」
一体は言葉が通じ、残り二体はできないとのこと。
「それは助かる。話し合いはできるか」
「我でよければよい。他の仲間にも意志を伝えることはできる。ただ、人間がやるような会談の場のようなものはここにはないが良いか?」
「ああ、立ち話で構わない」
「なにぶん我らは十人十色、されど、ここには人型はおらんでな。では、少し奥へ入るといい」
と、奥へと連れていかれる。その場所は、見たこともない緑色の水晶のような鉱石かなにかが多い場所だった。いろいろな霊獣がこちらを眺めている。
「この辺でよいか、ひとまず、ようこそ人間よ。敵意がないなら歓迎しよう」
「こちらこそ、話し合いに応じていただけて感謝します」
「まずは簡単に用件を聞こうか、世界が変貌してしまって、こちらも混乱している」
ガルストンは、ひとまず、人との争いを避けてほしいという点、そして、霊界と人界が分かれていたのが元に戻ってしまったこと、その要因が帝国にある、ということを伝えた。
「我らも争いは望まぬ。その点は利害が一致している。ふむ、やはり古き世界に戻ってしまっておったか、とするとヴィルズの件も動くと考えてよいのか?」
「わかりませんが、帝国が単に世界征服をしたいだけなら凶暴な魔獣がいる今の状態にするのはおかしいのではという意見もありました」
「なるほど、ヴィルズの件は我々はまた我々でも動くことになるだろう。協力するかどうかの話は次の機会でもよいか、お主たちの言を全く信用せんというわけでもないが、別で裏はとりたい」
「賢明なご判断かと」
「うむ、にしても人間と霊獣のつがいというのは珍しいの。そちらでは普通なのか」
「つ、つがいって!?」
ニクスは慌てる。マリーネは堂々とよりそったままだ。
「いえ、彼はもともと人間の姿で、人間として育っておりました。ただ、縁あって、このような形に。私どもの元の世界は霊獣はそもそも秘匿されており、珍しい組み合わせです」
「ふむ、そうだったか。幼体が人の姿をした霊獣はこちらでは聞いたことがない。我らの知らぬ何かがあるのかもしれんな」
こうして、一か所目の階段は無事に終わり、彼らは本部へと戻った。ただ、話した霊獣の助言で、やはり話ができる霊獣ばかりではないため、可能なら召喚師は同行させた方が良いとも指摘されたのだった。
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リアナ、メルナ、ギグ達の話はひと段落し、メルナによってリアナはニクスの件を慰められたりもした。そうして、三人は本部へと戻ったのである。リアナは二人を盟主ゲルニックと引き合わせ、それぞれ協力する運びとなった。
ギグ爺さんは孫のシェストと再会でき、それを喜んだ。そうしたかと思えばなんだか、ふたりでサラマンダー号や、試作エンジン、ミニマンダー号などについての話で盛り上がりはじめた。ギグ爺さんはまだまだその頭脳、工作能力は衰えておらず、さまざまな改良点を一部見い出し、張り切りはじめていた。彼曰く「まだ、若いもんに負けられん」だそうだ。
数日して、ニクス達が戻ってきて、霊獣の集落の結果がゲルニックへと伝えられる。
気になったのはガルストンだ。
「どうも話が歪曲している気がします。霊獣は皆、平穏を望んでいるように感じます。伝承の人間と争っていたことや恐ろしい霊獣という話とかみ合わないところがあります」
「なに、簡単なことかもしれん。もともと霊獣側は争う気がなかった、と」
「と言いますと?」
「人間側が霊獣と争う気が合った、そうした集団がいて、区別がつかなくなり、魔獣、霊獣、人間が三者で争うような構図になった、とも考えられる。推測だがな」
「確かに、何だかんだ、人界は結局人間どうしで争ってしまっていますからね」
「そういうことだな。むしろ、霊界、人界に分けたのは霊獣側の願いでもあったのかもしれん、争いたくないというな」
そうして、いくつか情報が伝達でき、会議を開いた結果、リアナも復帰できるとなり、各地の霊獣達との交渉は二チームで行うこととなった。ニクス、ガルストン、マリーネ、メルナ、の四人がマルマンダー号で、貨物部に座席を追加して。マルコー、リアナがサラマンダー号でとなった。メルナはテレポートは使えないものの、霊獣との意思疎通はリアナよりも長けているとのことであった。
こうして、一行は霊獣達の状況確認、敵対しないむねの伝達を各地で行っていった。また、メルナが昔旅をして知っていたもともと人界にあった別の霊獣の隠れ里二つとも、連絡を取り、こうして状況は進展していく。
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皇帝サザーランドはようやく帝都へ舞い戻り、執務室へと戻った。そこには四天王、邪竜人ファルミドと執事、いくにんかの兵がいる。
「待たせたな、カルモンはまだ戻っておらんか?」
「はい、陛下でもお時間がかかったのです、無事だとは思いますが、もうしばらく時間はかかるかと」
「そうだな。我もうかつだった、あのような余波があるとはな。さて、周辺の変化と、封じられたヴィルズの体の所在についての調査はどうなっている」
執事の一人が答える。
「はい、変化については滞りなく、街道の再整備も進んでおります。ただ、いくつかの小さな村は確認前に滅んでいるところがございました。また、ヴィルズの体については新たに遭遇した霊獣を捕縛、調査しておりますがまだ情報はありません」
「なるほど。後者についてはカルモンがいないのが痛手であるな」
そう、皇帝サザーランドが帝国に戻ってきた今、また、彼らも本格的に動き出すのだった。




