世界と変貌
リアナとベンケイはアミダ様のもとへとテレポートし、これまでの経緯を話した。
「そうか、残念だ。我々も外へ出られるようになったし、隠匿の結界も解かれておる。周囲を散策させたが、古来の魔獣や霊獣が観測されている」
「私は月で離ればなれになってしまった仲間たちをいったん集めようと思います」
「そうじゃな」
「その、ニクスが顔までその……変わってしまっていて、どうにかならないか、知りませんか?」
「そうか、そこまで至っておるか。リアナよ、お前さんは女じゃな。子供の時は胸は小さかったはずじゃ、大きくなりふくらんだ。さて、それをもどすことは可能か?」
「そ、そんなの、知りません!」
「そうじゃ。あれは呪いではないし、いずれ乗り越えねばならん事」
「もどらないんですか?」
「うむ、お前さんの胸が小さくはならんようにな。さて、一つ伝えておかねばならん」
「はい」
「霊界と人界がまじわり、古き世界へと戻ってしまった今、恐ろしき存在ヴィルズについて知らせねばなるまい。魔獣、霊獣、人間、三者は確かに争っておった。それを鎮める、というのも世界を分けた一つの理由じゃった。だが、もう一つ理由があってな。あまたの存在を喰らい、そしてより上位の存在、世界を統べる神とならんとしたヴィルズの肉体を霊界で封印し、魂を人界で封印しておったのだ。もし、帝国がヴィルズのことを知っていたのやとすると、封印を解き、完全に復活してしまうやもしれぬ。心にとどめておいてくれ」
「はい。その、それぞれの封印の場所はわからないんですか?」
「わからん。人界側は召喚師の血族の一派が関わっておったじゃろう。霊界側はまったくわからん。帝国は魂については確保しておる可能性が高いが、肉体については知らんようじゃ、予見のシンバもまだ猶予はあると言っておった」
「わかりました、それでは、仲間を集めに行ってきます」
「そうじゃ、連れていけるなら予見のシンバを連れてゆくとよい。もう制約はないし、お前さん達の本部へいてもらったほうが都合がよかろう」
「ありがとうございます」
こうして、リアナとベンケイはシンバをつれて、ルゥのもとへと向かった。
一方、この隠れ里にいたデルルズは修行だけでもとりあえずとやっていた。アミダに戦うかどうかは後で決めてもよい、だが、そう思った時、力がなければ困るだろうと言われ、修行をしていたのだが、彼は結局のところ、戦いに身を置きたいとは思えずにいた。この状況に至ったことで、少し彼は自分を責めたこともあったが、アミダ曰く、今の力では結果は変わらんかったと。
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ルゥのもとにテレポートしたリアナ達は、中くらいの町にふっと現れ、そしてルゥがいた。
「おぉ、リアナー」
と、おっとりしながらも、なぜだかそこにたくましさを感じさせてルゥは声をかけてきた。すこし、服もボロボロである。
「ごめんね、遅くなって。はぐれた皆を集めて回っているの」
とリアナが言うと、ルゥは首を横に振った。
「私がいないと、この町が危ないの。怖い魔獣が襲ってくるから」
と、立ち話はなんだろうとベンケイに促され、飲食店に入る。シンバはどうも人目についてしまうようだが、気にしていてもしかたがないとあきらめた。
そして、ルゥの話では、月にいたはずだが、いつの間にか地上にいて、これは月が見えてわかったそうだ、少し歩くと見知らぬ魔獣に襲われていた町が見えて、そこから町の防衛の要になっているらしい。もともと、反帝国連盟の国に所属する町だったが周囲の地形も変わってしまい、孤立してしまったのだという。
「世界が統合されたことで、各地で霊界側の場所が割り込むように結合しているようだ」
と、シンバが言う。
「強い兵隊さんは先の戦いにいっちゃって、このままだと魔獣に滅ぼされちゃうし、外を調査できるような人達もいないの」
「ワシなら、現在の周辺地理を見出し地図を書いてやることはできるが、そもそも兵力がないのか」
「拙者が代わりに残ってもよいが、どのみち分散してしまうな。ルゥよ現状でも町を守っていけそうなのか?」
「うーん、今のところは何とかなってるけど、そもそもいろんな物資が足りなくて他の人達が疲弊していっちゃってる」
「そうなんだ。これだと、いったん次は、ゲルニックさんのところに行って、現状の整理をしたほうがいいのかな」
「ごめんねぇ、リアナー一緒に行けなくて」
「ううん、ルゥが悪いわけじゃないわ」
こうして、ルゥと別れて、ゲルニックのところへとリアナ達は向かった。
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会議室にいきなり現れたリアナ達をみてゲルニックは驚いた。
「おぉ、驚いた。よかった、生きていたか」
「ううん、月での決戦は失敗してしまいました」
そうして、ゲルニックや集まっていた側近達に、リアナのしっている月での結果や、ニクスの変貌、アミダ様からヴィルズの話、ルゥやその町の状態などを伝え、今後の方針を相談した。
いったんは、シンバにはこの反帝国連盟本部のある町リザンスに残ってもらい、ここで、世界地図の更新とそれをもとに、周辺地域との経路の再確保を優先することとした。ベンケイが残って、経路の探索の手伝いをしてもよかったが、仲間を集まるリアナの護衛も必要と考えて、ベンケイはリアナと共にいるままとなった。
つづいて、リアナとベンケイはシェストのところに向かった。
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リアナは森の中で釣りをしているシェストに出合った。
「シェスト、大丈夫だった?」
と声をかけると、シェストは泣きながら言う。
「よかったー、リアナ生きてたんだ、良かったぁ」
「ごめんね、おそくなって」
「お主は、なんとか生きておったようじゃな、見たところケガもしとらんようじゃ」
「それは、よい霊獣さんのおかげですよ、言葉は通じないんですけど紹介しましょう」
と、シェストは釣竿をしまって、案内をはじめる。
その先には白い一つ目の大型のカニのような甲殻をまとった霊獣がいた。
リアナが伝える。
「シェストを守ってくれてありがとう」
すると、その霊獣は目をぱちぱちとさせていた。
「そうなんだ、お名前はササビビさんって言うんだ」
「リアナは意思疎通できるんですね」
しばらく、リアナはササビビとやり取りをしていた。はたから見ると言葉を交わしていないのでさっぱりわからない。
「ササビビさんは大変だったら、手伝ってもいいよだって」
「それは頼もしいです。とても強いんですよ、知らない魔獣もバッサリこのハサミで攻撃し、頑丈な肌でもろともしないんです」
「本部の連中は驚くだろうが、仲良くやってもらおう」
というわけで、リアナ達はササビビもつれて本部へと帰還した。また、会議室に現れたうえ、ササビビを連れていたのでたいそう驚かれ警戒される。
「リアナ殿、ここへのテレポートは私を基準にではなく、訓練所を使ってもらえんだろうか」
「わかりました、どうもお騒がせしてすいません」
シェストとササビビはこちらへ残り、経路の再構築へ尽力することとなった。また、ベンケイが今日はこの辺にしておけ、というのでいったん用意してもらった宿で休息することとなった。
リアナは少し安心した、ニクスは変貌してしまったが生きていたし、ルゥもシェストも無事だった。きっとほかのみんなも無事だろう。
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世界が統合された直後、ニバルの生き残りの隠れ家で、彼らとそこにとどまっていたウェーゼンは混乱した。
というのも、周囲の地形が変貌したかと思うと、天の外壁が無くなり、完全に日の光が当たるようになり、月が見えるようになったのだ。それは、地下世界が地上に浮上したように思えた。
そうして、チャルの指示によって、ウェーゼンを筆頭に周囲の調査を始めたのである。




