何のために生きるのか
ニクス達は本部訓練場にもどると、ひとまずニクスとマリーネはゲルニックのところに向かった。マリーネはなるべく離れたくないそうで、リアナはふらふらとどこかへ行った。
「ニクス殿は大変だったな、こちらも皇帝サザーランドの実力を見誤っていた。君たちの責任ではない」
「はい」
「それに、君は自分の姿について心配しているようだが、これからは霊獣と人間が手を取り合う時代が来るかもしれん。そのとき、君のような存在は懸け橋になる」
「ありがとうございます」
「可能なら引き続き力を貸してほしい」
そう言われ、その場を退出し、近くにいるシェストのところへと向かった。
「話には聞いていましたが、立派な鳥頭ですね。どちらかというとタカなど猛禽類に近いですね、なるほど」
「いや、感心するところはそこなのか」
「頭部が変わってもニクスはニクスですし、昔からちょっと人間離れしてたところがありますから」
と、シェストはあっけらかんとしていた。その場を退出する。ガルストンはここにはおらず、再構築部隊の一つを任され指揮をとっているらしい。近くにいるのはルゥとのことで、そちらに向かった。
「ねぇ、ちょっと頭さわってみてもいい?」
「構わないが」
と、ルゥは、手でくちばしをすりすり触った後、頭もなでなでわしゃわしゃする。
「おぉー、すごい、すごいねー」
ルゥは感激していた。
「どお?私の彼氏すごいでしょー」
「うん、すごい」
ニクスは照れくさかった。考えていた反応と皆ぜんぜん違うのだ。彼は少し安心した。自分が勝手におびえていただけなのだ。
「次はどうするの?」
「やっぱりガルストンには会っておきたいな、飛んでいく」
「それじゃ、私もつれていってよ、ほら、お姫様抱っこで」
「えーー、まぁいいか」
ということで、ガルストンの位置を聞いて、ひとっ飛びする。かなりのスピードを出していたが、空中でのマリーネはご機嫌で、もっと早くとせがむほどだった。
こうしてガルストンのもとにたどり着く。
「顔まで変わっちまったか、ま、予想はしてたがな。ただ、いいのか戦いが変化を加速させてるかもしれん、変化を緩やかにしたいなら戦闘には参加しないとか、空を飛ぶとか、能力を使わないってのも手だ」
「今は変化をいいとは思えないけど、そうか、そういう側面もあるのか」
「ま、ゆっくりになるかもってだけだ。オタマジャクシは嫌でもカエルになる。確かにニクス、お前は強いよ、だが、強いからって皆を守んなきゃいけない義務なんてないんだ。戦乱を離れて、世界を飛び回ったっていい。そういう方が、お前らしい気もするけどな」
「ありがとうガルストン。少し考えてみる」
「おぅ」
ふと、見送るガルストンは、ずっとマリーネがニクスとベタベタしていたので、いろいろ察したわけだが、そうすると心配になるのが、リアナのほうだった。彼は、どうしたものかな、と思う。
そして、ニクスとマリーネはまた空を飛んで戻った、そのころにはもう夜になっていた。
「ははは、星空を見上げて飛べるのはいいね」
「あぁ、やっぱり空を飛ぶのはいいな」
「ガルストンが言うように、争いのことは忘れてもいいと思うけど、私は連れて行ってよね」
「そうだな、戦うかどうかはちょっと考える。マリーネはそばにいてくれよ」
「もちろん」
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コンコンとリアナがふて寝している部屋がノックされた。「どうぞー」とリアナは言うと、シェストが入ってきた。
「すこしお酒でも飲みませんか?」
「うん」
と、二人は椅子に腰かけ飲み始める。
「ねぇ、何が悪かったんだろう、私ってそんなに魅力ないかなー」
「僕は素敵だと思いますけどね」
「うーそれはニクスに言われたかったぁ」
こうして二人はさんざんぱら飲み明かした。シェストはいろいろ、リアナのぐちを聞いたり思いを聞いたり、無念や悲しいとかを聞いたりした。
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シェストはゲルニックにいくつか報告していた。リアナが失恋してしばらく調子を崩しているだろうということも含めて。
「では、シェスト殿にはその分サラマンダー号の整備やミニマンダー号の開発、量産を頼む」
「善処いたします」
一方、ニクスは戦線から離れるかどうか、頭の隅に置きながらも、ひとまず物資の輸送などを手伝っていた。そうしたとき、たまたまベンケイのもとに行くこととなり、そして、ベンケイと食事をすることとなった。
「頭は変わっても、人間の食事はできるのだなぁ」
「そりゃ、お腹は減る」
「拙者は食べるのが好きだから食べておってな、実は、食う必要はない。月への道に閉じ込められてから、どれほどの時間が経ったろうかな、ずっと戦って寝ることも食べることも忘れておると、自然とそうなっておった」
そうして、いろいろニクスは悩んでることやこれまでのいきさつなども交えてお互い話しをした。
「ふむ、拙者は力がある、というだけで、その義務感でお主たちに手を貸しているわけではない。拙者は戦いが好きでな、腕試しがしたいというのもあるし、こうした酒場でどんちゃん騒ぐのもよい。祭りも好きじゃ。だから、仲間と思った場所は豊かであってほしいと思っておる。だが、それは拙者がそうしたいからそうしておる。ニクスよ、お主は自分の幸せを考えてよいんじゃ」
ニクスは彼との食事のあと、託された荷物などを負って本部に飛んで渡った。彼は思う、自分にとって、幸せ、そう、自分の幸せと彼は言った、それは何なのだろうと。
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リアナはおおむね部屋にこもっていた、お風呂には入るし、召喚術の訓練も少しはしたが、あまり見は入らなかった。シェストから、反帝国連盟での手伝いはしばらく休んでいいと伝えられている。いろいろ、気を回してくれたようだ。
彼女は少し思う、あの時、強引にでもニクスを押し倒してしまったほうが良かったのだろうかと。と、悶々ともしているのだ。
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しばらく時がたち、マルコーが合流。そして、経路の再構築の過程で、地下世界が陸上にあることが判明し、さらに霊獣達の集落が数点確認された。まだ、霊獣達とは接触はしていない。これらを判断するため、ニクスがガルストンを連れて戻り、本部で会議が開かれた、シェストやシンバも同席する。
「さて諸君、街道自体はまだ敷設しきれていないが、生き残っていた各地点はおおむね結ぶことができた。残念ながら、新たに出没した強力な魔獣に滅びた場所もすくなくない。とはいえ、今回の議題は、発見された霊獣達の集落と、どう関係を結んでいくかだ」
シンバがそれについて話しはじめる。
「多くの霊獣は、争いは好まなぬ。ゆえに、使者を送り、お互い危険がない、ということをまず確認するのが良いかと思う。帝国との争いは現時点では、人と人の争いとして、霊獣側は認識する可能性が高い、ヴィルズの件が関わってくるとここは交渉の余地があるだろう」
「ガルストン殿、どう考える?」
「まずは、話が通じるかの確認ですね。一応、他もふくめて霊獣と思しき存在とは争わないよう通達は出していますし、強力な魔獣が出現した今、まず、敵を増やさないことが重要かと」
「うむ、使者にはニクス殿、ガルストン殿でひとまず様子を見てきて欲しいのだがどうだ」
「あのー、私も行きたいです」
と、手を挙げたのはマリーネだ、ニクスとは離れたくないのだ。そこで、シェストが手をあげて話をはじめる。
「今、輸送力が必要と考え、座席は最大三つ、貨物部を座席にすれば座席が増やせる飛行輸送船マルマンダーができつつあります。長距離のテストにどうでしょう。幸い、失敗しても、この三名であれば、マルマンダーが壊れても自力で戻れる力がありますし」
「なるほど、シェスト殿にはマルマンダーの準備を頼む。ニクス殿とガルストン殿はもんだいないか?」
「問題ありません」
「はい、問題ありません」
こうして、ニクス、ガルストン、マリーネのマルマンダー号による霊獣の里での交渉の任務が言い渡され、各自準備に取り掛かることとなった。といって、準備自体はいつも通り。問題はシェストら魔導兵器の作業班で、根を詰めての作業となった。
「それにしても、よかったのかニクス。結局手伝ってるだろう」
と、ガルストンは聞く。
「まだわからない。もうすこし、手伝いながら考えようと思う」
「そうか」
「まぁ、最悪、私を連れて駆け落ちしてもいいんだからねー」
マリーネはあいかわらず明るかった。




