炎より熱く
作戦は、変装したウェーゼンが遠い場所で怪しい人影を見たと敵に報告し、あらかじめそこにマリーネが仕掛けておいた爆弾を炸裂させる陽動をしながら、あとはその騒動に紛れてニクス、ガルストン、マリーネ、ルゥが門に突入、場合によっては、ウェーゼンが暴れるという手はずだ。
かなりウェーゼンには危険が伴うが、戦力はあまり分散したくない。ガルストンは門を破壊する最後の手段の爆弾のため、陽動には参加できなかったし、突入時に瞬殺していけるマリーネはやはり門の突撃側に必要だった。ルゥは陽動を一人でやるには向かないし、もし四天王レイリアが門にいたなら役に立ってくれるはずだ。ニクスは腕のため、陽動のための兵士への変装に不向きだった。
そうした考えの結果、作戦は決行され、ウェーゼンは遠くの隊員に報告、するやいなや予定していた時間通りにマリーネが仕掛けていた爆弾が爆発し、兵士たちは浮足立つ。そちらへ兵士たちの目が向き、ほどなくしてウェーゼンが暴れ始めた。
そんな混乱の中、残りの四人は急いで門へと向かう。浮足立った兵士たちに、先行するマリーネを中心に的確に素早く致命傷を与えて次々と進んでいくと、やがて、門の外側は城壁で囲われさらに門が占められていた。しかし、それも、ルゥの氷の足場で滑りながらもなんとか登り越えて、門へとたどり着くと、もう軌道は秒読みとなっているようだった。
当然のごとくそこには、魔導兵器の科学者たちや、近衛兵、四天王レイリアと思しき、赤と青のローブをまとった存在、そして、他の誰よりも目を引く、闇の魔力を放つ異質な存在、騎士とも違う誰かがいた。
その誰かが語る。
「ここをかぎつけるか、だが一足遅かったな」
その声は、ひれ伏せと言わんばかりの圧倒的な威厳を持っていた。
「レイリア、しばし時間稼ぎをしたら、あとは退避せよ」
そういうや否や、レイリアの炎が襲ってくると同時に、門は起動してしまう。そう、一歩、遅かったのだ。ルゥがレイリアの魔法を反射ではじくもさばき切れる量ではなく、ニクスが風の魔術で薙ぎ払って手伝うもおされていく。そうしている間にも、開いた門の空間に兵隊が入っていき、先頭を切って先の男は入っていってしまった。
ガルストンは、ボウガンでレイリアを牽制するも軽く炎で焼かれてしまう。マリーネの弓も同様で、先頭を切って入っていく男を狙ったが、レイリアの炎に阻まれる。
「なんだ、この程度で本当にグレイをやったとは思えんな、はは、興ざめだねぇ」
「ちくしょう」
レイリアにとって余裕の膠着状態が続く、それはもてあそばれているかのようだ。
ニクスはさばききれない炎を自分の体で受け、治癒の魔術で回復と風の斬撃を並行して行っていた。そうしているうちに異変が起こる、炎で体が傷つくどころか、むしろ体力も魔力も回復していっているのだ。それを感じた瞬間、彼は行けるとふんでレイリアの炎の嵐の中を突っ切った、誰もが、唖然とした、それはレイリアも。そして次の瞬間、レイリアはニクスの拳の一撃で吹き飛ばされていた。
すぐさま立ち上がるレイリアはニクスをにらみ返す。
「へぇ、私を殴り飛ばすとはねぇ、いい度胸してるねぇ!」
そうして激しい青い炎が収束しニクスを襲う。
「ニクス!!」
その灼熱がきえると、そこにはまるで何事もなかったようにニクスが立っていた。
「お前は!お前はなんだ!」
そうして、ニクスは鞭の一撃からさらに踏み込んでレイリアの腹に拳の一撃を見回せたかと思うと殴打の嵐を浴びせる。とっさに、時間稼ぎでよいことを思い出し頭を冷やしたレイリアは爆発を起こして飛び退り距離をとって、その連続で逃げ去っていく。
「ニクス、大丈夫なのか?」
ガルストンは急いで訪ねる。
「あぁ、炎はへいきになった?みたいだ」
「みたいって、無茶とデタラメな体しやがって」
「ちょっとちょっと、もうこれ追いかけないとまずいでしょ」
「そうだな、ルゥもとにかく急ごう」
四人は開かれた道に飛び込み、走り始めた。そう、レイリアは足止めでしかない。あの男を進ませてはいけない、誰もがそう感じていた。
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門によってできた道は異質な場所だった、真っすぐと道は続いているが、歪曲する歪んだ景色は上下感覚を惑わせる不気味な空間だ。そこから、ゼラチン質のスライムの魔獣などが現れて道を阻んてくる。
「くそっ、急いでるってのに」
「全滅はさせなくていい、道が開けたら前へ進め!俺は後ろを見ながら進む」
ガルストンは叫び、ルゥを片腕でおんぶしながら突撃の陣形でもって進んでいく。それが好をそうしたのか、後ろから追ってきた帝国兵が、それらの魔物に阻まれている。
「突っ切るぞ!」
ニクスの火の魔術は以前よりも強さを増し、スライムを一瞬で蒸発させていき、それを突破口に前進していく、この速さならいける、そう思った時、仁王立ちの筋肉質のいくつもの武器を持った何者かが立ちはだかる。
「拙者はベンケイ、この空間の扉を開き我を開放してくれた恩に報いるため、そなたらの足止めをいたす。許せ」
「ふざけるなぁ!」
先ほどからの勢いのままに飛び込んで火の魔術を放つニクスだが、巧みに曲刀で切り裂かれ、ついでニクスの首近くに刃が届くかという否や、マリーネがニクスの肩を強引に下げて何とか避けたかと思うとすぐに次はそこから突きが放たれそれを、ルゥが氷の壁を作って防ぐもわずかな時間だけで壊れる。しかし、そのわずかな時間のおかげで、ニクスもマリーネも後ろに跳び対比していた。
ガルストンが抱えていたルゥを置いて前に出て、こちらは前衛三、後衛一での戦いがはじまる。
圧倒的に人数が有利のはずなのに、敵の戦士は熟達した太刀筋で四人の攻撃をいなし、的確にスキをついて攻撃を加えて来る。その剣技はもはや、人間の領域を超えているとさえ思えるほどだった。
だが、数の優勢で着実にベンケイと名乗った男は傷が増え、技は鈍っていく。
「くっ、恩義に報いれんとは、武人として情けなし」
「なにが恩義だ!帝国に何の恩義があるってんだ!」
そう叫んだのはニクスだ。
「ふ、我はここでさ迷っていた、閉ざされた道を開け世界へと再び戻れるようにしてくれたのだ、これを恩と言わずなんとする」
「そいつらが、世界をぐちゃぐちゃにしちまおうってしてるって言っても、あんたは恩義だなんだっていうのかよ!?」
「世界、どういうことだ?」
そこで、ベンケイの動きは止まった。
「帝国が狙ってるのは、霊界と人界にわけられた世界をふたたびもどして、世界ひっくるめて征服しようってやばい連中なんだよ、あんたは恩義を感じてる事情があるんだろうが、止めなきゃ世界がやばいんだ」
「どうやら、嘘を言っているようではないようだが、それが真かどうか、お主らと共に拙者も連れて行け」
「なんだ、手伝ってくれるのか」
「お主らの言っていることが真なら、そうしよう」
こうして、戦っていたはずのベンケイと共に一同は先を進んだ。ベンケイはけがを負いながらもここら一体の魔獣と戦いなれているのか、スライム相手に曲刀で圧倒してしまう。そうこうしていると、違う景色が前方に見えてきた。
「出口か!?」
「おぉ、久しぶりの現世よ」
そうした出た先は、白い岩石地帯で、人っ子一人見当たらなかった。どうやら、あの男と帝国兵は目的地に全員で向かってしまったのかもしれない。
「なぁ、ベンケイって名前だったかおっさん」
「うんどうした?」
「ここから先で、双子の巫女の伝承に出てくる扉の場所ってしらないか?」
「うーん、久しぶりすぎて、そんなもういろんなことは忘れてしもうたわ」
「門が閉じていたのは数百年は越えているから、人間だとするとどうして生きてるのか不思議なくらい」
そういうのはルゥだ。
「何と、そんなに年月が立っておるのか、おぉ、向こうを見てみよ、青い丸が月のように見えるぞ」
ふと、皆が振り返ると、そこには青に白いもやのかかったところどころ緑や土色のする何かがあった。
「なんだ?」
ふと、そばで光が輝き、瞬く間に人が現れた。
「今度はなんだ?」
それは、リアナだった。
「良かった、ちゃんとできた、地上が大変なの!」




