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65. 成果発表会

 精霊術の成果発表会は大盛況だった。


 見学に来るのは生徒の親くらいだろうと思っていたが、一般客も多かった。いまや、精霊術はかなり注目を集めているようだ。予め一番大きな教室を押さえるように指示を出した、学園長(ジェラルド)の慧眼は流石としか言いようがない。


 発表会が終わった後は、私へ挨拶に来る見学者たちで長蛇の列ができてしまった。


「やれやれ、やっと終わった」


 挨拶客をさばき終わって廊下へ出たところで、立ち話をしているジェラルドとフォルネ子爵の姿が目に入った。

 クレッタ鉱山の管理者、フォルネ子爵はクロードの父親である。今日は息子の発表を見に来たのだろう。


「シャンタル殿、ご苦労様です。発表会は大成功でしたね」

「ありがとう。クロードもなかなか立派だったよ」

「はは。これは恐縮です」

「いや、俺もそう思う。発表の内容も興味深かった。精霊石のかけらを利用した灯とはな。実用化できれば、精霊石の採掘で出る屑石を有効活用できるのではないか?」


 クロードはあれから実験を繰り返し、長時間消えない灯火の作成に成功した。彼の発表には、他の見学客も興味津々だった。


「優秀なご子息だ。是非、精霊振興部へと勧誘したのだが、断られてしまってな」

「申し訳ございません。息子には、卒業したら領地の経営や鉱山管理の仕事を覚えてもらわねばなりませんので」


 そういえばクロードは長男だった。官僚になるのは大抵、貴族の次男以下である。彼らは領地や爵位を貰えないので、官僚として栄達を望む者が多い。


「そうそう。シャンタル殿、手紙でお願いした件ですが」

「ああ、アベルの代理の話だね」

「代理?」


 私はジェラルドに経緯を説明した。

 土の精霊士アベルは、精霊石鉱脈の管理者としてクレッタ鉱山に常駐している。その彼がこのたび結婚することになった。一度、妻を連れてヴェリテ公国にある実家へ挨拶に行きたいと言っているそうだ。

 ヴェリテまでは片道一週間はかかる。その間、採掘を休むわけにもいかないので、私に代理で常駐して欲しいという依頼だった。


「ちょうど返事を出そうと思っていたところだ。夏休みなら学園の仕事もないから、問題ないよ」

「ありがとうございます。それではアベル殿にもそのように伝えます」

「ふむ。アベル君の結婚はめでたいことだが、今後も代理が必要になるたびにシャンタルを呼び出すのもどうかと思う。もう一人、精霊士を招致するべきか?」

「私もそれは気になっていました。採掘が軌道に乗ってからと思っていましたが、早く動くに越したことはないかと」

「私がナタンに頼んでも良いが。アベルはナタンの所にも挨拶しに行くんだろ。伝えてもらえばいいんじゃないか?」

 

 アベルの師匠である小精霊士(スート・マスター)のナタンは多くの弟子を抱えている。人脈も多い奴だから、頼めば一人くらい紹介してくれるだろう。


「しかし、いつまでも他国から招致するというのものな。我が国からも新しい精霊士を輩出したいものだが」

「アベルに弟子を取ってもらえばいいんじゃないか?先の長い話になるけど」

「シャンタル殿は、新しい弟子を取られないのですか?」

「私は元々弟子をとらない主義なんだ。アニエスは……まあ、特別だよ」


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