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自語り

作者: Audubon

 私にはとても大切な人がいます。


 その人は私に、わざわざ毎日声をかけてくれ、鈴を転がすように笑います。

本当に毎日毎日、大事にされていると、その人の足音、声色、落した物を拾う仕草から、重々しく感じます。

 ある日、紙で手を切った私の手を取り、痛々しいと言いたげに私の手を握ったとき、私は「なんと心が綺麗な人なんだ」と矢にスパンと撃たれたような感覚に陥りました。その人から私に向けられる、漂っている、淡く黄色い雰囲気はなんだろう。


 でも、私はその人が嫌いです。大嫌いだけど、良くしてくださることにとても感謝しています。

 話しかけられる度、「貴女は私に好かれていると思っているんだな」と頭に浮かべ、相手のご厚意を無下している気がして、少しの罪悪感に落とされます。

 私が貴女を嫌うのは、貴女が私に、不快に思うことをしたからであるが、貴女に悪気は百無くて、私が勝手に鬱陶しく思い、嫌っているだけなのです。


 例えば、私は髪を伸ばしていて、もう少しで腰に達するほどで(身長は百七十も無い小柄。伸びは止まっている)、理由はここで語らないが、それを無断で触られた。とか。正直驚きました。

 私自身、他人に自分の体や一部を触られるということが、どうしようもなく気持ち悪く感じてしまいます。今すぐにでも睨みつけて、その手を叩いてやりたかった。


 そうしなかったのは、貴方に悪感を与えたくなかったし、そもそも暴力が嫌いであり、「私はそういう感じ方をしてしまう人間だ」とでも最初から言っておけば良かったのだから、私の心に蔓延る不快感には、蓋をしました。

 他にも、異常に体調を気にされたり、友人との間に割って入られたり、「嗚呼、またか」と声も出さずに、思います。頭痛がするものだ。


 稀に素っ気ない態度を取られると、心では大嫌いだと思っていても、妙に貴女のことが気になって、体が後を追ってしまう。あと一足で「歩く」になりそうだったとき、踏み留まって、貴女との距離が秒を過ごすごとに遠くなっていくのを、ただただ眺めている。

まんまと罠に嵌まるところだったと寒気がしました。


 元々、というか出会ったばかりの頃は、嫌いという感情は微塵も無く、むしろ好意を向けていました。第一人称は外見で決まるとよく言うが、本当にそうだと実感しました。そう思わせるほど、貴方は可愛らしかった。


 何が私をそうするのかは伏せておきますが、私は人に恐怖を感じ、警戒します。

私の周辺にいる人が、少し体を動かしただけで、胸がひやっとして、自分を守ろうと体を縮ませるほどでございます。


 なのでよほどの人間でなければ肩を寄せ合ったり、心の内を明かすことは全くと言っていいほどありませんでした。

 そんな私に貴女は近づき、私が気づかないほど静かな足取りで私の懐に入りました。普段からわかっていたことでしたが、私はなんとも簡単な人間なのだろう。と思いました。そんな自分に嫌悪感を覚え、増々自分がなんの面白みもない駄目な人間に思えてきます。


 そこから、黒かった私の心は貴方の明るい色に染まりました。貴女が十 話せば私も十 話し、百話せば百というふうに、貴女は会話運びが非常に匠だった。人見知りで口下手な私に、言葉詰まることなく話させることができたのだから。


 何かにつけて笑い、私は貴女の好きなものを知りました。それがたまたま私の好きなものと同じだったから、心の距離がぐんと縮まりました。

 表情の硬い私は自然と表情が緩んで、それを見た貴女は口を開けて、私より大きな笑顔で見せました。


 出会って数年。貴女に好意を寄せる材料は充分揃っていました。そんなときに貴女から、真っ直ぐに好意を伝えられ、私は一瞬、耳がどうにかなってしまったのかと疑いました。どうにかなっていたのは耳ではなく心と声帯だったのだが。


 私から貴女に思いをはっきり伝えたことは一度もなく、ふとした時に「可愛らしい」と一度言葉にしたのが限界で、すぐに飽きられてしまい、二人に結び付けられていた糸は、結んだ本人自ら断ち切りました。その時の言葉と、鋭い目つきで私を見ていた顔が、脳裏に焼き付いていて離れません。我々は特別な関係ではなくなってしまったのです。


その後は、糸が結ばれる前の、以前と同じ日々に戻りました。


 私はそれに耐えられなかった。気持ち悪い。

私に気のない貴女は、気のあった頃より、何故か私の体に触れた。距離が近づき、髪、肩、腕に触れられ、仲良くさせてもらっていた友人と話す間もなく付き纏われ、友人からの態度も心做しか冷たくなっていったように感じます。


 第三者から、貴女が私のことを悪く言っていると耳に入ってきたとには、思いが嫌いに変わり、今に至ります。


貴女は私が嫌いなのですか?好きなのですか?


貴女が私に見せていた沢山の笑顔は、全て皮だけだと知っています。


 私は、この気持ち悪さを貴方に隠して、良い顔をしていなくてはならないのですか?だとしたら、神は私に強さを与えてほしい。

 貴方の気の迷いで放った言葉が、人伝に、私の耳まで入ってきたときに、私の感じていた思いは何だったかと、心臓に穴が空いたようです。


 私が吐き気を催すほど、頭痛で息苦しくなるほど、空は美しく、輝いている。

その太陽の光、木の葉なびく音、人一倍耳のよい私は、それに体を預けるだけで、つかの間の安心を得ることができます。

 安心というものは本当に一瞬で、背筋に心の苦しさが走り、息が不規則になり、朝起きるのが億劫になるほど気が重い。


私には大切な人がいました。


 このような話は自分の都合の良いように解釈され、まとめられ、これを貴方が見たら、きっと怒るのでしょう。「自分は悪くないよ」「可哀想でしょ」と言っているみたいで、私はなんだか気恥ずかしい。


今も鈴を転がすように、貴女は笑い、今も誰かにそれを見せているという事実があることは、駄目な私でもわかります。


ここまで長々と語り、結局何が言いたいのかと言うと、女性の気持ちはわからない。ということです。


とても拙い文章ですが、最後まで読んでいただいてありがとうございます。

文章の書き方、表現の仕方、誤字脱字、読んでいて違和感のあった部分、アドバイス、ご感想を頂けたら幸いです。

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