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70. 新しい出会い(1) ◇

 北東の国境を越えて、私たちはお隣のエルヴス国へ入った。そこから王都ルーストナに向けて東へ進む。しばらくは緩やかな下りの坂道が続いた。高度が下がったせいか、少し蒸し暑い。


 ラングラル王家はもともとエルヴスの王族で、250年ほど前、西域に新たな国を開いたのがラングラルの始まりだ。歴史を勉強したときに覚えたから間違いないはず。


「王妃殿下はエルヴスのご出身でしたよね?」

「はい。王妃様はエルヴスの公女であらせられます。ラングラル王家とエルヴス王家は、過去にも何度か婚姻関係を結んでおります。建国以来、エルヴスはラングラルの親国ですから」


 そんなことを話していたら突然、馬車がガクンと止まった。外から話し声が聞こえる。

 何だろう?


 外へ顔を覗かせてみると、ディオンさんに話しかけている人がいた。浅黒い肌に黒い髪、掘りの深い顔立ちで、遠い異国の方のように見える。剣を差しているので剣士様か騎士様だろう。

 私に気づいた彼が、こちらに近づいてきた。


「貴方がご主人でしょうか?実は連れが怪我を負ってしまって。傷薬をお持ちでしたら、分けていただけないでしょうか」


 それを聞いた私は馬車から飛び降りた。慌てたニコルさんが「アニエス様、安全を確認するまでお待ちを!」と続いて降りる。


「怪我人はどちらですか?私、精霊士見習いで治療術が使えます」

「本当ですか!有り難い、こちらです!」


 道を少し進んだところに、車輪が壊れた馬車と二人の男性がいた。剣士様とお同じく、異国風の顔立ちだ。

 そのうちの一人は地面に倒れていて、苦しそうに腹部を押さえている。血が流れているのも見えた。慌てて近寄ったら「まずは殿、いや、イヴォン様をお願いします」と言われた。


 イヴォンと呼ばれた人は私と同じ歳くらいの少年だった。膝を押さえて「痛いよう痛いよう」と言っているけれど、正直、かすり傷だと思う。

 身なりからして、高貴な身分であることが分かる。おそらく、彼らの主なのだろう。


 私が近寄ると「君は誰?」と不思議そうな顔で問われた。


「精霊士見習いです。傷を見せて下さい」

 

 膝の上に血がにじんでいるけれど、もうほぼ止まっているようだ。お師匠様なら「このくらい、唾つけときゃ治る」って言いそう。


「君が……?治せるの?」

光の癒し(リュミエ・ヒーリング)


 光の精霊が彼の膝を包んだ。あっという間に傷がふさがる。


 彼は「わあ、もう痛くない!すごいね、君」と足をぶらぶらさせた。

 こっちはもう大丈夫だ。私はすぐにもう一人の治療を開始した。


 服装から、こちらも剣士様だと分かる。

 彼の傷は深く、ふさぐのには時間がかかった。


「ああ……。楽になりました。ありがとうございます」

「まだしばらく痛むかもしれません。これ、痛み止めです。お辛いようでしたら飲んで下さい」

「重ね重ね、かたじけない」


 立ち上がったところにイヴォン少年が近寄ってきて、私の両手をつかんでぶんぶん振った。


「助かったよ、ありがとう!こんな可愛い精霊士に会ったのは初めてだ。君、名前は?」

「私はアニエス。アニエス・コルトーと申します」

「僕はイヴォン・アシャール。デルーゼの第3王子だ」


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