霊獣の隠れ里で
霊獣は、平穏や絆を重んじる特殊な存在である。隠れ里では、さまざまな霊獣がいて、とくにリアナは興味津々であった。
なにせ彼女は、召喚師の家系で、召喚術の修業こそしてこなかったものの、そういう家系として魔術の修行などいろいろとしてきたのである。それに、彼女は昔から思っていた、途絶えてしまって久しい伝承や、それに代わる自分らしさというものを。現時点でも彼女はその実力について全く気付いていないわけだが、大きな理想というか、伝説を求めていたのである。そして、その伝説が目の前にあることが何より心躍るのだった。
霊獣は、人魚姫や、半魚人、猫のような人に近しい陽気な存在などさまざまである。そうした彼らに見守られ、一行はアミダ様のもとへと進んだ。
いちおう、人を迎えるための家というのもあり、かつアミダ様も人に近しいため、家という様式をとっているのだとか。他の霊獣は各々、好き勝手に暮らしており、家だったり小屋だったり、巣のような何かだったりと色とりどりの場所であった。
アミダ様の家に入ると。他、予見に秀でたいくつもの目を持った杖を持った霊獣もそばにいた。
「よく連れてきてくれたニクスよ、紹介してくれるかい?」
「はい、こっちがガルストン、反帝国連盟からの使者です。こっちが、リアナ、もともと召喚師の家系だったのですがその術は途絶えて、というのは話したことがありましたね。それとこっちが、デルルズ、憑依魔術を使えて、この戦乱で帝国に里を滅ぼされました」
「ふむふむ、まずはガルストンとやら、要件を聞こう」
「はい、帝国との戦いにご協力いただきたいのです」
「なるほど、その前に、帝国の狙いについては知っておるか?」
「世界を帝国が統一することかと」
「うむ、やや正解といったところか。真の狙いを知らんようだな。奴らは、分かたれた霊界と人界を再び元に戻し、古き時代の世界に戻したうえで、そのうえで帝国の皇帝はあらゆる存在の頂点、神になろうとしておるのじゃよ」
「神ですか?」
「霊獣や魔獣、人間を超えた先の存在と言われておる。力は貸さざるおえん、古き時代の世界に戻されては我々もこの平穏を保てぬからな」
「ありがとうございます」
「と言って、大きなことは少し難しい。戦力になる霊獣が乏しいのだ。というのも、こちら人界に残れた霊獣は人間とも共存を望む、見守っていきたいと考えていたがゆえに残れた。ゆえに、争いに長けたものが少ない。炎の魔人、鉄のゴーレム、雷小僧、私のような消滅の光を使う者に限られる」
「なるほど」
「また、我々には制約がある。人界に残れる代わりに、隠れ里を出られぬのだ。協力はできるとしても、召喚師がおらんとどうしようもない」
「そうなのですか……」
「だが、良い人材を連れてきた、とくにリアナ、デルルズと言ったか見どころがある。ニクスは強引に私から招かれてやっている状態でな、あれは正式な召喚術とは少し違うのだ。どうだ、リアナとデルルズよ」
それにリアナは喜んで答える。そう、まさに彼女が待ち望んだことだった。
「私も召喚術を使いたいと思っていましたし、皆の力にもなりたいです」
つづいてデルルズが答える。
「僕はその、戦乱からは遠いところでゆっくりしたいです」
「そうか、リアナにまず私自ら修行をつけよう。して、デルルズ、平穏な地はそうそうに無くなってしまう可能性が高い。しばらくは、ここは平穏な場所となるが、人里が良いか?」
「いえ、少し疲れてしまいましたので、のどかな場所でしたらかまいません」
「なら、少しここに滞在するといい。もし、気が変わったら、修行をつけてやろう。さて、ニクスよ、いったんお主だけ残ってくれ、少し二人で話がしたい」
そう言うと、他の面々は家の外に出て、目玉がいっぱいの予見の霊獣シンバが、人間用の宿をその面々に案内しはじめる。
一方、残ったニクスとアミダは。
「ニクスよ、風の声に導かれ、また一つ覚醒したようだな」
「はい、この腕はどういうことなんですか?」
「時期にわかる。今は知る必要はないだろうが、お前の力になってくれるものだ」
ニクスは捨て子だった、村から旅立ったのは、自分のルーツ、故郷、そういうのが知りたくて旅に出たのだ。彼は、そうした土台のあるガルストンやシェスト、そしてなによりリアナが羨ましかった。彼女は伝説の血筋という大きなルーツを持っていた。自分にはそういったものはなかった、欲しかった、だからこそ旅をしたのである。風の声に導かれ、この地へたどり着いたが、アミダ様は何か知っているようであるものの、全ては語ってくれないのがニクスにはもどかしかった。
「少しは、教えてくださいよ」
「そうだな……だが、あまり早急に言えばお前が後悔するかもしれんし、事がうまくいかなくなるやもしれんのだ。言えることは、ニクスよ、お前は世界の希望となる存在ということだけだ。そして、今のうちに、多くの人たちと語らっておけ」
こうして、二人の会話は終わった。ニクスにとっては、やはり、納得しきれない回答だった。
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大まかにまとめれば、霊獣側は力を貸したいが、隠れ里を出られない制約がある。それをどうにかできるのは召喚術で一時的に外に干渉できるため、リアナが修行して身につける、ということだ。
一行は、人間用の宿で語らっていた。
「デルルズとしては、ゆっくりしたいなら、ここにいるほうがいいのかもしれないな。俺はそういう判断をいいと思うよ。誰もかれも戦火に身を投じなければならないわけじゃない」
と、ガルストンは言う。
「ありがとうございます。少し、ゆっくり考えさせてください」
「なに、気にするなって、いいか、やりたいやつがこういうのはやったらいいんだ。力があるからやるとか、俺はそういうのは好きじゃないな」
というのはニクスだ。
「あんたはやりたいことは止めてもやるものねぇ」
「はは、でも、子供のころは一番何かと企んで、いろいろやったのはガルストンだけどな」
「おいおい、今じゃ、しっかりと分別わきまえてるんだ、昔はやんちゃしてたと思がな。でもリアナは良かったのか?」
「うん、召喚術は憧れだったから」
「ならいい。いったん、地上で反帝国連盟が良く連絡に使う町に戻る予定だが、ニクスと二人になっちまうのが少し心もとないな」
「リアナの魔法は心強かったからな。召喚術がなくったって、かなりのものだったからなぁ」
「そう?私ってそんなに役に立ってた?」
「もうちょっと、魔術の方面で自信もっていいと思うぞ、世界を旅してまわったけど、得意系統が一つか二つで、あんなに魔術は連発できないし、精度もない。持って生まれた才と、里での訓練のたまものなんだろうから、召喚術関係なく、自信もってよかったと思うがな」
「そういうけど、ニクスのほうが今じゃ、火も風も制御が凄くうまいじゃない」
「まぁまぁ、完璧な人なんていませんよ。そんなこと言ったら僕は、魔力はからっきしで、探知がちょっとできる程度ですし」
「人それぞれやれることには限界があるはな」
と、ガルストンが言い、そうして、その日は一休みしたのであった。
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帝国の執務室で皇帝サザーランドは、魔導研究所所長カルモンに伝える。
「カルモン、門の準備ができ次第少数精鋭で我は月へ向かう」
「わかりました」
「門のため、四天王レイリアは魔術王国ニバルから動かせん。また、私が不在となるあいだ帝国は四天王ファルミドに任せることになる。だが、ここで我への邪魔が入るやもしれん、外で暴れて欲しい」
「といいますと」
「バルバルド魔導巨人兵器を使い、地上でまだ侵略していない各地を襲わせろ、できるか?」
「まだバルバルドは完成率七十パーセントほどですが、陽動ということであれば、その役目果たせるかと」
「魔導兵器舞台には苦労をかけるな、先の戦での整備などもまだあろう」
「ありがたきお言葉。されど、真なる世界のため、粉骨砕身でのぞんでおります」
「うむ、頼む」




