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地下侵攻作戦

そこは帝国皇帝の執務室、黒騎士グレイのほかに、青き炎を操る魔導師レイリアや側近たちと共に、皇帝は報告を受けた。


「そうか、まさかガイナードが敗れるとはな。しかし、地下の国々も絡んでいるということはよくわかった、戦闘の詳細はわからんのだな?」


「はい、単独での潜入で、都市での情報から失敗が分かった程度でございまして」


「なるほど……機をいっしたくはないな」


これに、赤と青の柄のローブをまとった女性、魔導師レイリアが答える。


「時間を与えては、場所を移されるかもしれませんね」


「地下世界の侵攻計画を前倒しで行おう、他は防衛のみとし他の計画は停止、残りの戦力はこの進軍に注力する」


地下世界には、三つの国が存在する、魔術王国ニバル、商業国家グラナディア、王国ゾーグ、今回、ガイナードが向かったのはゾーグの反帝国連盟の本部だった。それらを、真っ向勝負で、制圧する、という腹づもりなのだ。そして、これにグレイが応える。


「では、ゾーグ側は私が攻めさせていただきたいですね」


「よかろう、では、ニバルはレイリア、グラナディアはファルミドに担当させよう」


ファルミドはここにはいない残りの四天王である。毒の風を操る邪竜人ファルミドは、竜の鱗による頑強さと翼を持ち、毒の霧を風で操る存在だ。


「地下は後回しでもよかったが、裏で連中と結託しているとは、我々も舐められたものだ。これより、地下世界攻略作戦を決行する!」


#


ほどなく、反帝国連盟ニズタムの本部で、ニクス達はふたたびニクスを含め会議の場が設けられた。


「ニクス殿、そなたのおかげで我々は命拾いをした、礼を言う」


「構いません。俺は、友人を助けたくて来ただけですから」


「うむ、先の戦いで本部が知られたが、移転は計画中だ、マルコー、カゲロウの族長には決まり次第おって伝える」


「わかりました」


「ニクス殿、霊獣と接点があるそうだが、彼らの助力を得ることは可能か?」


「アミダ様はこの戦いは世界規模、帝国の真の狙いを止めねば霊獣達にも害が及ぶと考えており、一定の助力はしてもいいと言われています」


「そうか、なら、ガルストン、ニクス殿を中心に、一度使者を送らせてほしい、ガルストンに使者を任せる」


「わかりました」


会議の結果、ガルストン、ニクスで霊獣の隠れ里に向かう予定が決まった。と言っても今すぐではない。現状混乱しており、二週間ほどは空き時間となるそうだ。シェストは、それには同行せず、この二週間もサラマンダー号の再構築と解析を進める運びとなった。


忍者マルコーとマリーネはいったん彼らの里に戻っていった。マリーネはニクスと離れるのが名残惜しそうで「また会おうねー」とニクスに手を振って別れることとなった。


リアナとデルルズは、霊獣に対して気になることもあるため、霊獣の隠れ里へ同行する予定となった。また、リアナはそれまでのあいだ、デルルズとニクスから教わった召喚術の基礎訓練を行っている。ニクスは基礎を簡単に教わった程度だそうで、それであの力なのだ。ただ、それのすごさはどちらかというと、力を貸してくれているアミダ様にあるらしいし、アミダ様が支援によって、なんとか召喚術ができている程度なのだそうだ。ニクスは他の霊獣が呼び出せるわけではない。


また、新しくわかったのは霊獣の召喚には触媒となる霊獣の素材をつかった道具が重要なのだという。たまたまであるが、子供のころ見つけた、赤い羽根のネックレスがその役割を果たしたのだという。必ずしも必要ではないが触媒となり、召喚術を飛躍的に効率よく行使できるようになるらしい。


リアナはニクスの教えてくれた修行に希望を見出したし、それとは別でまた憎々しく思うのだった。自分よりも先に召喚術を覚えてしまったことなどもある。とはいえ、助けてくれたことやまた出会えたことは嬉しかった。そして、霊獣に会えるというのは彼女にとって楽しみとなった。そう、伝説に会えるのである。


ガルストンは出立まで、いったん休みをもらい、戦いでボロボロになった武器の手入れや装備を買ったり、ゆったりとしている。


#


それは唐突に起こった。ズガゴガゴゴゴと、ニクス達の上空で大きな地響きがしたかと思うと大きな爆発音がし、地下世界の天井がわんさかと周囲へ降り注いであたりをめちゃくちゃにしたかと思うと、天井には大穴が空き太陽の光が差し込んでいるのである。


そう、巨大な何らかの爆発により、地下と地上を分けていたそれが破壊されたのだ。そこから、一気にいくつもの飛行魔導兵器が地下世界の各拠点へと向かっていくのを、魔術王国ニバル、商業国家グラナディア、王国ゾーグは確認するや防衛体制をとる。当然、反帝国連盟の本部とその都市も同様だ。


ニクス、ガルストン、リアナ、シェスト、デルルズは、本部へと向かった。ゲルニックの指示を仰ぐ必要があると判断したし、バラバラでは危険だとも考えたのだ。


「大型の浮遊輸送艇から、爆撃用の飛行兵器、それも尋常な数じゃないぞ、帝国は地下世界を一斉におとすつもりだ」


と、走りながら言うのはガルストン。なんとか本部のゲルニックへその内容を報告する。


「くっ、つまり、地下側は反帝国、そのうえ我々のことは知っている、移転前にもろとも制圧しようというのか……」


本部のある王国ゾーグは、ドワーフを中心とした戦車部隊があるが、地と空、どちらに分があるか、簡単な話だった。このままでは蹂躙される、ゲルニックは撤退を考えた次の瞬間、空からズドーンと降り立った帝国黒騎士が姿を現すと、黒騎士はすぐさま周囲一帯を凍らせつつ、ゲルニックに駆け出していく。黒騎士に似合わぬ刀身が白銀に煌めく剣、その斬撃を、ガルストンは武器で受け止めようとするも、その威力は受け止めきれず吹き飛ばされ壁に激突する。


リアナが風の斬撃で牽制しつつ、横合いからニクスが鞭で殴打するも軽くかわされる。満たされていく氷で、次々と兵士たちは氷にのまれていく。リアナは火の呪文でよせつけないようにし、その安全圏へシェストやデルルズ、ゲルニックは退避する。ニクスは器用に全身を火の魔術でやけどしないのかと疑問に思うほど炎をまとって、氷を防ぎながら戦っている。


「ほぅ、器用なやつめ」


しかし、その氷は本部のあった都市だけにとどまらずに広がっていた。そう、王国ゾーク一帯が氷にのまれていたのである。各所の村で、村人たちが氷漬けになっている。戦車部隊も凍結から逃れられず、氷漬けにされ、空爆への抵抗もできない。もう、王国ゾークは一瞬にして壊滅させられたといってもいい状態になっていた。


ニクスは、戦闘を長引かせまいと霊獣アミダ様を召喚する。その光の力でもって、ひとまず近くの周囲だけでも助けようと考えたのだ。だが、それも、黒騎士が黒い球体を片手から生み出したかと思うと、その光をすべて吸い込んでしまった。


「フフハハハ、無駄だ。召喚術がつかえるか、面白いな小僧……だが、相手が悪かった」


戦いながら、黒騎士は余裕があるのか話を続ける。ニクスは言葉を返す余裕はない。剣を小手で防いだり、鞭で跳ね飛ばしながら、ほぼ防戦一方、攻めに回ることができない。黒騎士の剣は、的確に頭を、首を、心臓を狙っているかと見せてふと、油断していた脇腹を切り裂いていく。


「短期決戦を判断した小僧の勘は優れた戦士のものだ、そう、私は氷漬けにした者たちから生命力を奪っている……この意味が分かるか?」


そう、早くしなければ、たとえ氷を溶かせたとしても、元凶を排除できたとしても、多くの人が助からない。もちろん、国全体に及んでいるなどとは、ニクス達はわかっているわけではなかったが、それでも、周囲に氷漬けにされた人たちはいる。


「先の霊獣とガイナードは相性が悪かっただろうなぁ、奴は屍、生きてはおらぬ。ゆえにあのような光には特に弱かった。だが、私は、死そのものなのだよ、そして、小僧、お前の力量もだいぶわかった、さて、これはどうかな?」


そう、それはたまたまだった。唐突に、黒騎士は剣を投擲したのだ。一瞬の出来事にそれに反応できたものは誰もいなかった。そして、その剣を受けてしまったのはリアナだった。剣の力により一瞬にして生命力が刈り取られる。


「リアナ!」


「甘いぞ」


リアナに近づこうとするニクスを、黒騎士は剣もなく、格闘でもって相対し、先ほどと同格、それ以上の苛烈さで殴打されニクスはボロボロになっていく。鞭は最初の掌底で吹き飛ばされ、続く肘がみぞおちに入ってと為すすべがない。


「仲間のところへ行きたかったのだったか、行くといい」


そういうと、黒騎士はニクスをリアナの近くへと蹴り飛ばしてしまう。


リアナが欠けたことで、彼女が作っていた安全圏もなくなっていた、それをニクスは補いつつ、リアナに触れる、それは冷たい体だった。命の鼓動もない、生命力を感じない、体に、なっていた。


ニクスは絶望の中、風の声が聞こえた。


『力を求めるか?』


「うぉおおおおおおおおおおおおおお!」


その声にこたえるように彼は叫ぶと、甲高い鳥の鳴き声のようなものが響き渡り、金色の混じった赤い炎が天へと高く上った。


かと思うと、その天には一帯の金色と赤い炎をまとった大きな不死鳥とも呼べるそれがたたずんでいた、その不死鳥の炎は周囲を、国を覆い、氷を一瞬にして溶かし、見る見るうちに、大地に草花をさかせていった。


「なんだこれは!?」


そうたじろいだ黒騎士に、不死鳥は頭から突っ込んで激突すると、黒騎士を燃やし尽くして壁に激突する。ふと、不死鳥は消え、そこにいたのはニクスだった。


ニクスは無我夢中だった、何がどうなったか、どうしたのか、自分でもよくわかっていない。声に導かれるまま、力を開放したのだ。だが、それよりも、重要なことがある。リアナだ。彼女のもとに駆け寄ると、死んでいたはずの彼女は息を吹き返していた。それは奇跡だった。


安心したニクスはその場で気を失った。

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