旅の準備と
任務への準備を各自行っている。
ガルストンは、シェストのところへ行き、魔導爆弾の取り扱いの説明を受ける。
「いいですか、まず門は起動させたらアウトかもしれません。起動してから門を破壊してもおそらく扉への道という魔術は成功しているので一定時間は発生し続けてしまい、わたられてしまう可能性があります」
「どういうことなんだ?」
「例えば、僕の使っている魔導銃、これで風の斬撃の魔術を飛ばしたとしましょう。その後に魔導銃を壊されても風の斬撃は飛んでいくんですよ。もちろん、門を壊せばすぐに道はとじるかもしれませんが、確証は薄いです」
「なるほどな」
「それと、この魔導爆弾は、ガルストンでも使えるよう魔力を込める必要がない、物理仕掛けで作動させるようにしています。手順書にまとめていますが、中身のないからの模型でざっくり実演するとこんな感じです。帝国の爆弾について調べてもらって参考にしているので知っているのではないですか?」
「あぁ、いろいろたすかる、これは使いやすい」
「起爆すると、周囲一メートルほどを消滅させる範囲は限定的であるものの強力な消滅魔術が込められています。ですので爆弾は近くに設置してください。また、起爆自体は帝国の爆弾の短い方式と同様に三十秒後です」
「なるほど、わかった」
「おそらく破壊は門の一部でいいはずです。また、状況が分からないため、範囲一メートルと小さくしていますが、くれぐれも起動後はすぐに離脱するようにしてください。巻き込まれると、跡形も残りませんよ」
「そんなにすごいものなのか?」
「はい、いろいろ調べてわかった、光とも闇とも違う、純粋な、ただ消滅だけをおこす魔術がありまして、その魔導兵器化に成功しました。これから向かう魔術王国ニバルが秘伝としてきた書物にあったものなので、由来についての説明は他言無用です。それと、もしリアナに合うことがあったらこれを渡してください。その魔術について詳細にまとめ直しましたので、彼女なら使えるかもしれません」
「わかった、またおっかないものを調べたものだ」
「昔の文献ほど、そうした戦争用のものは多いです。年代が新しくなるにつれ日常の便利なものになってくるので、古代は相当に混とんとしていたんでしょうね」
別の場所では、ニクスとマリーネが旅の準備のための買い出しをしていた。
「ニクス、こんなお手てになってしまって、いろいろ不便じゃなぁい?」
「いや、不便てことはない。むしろ便利だ。岩とか砕けるんだぜ」
と、マリーネはニクスの変わってしまった腕をムニムニさわりながら言う。
「そっかー、でもまぁ、カッコイイからニクスには似合ってるのかもね」
「あ、あぁ、それより次は香辛料を買っていこう」
「はーい」
と、甘えた声で答えるマリーネにニクスは翻弄されっぱなしである。ニクスとしては、知らぬ間に、子猫になつかれてしまったような雰囲気で困惑している。
そうしたことも終わり、ウェーゼンも交え、ニクス、ガルストン、マリーネの四人で目的や目的地までのルート、状況などの確認を行った。
「ウェーゼンは地下世界は初めてだと思うけど――」
と、マリーネがいろいろと地下世界での魔獣について説明し、このメンバーでの戦闘はどうするかをガルストンを中心に相談する。
「軽く手合わせして、それぞれの力量を見ておくのはどうだ?」
と、ニクスの提案で訓練場に行って簡単な手合わせがはじまる。
まずは、ガルストンとマリーネだ。ガルストンはこん棒にいろんなところにとってと重鈍な重しのついた鈍器、マリーネは短刀の二刀流、ふたりは十メートルほど離れて模擬戦を開始する。開始するやいなや、シュンとマリーネは距離を一気につめて短剣の突きを放つも最小限の動作でガルストンは鈍器でガードする。続けざまにマリーネはしゃがんで足払いをするも、ガルストンは鈍器に上手く体重をのせて跳躍しつつ蹴りをはなったが、そこにマリーネは短剣をむけると、ガルストンは鈍器を傾けてするりと避ける。こうした攻防がほんの三十秒に連続して行われると二人は距離をとってこの模擬戦は終了した。
「重鈍な武器だと思っていたけど、私の動きについてくるのはなかなかやるねー、それにしても相変わらず不思議な武器だよ」
「あぁ、昔な、とんでもなく硬い敵と遭遇して苦戦したことがあって、それから重い鈍器での戦い方を自分なりに模索したんだ」
そうして次の模擬戦は、ニクスとウェーゼンだ。ニクスは鞭と、簡単な格闘のほか、火と風の魔術と多彩だ。対してウェーゼンはどうやら、格闘一本を極めた形で、こぶしには特殊な材質のナックルを装備している。二人も、十メートルほど離れたところから模擬戦を開始した。開幕でニクスは風の斬撃を軽く飛ばして様子をみると、それをウェーゼンは拳を真正面に振りぬいて霧散させると、ガッガッっと大きい音ととおにジグザグな高速移動でウェーゼンは接近してくる。それに対して、ニクスは炎をまとわせた鞭をバシュンと振るう、それ自体はウェーゼンにあたらなかったが鞭の先端で炎がはぜると、ウェーゼンは煽られ反対に退避する、そこをニクスは風の斬撃をさっきより重めに逃げ道へ放つと、ウェーゼンはギリギリで急角度に方向転換してニクス側へと跳躍した。それをニクスは拳を待ち構えてはなつと、ウェーゼンも同様に合わせるように拳をはなつ。その後は、格闘戦となり、ウェーゼンの重く早い一撃がニクスを圧倒する。そこで、ニクスは風の魔術の爆風を使って跳びつつ治癒の魔術で負傷を癒して距離をとって、いい時間になったので、模擬戦は終了した。
「さすがに本場の格闘家に格闘挑むのは無謀だったかな、はは」
「いや、なかなか無手勝流とは思えなんだ、特に最初の拳は岩をも砕けるほど重かった」
こうして、お互いの簡単な戦闘力の把握が終わった後、魔獣との戦いや、今回は人ともあり得るのでそれも考慮して相談をする。
メンバーとしては、やや前衛に偏っているような雰囲気だったが、マリーネは意外にも弓も使えるそうで、それを準備すればなかなかいい形になりそうである。ニクスは、近接や中距離、そして治癒と範囲が広く、魔術の長距離はやや苦手である。ガルストンは近接で防御役でありつつも、敵に応じて鈍器による打撃とボウガンによる中距離も可能だ。マリーネは標準を弓で遠距離としつつ、いざというときは近接も可。ウェーゼンは近距離が誰よりも優れている。周囲の探索はニクスはもちろん、マリーネも鋭い。遠距離火力だけがやや乏しいが、少数精鋭としては十全な編成と言ってもいいだろう。
それら準備を一日で行い、急いで彼らは出立した。
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「今回は急ぐから、前回よりペースはやめで進むよー」
と、マリーネを先頭に、一行は以前よりもうんと速いペースで進んでいく。何と言っても、皆、体力には自信があるメンバーなのだ、そういう点で、良い人選だった。
また、マリーネは珍しく今回は兄のマルコーと一緒ではない。これまでは、一緒に任務にあたっていた。というのも、ややマリーネが気分屋なところがあり、お目付け役、としてまじめな兄があるていど見張るという方針だったのだが、そろそろ個別に任務をうけられるようになるようにと、長の指示によってこの体制になった。
それは、なんだかんだ言いながらも、成果は出してきたマリーネが認められたという側面もある。また、兄から解放されたという点と、ニクスと一緒という点で、今回のマリーネは大張り切りだった。愛しの彼に情けないところは見せられなかった。そう、これはたまたま、かみ合わせが良かったのかもしれない。
旧炭鉱レンズヘイヤにあっさり到達し、エレベーターに乗って、地下世界へと降りると、そこからのペースは変わらず、一目散に、いったん合流予定になっている、魔術王国ニバルの生き残りの隠れ家まで街道沿いに進んでいく。いったん休むとしても、その隠れ家ででよいだろうという判断だった。
魔獣との戦いも、これまでの経験と、準備での相談が功をそうして問題なく対処できている。遠距離もマリーネの狙撃とその矢を何度も放つ速度が卓越しており、心配するような点では全くなかった。もちろん、矢はリアナの風の斬撃ほどの威力はないが、十分である。ウォーゼンも中距離から一気に近距離につめて攻撃できる跳躍蹴りが強力で、ガルストンの鈍器の破壊力を超える威力であった。
そうした旅の途中で、ウェーゼンのこれまでの成り行きを聞くことにもなった。
もともと、独立していた小国の優れた格闘家の一族として王宮に仕えていたが、帝国の宣戦布告に国はあっさり降参し、その姿を情けなく感じて、国を出て、旅の末に反帝国連盟とつながりができたのだという。故郷の話を伝え聞いたところ、かなり重労働や重税が課せられ、無残な状態になっているそうだ。ウェーゼンは、戦うべき時に戦わなければ奪われるだけなのだと、改めて感じたのだと言う。
かくして、彼らは、隠れ里にたどり着いたのだった。




